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日ハム新球場 真駒内公園案が浮上/道央圏では工場建設が加速/Local Topics 2017<2> 石狩

2017/12/11付 連載・特集
Local Topics 2017<2> 画像
ボールパーク構想に一定の方向性が示されるまであと3ヵ月。交通ネットワーク網強化により周辺都市への企業進出が加速している

選定に決め手欠く

 ことし10月、一部報道で北海道日本ハムファイターズのボールパーク構想にかかる候補地に、道立真駒内公園が浮上した。ボールパークの候補地をめぐっては、これまで、札幌市が提案する旧共進会場跡地周辺と北大構内の2ヵ所、北広島市が掲げるきたひろしま総合運動公園の3案で議論されてきた。
 しかし、3つの候補地の中で、球団が掲げる構想に必要な土地面積20ヘクタール以上をクリアしているのは北広島市のみ。交通アクセスでは、札幌市は地下鉄やバスなど交通網が整備されているが、北広島市は新駅の建設が必要となっており、複数回にわたる球団関係者との実務者協議で結論を出すには至らない状況が続いた。
 こうした中で浮上した真駒内公園は、85ヘクタール程度の広大な面積を有し、周辺は地下鉄やバスなどのアクセス網が整備されている。しかし、真駒内公園を候補地に挙げるには、ハードルが存在する。

都市計画の必要性

 真駒内公園を所有する道の高橋はるみ知事は会見で「南区や真駒内地区でどのようなまちづくりを考えているのか」と指摘。市内で最も人口減少が進むと言われる南区のまちづくりについて、都市計画上の位置付けを踏まえても、市と球団が協働で明確なビジョンを用意する必要がある。
 広大な面積を有する真駒内公園は、市民の憩いの場として定着している。市幹部は「10月の報道後、“公園の自然を壊さないでほしい”とする意見が相次いだ」と明かす。ボールパーク構想実現に向けては、自然環境への配慮が不可欠となっている。
 交通アクセスをみると、鉄軌道では、真駒内地区には地下鉄南北線の1路線のみ。真駒内公園周辺の道路は頻繁に渋滞が発生するエリアで、真駒内駅や自衛隊前駅からバスを利用し球場に観戦に行く場合、こうした渋滞を回避することが不可欠だ。市幹部は、財政上の制約から、現段階では「道路拡幅などの対策は難しい」と話す。

地域活性化に向け

 真駒内公園内の屋内競技場では、フィギュアスケートなどの大規模大会が催される。市が招致する2026年冬季五輪のフィギュアスケート会場としても検討が進む。「真駒内公園にボールパークが誘致できれば、通年を通してスポーツを楽しめる環境が整う。地域産業の活性化と合わせた相乗効果が期待できる」(市関係者)とする声も上がる。
 球団側が一定の方向性を示すとする来年3月まで、あと3ヵ月余り。真駒内公園は、球団側を納得させられる候補地となり得るのか。今後の行方に注目する必要がある。

進む企業誘致

 札幌周辺都市において、食品関係などの工場や大規模な物流センターの新設、増設が相次いでいる。ことし5月に北広島市内の石屋製菓(株)の新工場が完成したほか、(株)もりもとが千歳第1工場を増設した。周辺都市で工場が建設されている要因の一つとして、道央圏における交通ネットワーク網の強化が挙げられる。
 ホーマックなどを運営するDCMホーマック(株)は、恵庭市に新しい物流センター「札幌商品センター恵庭」を建設した。担当者は、恵庭市に建設した理由に、「交通アクセスの良さ」を挙げる。道央道や新千歳空港ICの供用、道央圏連絡道路の整備促進、ことし供用開始した道道仁別大曲線などを例に、「物流に関するアクセスが良く、商品の配送がスムーズ」と強調。「道外への発送を念頭に、苫小牧港などにも輸送が可能」と話す。
 名古屋市に本社を構える中北薬品(株)は昨年、北広島市内の輪厚工業団地に新工場を建設した。輪厚工場の大前真司工場長は、北広島市に建設した理由として、「交通の利便性、雇用、災害リスクの低い土地であることから決めた」と明かす。

一層の効果発現へ

 道によると、仁別大曲線に面した工業団地の売却率の推移は、平成24年が5%、25年が17%、26年が23%だったが、開通前年の27年は88%、開通した28年には93%にのぼった。道央圏連絡道路における整備効果をみると、新千歳空港関連の部分開通後に周辺工業団地に立地した件数は26件(国土交通省まとめ)。新千歳空港ICの開業と相まって、交通アクセスの強化が企業の誘致に大きな効果をもたらしたと言える。
 自治体においても、企業誘致に向けた支援策を充実させる。恵庭市では、新工業団地造成を計画。千歳市では、食品製造業などを対象に設備投資支援の基本計画を策定した。
 交通ネットワークの充実とともに、各自治体の企業誘致支援策増強によって、周辺都市への企業進出は今後も増加していくことが期待される。
 一方で、道外企業からみると、本道は依然として輸送環境に課題があるとする声も挙がる。大前工場長は「陸海空の輸送網の整備推進が必要」と指摘。「交通ネットワーク整備によって2次産業の誘致が加速し、雇用の創出や人材育成の強化につながるのでは」と話す。

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