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道内7空港の民営化迫る/観光産業のさらなる発展を/ニュースファイル2017<3>

2017/11/29付 連載・特集
ニュースファイル2017<3>画像
道内7空港の民営化に向けて、間もなく事業者選定の審査が始まる

110社が関心示す

 国、道、旭川市、帯広市の4者はことし7月、道内7空港の運営一括民間委託に関する基本スキーム案を公表した。特別目的会社(SPC)を設立して最長35年間、7空港の滑走路やターミナルビルなどの運営を一体的に行う条項を明示。32年度の民営化を目指す。
 国が行った民間企業への投資意向調査では、運営権取得に関心を寄せる企業数が110社にのぼっていることが判明。同じく民営化を目指す福岡空港や高松空港を上回り、道内7空港への強い関心が示された格好となった。

収益一極化の現状

 民営化の対象は、国管理の新千歳、函館、釧路、稚内、道管理の女満別、市管理の旭川、帯広の計7空港。管理者の異なる複数の空港が、同一事業者に一括して運営委託されるのは前例がなく、大きな注目を集めている。
 7空港の27年度収支をみると、新千歳空港が60億円強の黒字を計上。一方、他の6空港はそれぞれ2億円から9億円の赤字を計上し、赤字額の合計は40億円にのぼっている。
 新千歳空港に8割以上が集中する“一極化”の状況が明確に示された形だが、国など4者がまとめた運営一括民間委託に関する合意書には「原則として、黒字空港による赤字空港への補填はしない」と記されている。
 4者は「事業者にすべての空港の黒字化を求めない」と意図を説明するが、関係者からは「一括運営が始まれば、新千歳空港の黒字で全体をカバーせざるを得ない」との声も聞かれる。当面は、新千歳空港の黒字を原資に他空港の収益を改善することが現実路線とみられている。

地方空港の収益増

 北海道経済連合会は、一極化の原因を「国内の格安航空会社(LCC)の就航が新千歳空港に限られているため」と分析する。新千歳空港ではことし9月、LCCの新規就航に伴い発着便が増加し、国内線と国際線を合わせた旅客数が同月最高の206万人を記録。中でも国際線の伸び率が大きく、前年度同月と比べて4割増の24万人に達した。
 LCC就航による効果が示された中、北海道経済連合会は「地方空港に新規就航路線を開設することは、LCCにとっても大きな商機になる」と展望する。民営化後は、事業者の権限で着陸料を引き下げることも可能となるため、「LCC就航へのハードルは下がる」(稚内空港職員)。
 一方、地方空港における国際線の需要は不透明な状況で、LCC就航による収益改善策に疑問を呈する声も少なくない。関係者は「空港によってはLCCの就航が見込めない」との見方を示す。運営を民間委託する前段として、観光地としての魅力を高めていくことの意義を強調し、官の取組の重要性を訴えている。

広域交通網を強化

 国など4者は、基本スキーム案の事業方式の項目に、「地方公共団体などと連携して実施する広域観光周遊ネットワークの形成に向けた取組」を明示。高橋はるみ知事が、ことし9月に開かれたHOKKAIDO空港運営戦略フォーラムで、「地方空港の収益改善には、アクセス道路の整備拡充が不可欠」との認識を示したように、広大な面積を有する北海道では、観光産業の礎となる広域観光周遊ネットワークの形成が急務となっている。
 28年度に民営化した仙台空港の例をみると、仙台東部道路・仙台空港ICが直結。LCCの就航により旅客数が増加する中、「2次交通の充実が人気を支えている」(仙台空港職員)。道内では函館市内において、函館新外環状道路・函館空港ICの建設が進められているが、他の地方空港に直結する高速道路網の整備は十分とは言い難い状況だ。
 7空港の収益を確保するためには、民間の経営ノウハウを生かすことはもちろん、「国や道の広域観光周遊ネットワーク形成に向けた事業の推進が不可欠」(道内企業経営者)。官民一体の取組が、一層求められることとなりそうだ。
 事業者選定のための1次審査は、30年7月を予定。31年4月に2次審査を行い、同年6月には優先交渉権者を選定する。他空港の先行事例をみると、地元企業が事業主体となるケースが多く、事業者の選定にも関心が集まっている。

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