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定住人口の確保が鍵に/大型施設建設に沸く倶知安・ニセコ地区/Local Topics 2017<4> 後志

2017/12/13付 連載・特集
Local Topics 2017<4>画像
スキーを楽しむ観光客でにぎわう比羅夫地区(倶知安町提供)

路線価上昇全国1

 倶知安・ニセコ地区で路線価の上昇が止まらない―。札幌国税局の発表したことしの道内路線価では、「道道ニセコ高原比羅夫線」の上昇率が全国1位となる77.1%を記録した。地価上昇の要因については、海外の富裕層を対象としたホテル、大型コンドミニアムの建設が進んでいることや、「ほぼ同時期に開業すると思われる道横断道の工事着工や、北海道新幹線建設などアクセス向上への期待も影響しているのでは」と倶知安町担当者は話す。
 倶知安ニセコ地区が有名となったのは海外のスキーヤーが、ニセコの雪質について、「パウダースノーだ」と発信したことがきっかけで、多くの外国人がニセコのスキー場に訪れた。そのリゾート地として目をつけた投資家や不動産業者がホテル建設のために土地や物件を購入し、地価の上昇が止まらない状態だ。
 現在、倶知安ニセコ地区の不動産を購入するのは中国や香港などアジアの投資家や企業経営者が多い。用途は多岐にわたり、自らの別荘として利用する、貸別荘や宿泊施設として運用し利益を得る、地価上昇により資産価値が早く上昇することを利用し転売して利益を得るケースがある。
 ニセコ・倶知安地域でコンドミニアムなど宿泊施設を8施設構える「ニセード」担当者はニセコ地域が人気の理由について、「雪質もあるが、北海道というブランドの力もあると思う。ニセコの大自然は夏場でも十分な集客力があることや、体格のいい外国人向けに部屋を大きめに作っていることも要因なのではないか」と分析する。
 倶知安町観光協会は、地価上昇をきっかけとした町の知名度向上に大きく期待。「ニセコという名前は首都圏でも有名だったが、倶知安町はそれほどではなかったと思う。今回の路線価の発表が町の知名度を浸透させ、より観光客も増えていくのでは」と展望する。

札幌圏から移転も

 その倶知安町に、ことし、ミシュランガイドに掲載された札幌のすし店「若竹」が移転した。札幌圏域よりも倶知安・ニセコ地区にマーケットとしての魅力を感じているという。倶知安町観光協会でも「観光客などによる需要が見込まれることから、倶知安町に出店する店舗が増えている」と感じている。
 冬期における倶知安町比羅夫地区の宿泊施設はほとんど満室状態。現在も多くの宿泊施設が建設中または許可申請中であり、「これからも建設が続くだろうから、税収のさらなる増加が期待できる」(倶知安町関係者)と話す。
 札幌に本社を構える加森観光も、倶知安ニセコ地区に大型コンドミニアムの建設を計画している。担当者は「外国人観光客は広い部屋で長期間にわたって滞在する傾向がある」として、「そのような利用客を対象としたコンドミニアムは利用客が多く見込めることから計画しており、現在は建築確認申請を行っている段階」と話す。

景観への影響も懸念

 地価上昇の影響について倶知安町とニセコ町では、「上昇傾向が続けば地域の資産価値が上昇したこととなり、固定資産税などの課税を見直して、税収がアップすることにつながっていくのでは」と期待する。
 しかし、地価上昇の影響は思いもよらぬ問題も引き起こしている。多くのリゾート施設のある倶知安町の比羅夫地区では、従業員宿舎の確保が難しく、倶知安町市街地か、他町村に居住するケースが増えているという。倶知安町としても、人口減少が問題となっている現状を踏まえ、「従業員が他の町村に流れるのを避けたい。従業員が町内に定住し、人口を増やせるような取組を検討していく」としている。
 観光地として有名となり、外国資本が多く参入することで、無秩序な開発が行われる可能性も懸念材料に。ニセコ町では「景観や環境を守っていくことを大事にしている。無秩序な開発が行われないよう、話し合いや条例による規制を行い、良好な開発へ誘導していきたい」としている。

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