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復旧本格化へ円滑な執行を/担い手対策 業界の体質強化 一層支援/道建設部・渡邊直樹部長が就任会見

2017/05/18付 連載・特集
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わたなべ・なおき
昭和57年北大工学部卒。留萌土現が振り出し。平成20年函館土現所長、21年(株)北海道エアシステム常務取締役、23年同専務取締役、24年道建設部空港活性化推進室長、25年道総合政策部航空局長、26年道建設部まちづくり局長、27年道総合政策部交通企画監を経て、ことし4月現職。
 道建設部の渡邊直樹部長は、道建設記者会との会見を行い、就任に当たっての抱負などを語った。昨年8月の大雨災害等からの本格的な復旧が始まる本年度、「1日も早い復旧へ、可能な限り早期の発注を目指す」考えを示し、「発注ロットの大型化や柔軟な工期設定の導入など、円滑な執行に努める」と明言した。技術者などの担い手確保・育成、社保未加入対策、建設業の経営体質・技術力強化なども喫緊の課題と強調。「建設産業支援プラン2013」の見直しも含め、地域の経済や雇用を支える基幹産業としての役割を担うことができるよう尽力すると示した。
 

―昨年の大雨災害の印象は

 昨年8月には、3つの台風が相次いで本道に上陸し、最後に北上した台風10号も本道南部をかすめるように接近したことから、河川の氾濫や土砂災害など、全道各地で甚大な被害が発生した。3つの台風が本道に上陸したのは観測史上初めてのことで、道内での被害も過去最大級になった。予測の難しい自然災害にあらためて防災の重要性を感じている。

―復旧工事推進に当たっての方針は

 本年度から本格的な復旧工事が始まる。地元との調整や、農地の復旧と連携しながら、できるだけ早期の発注を目指す。
 復旧工事が集中することによる技術者・技能労働者不足への対応として、「発注ロットの大型化」や、受注者が工期の始期と終期を設定できる「フレックス工期」を導入するなどの対策を講じることとしている。
 さらに、全道の災復工事の6割以上が集中する帯広建管において、地域外の建設企業の活用や、技術者の専任要件の緩和を目的とした新たな共同企業体制度の導入や、「災害復旧推進室」設置による体制強化を図った。
 今後は、地域の状況を踏まえ、これらの対策などを効果的に活用し、1日も早い被災地の復旧に向けて事業の円滑な執行に努めていく。

―公共土木施設の被災防止へ、今後どのような対応が必要になるか

 昨年8月の月降水量は道内アメダス225地点中89地点で観測史上1位を記録した。河川では洪水が繰り返し発生し、水位が下がり切らずに再び上昇する状況だった。流域の土壌が湿潤状態となったことで保水力も弱まり、水位上昇も早かったことが考えられる。
 今回の大災害を踏まえ、気候変動の影響が現実のものとなったと認識し、施設整備などのハードと避難対策などのソフト両面からあらゆる対策を総動員し、北海道全体で防災・減災対策に向けた取組を推進していく。

―公共土木施設の維持管理について

 維持管理については、21年3月に策定した「維持管理基本方針」を昨年度改訂し、橋梁などの施設本体に加え、大型標識などの補修にも予防保全の考え方を取り入れるなど、施設の長寿命化による費用の平準化を図り、計画的な維持管理に取り組んでいる。
 また、一連の台風では、多くの河川が氾濫し甚大な被害が生じ、河道内の樹木伐採や堆積土砂の除去が必要と認識し、昨年度、河川の維持管理の方向性について取りまとめ、河川ごとに長期的な伐採サイクルを定めて樹木伐採に取り組むこととした。
 さらに、交通工学の専門家などの有識者で構成する懇談会において、道路管理の充実強化に向けた検討を進めてきた。懇談会からは、事前通行規制区間の追加や規制区間への進入防止の強化などの意見をいただいた。道としては懇談会の意見を踏まえた取組の具体化を進め、道路管理のさらなる充実強化に努めていく。
 いずれにしても、道民の安全・安心な暮らしを守ることができるように取り組んでいきたいと考えている。
 

実情踏まえた担い手確保・育成

―建設業の人材不足への対応は

 本道の建設業は、これまでの建設投資額の減少などから、若年者の入職が大きく減少しており、建設技術者などの担い手の確保や育成は喫緊の課題と考えている。
 このため、道ではこれまで、担い手対策として、就業環境の改善や建設業の役割・魅力の発信のほか、道内各地の建設業団体が行う技術研修会への助成などに取り組んできた。
 また、国、建設業団体、商工団体などで構成する「北海道建設産業担い手確保・育成推進協議会」を設置。関係機関との情報共有や連携の強化に努めるとともに、建設業団体や教育機関、行政機関で構成する地域会議を開催し、担い手対策の検討を進めてきた。
 今後とも、建設業が地域の経済や雇用を支え安全・安心を担っていけるよう、建設業団体や教育機関などと連携し、地域の実情に応じた効果的な担い手の確保・育成に取り組んでいく。

―社会保険未加入対策への対応

 道においては、就業環境改善のため、これまでも建設業許可・更新時や道発注工事の契約時など、様々な機会をとらえて、社会保険等の加入について指導を行ってきたところであり、27年度からは、道の競争入札参加資格者を社会保険等加入者に限定してきた。
 昨年度から、道発注の建設工事において、契約約款に「一次下請負人の社会保険等加入義務」の条項を追加し、原則、受注者の契約の相手方となる一次下請負人を社会保険等加入者に限定するなど、社会保険等未加入対策に取り組んでいる。
 道内における建設企業の社会保険加入状況は、国が28年10月に実施した、公共工事に従事する建設企業等の「社会保険加入状況調査」の結果によると、健康保険、厚生年金保険、雇用保険すべてに加入している道内の企業の割合は、全国平均を上回った昨年の調査結果よりも高い結果となっている。
 国では、ことし4月から二次以下も含めたすべての下請負人についても社会保険等加入業者に限定する取組を実施している。
 道においても、建設業における人材確保や公平で健全な競争環境の構築のため、国や他都府県等の取組や、建設業団体等の意見を踏まえながら、関係機関と十分連携し、社会保険の未加入対策を進めていく必要があると考えている。
 

生産性向上に向けた検討推進

―建設現場の生産性向上に向け取組と今後の展望

 道では、26年度から、大規模な土工現場において、ICTを活用した出来形管理を試行的に導入しており、ことし秋からは1万立方㍍以上の土工現場において使用を原則化し、5千立方㍍以上では施工者希望型で実施を予定している。
 また、TS・GNSS締固やMC・MG技術を用いるICT建設機械による施工についても、本年度から1万立方㍍以上の土工現場において施工者希望型で実施していく。
 今後は、国の動向や技術開発の状況等を踏まえるとともに、建設業関係団体等の意見をいただきながら、引き続き、ICTの活用拡大に向けた検討を進めたいと考えている。

―建設産業支援にかかる新たなプラン策定について

 道では、25年に「建設産業支援プラン2013」を策定し、「技術と経営に優れた企業」が持続・成長できるよう、支援施策を総合的に進めている。その結果、道内建設業において、営業利益率などに一定程度の改善がみられた。
 しかし、建設業を取り巻く環境は、若年労働者の減少や就業者の高齢化など、引き続き厳しい状況が続いており、人材の確保・育成をはじめ、経営体質や技術力の強化などの課題が依然としてある。
 このようなことから、本年度、道建設業審議会に専門委員会を設置し、関係団体からの意見をいただきながら、プランを見直す考え。
 プランの見直しに当たっては、経営力の強化に向けた検討のほか、働き方改革に資する施策の検討やICTの活用などによる建設業の生産性向上に向けた検討なども進めていく考え。
 建設業が社会資本整備や災害時の対応をはじめ、地域の経済や雇用を支える基幹産業として引き続き重要な役割を果たしていけるよう、取り組んでいく。