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JR駅前大門地区 函館で再開発進む/青函トンネルは開業30周年/LOCAL TOPICS 2018 ⑥渡島・檜山

2019/01/09付 連載・特集
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閉店後の跡地整備に注目が集まる棒二森屋。年度内にも整備計画を取りまとめる

インバウンド期待

 異国情緒あふれる歴史的な街並みが広がり、ことしの全国魅力度ランキングで1位に返り咲いた函館市。本年度上期の外国人宿泊客数は約22万1000人で、前年度同期比10.5%増となり、上期では2年連続過去最高を更新した。
 人口減少が進み国内観光客数の伸びが見込めない中、こうしたインバウンド需要を背景に、ベイエリアや朝市など、周囲に観光地が多く集まる函館港若松地区では、11万トン級の大型クルーズ船に対応した岸壁整備が進む。
 10月には暫定供用を迎え、4万トン級の船舶の寄港が可能となった。
 外国船籍の寄港による観光消費への期待は大きく、市は来年度から現在利用している港町ふ頭とともに、若松ふ頭でも受け入れを開始させる予定。市によるとクルーズ船寄港数は過去最多の37隻を大幅に超える50隻前後となり、乗員乗客数も約3万人以上増加し、約10万人となる見通しだ。

老舗百貨店閉店

 函館市はこれまでに、JR函館駅前・大門地区の再開発事業として、商業施設と公共施設、分譲マンションが一体となった「キラリス函館」(RC造地下1階地上16階1万7777平方メートル)を2017年にオープン。ことし3月には、大和ハウス工業(株)が事業主体となり、ホテル棟(RC造11階1万1175平方メートル)や、店舗棟(S造2階2113平方メートル)とカフェ棟(木造2階279平方メートル)からなる商業施設、交流広場などを併設する複合商業施設「ロイヤルパークスER函館駅前」の建設に着手した。
 駅前・大門地区では、インバウンド需要や30年度の北海道新幹線の札幌延伸を見据えた大規模なホテルの建設ラッシュも続くなど、観光客と函館市民、双方に利用価値の高い施設整備が展開されている。
 こうした中、大門地区における象徴的な存在だった老舗百貨店「棒二森屋」が来年1月で閉店することが決まった。親会社のイオンは、老朽化が進む棒二森屋を解体し、跡地に商業スペースを含むホテルやマンションの建設案を関係利権者に提示。11月に行われた関係利権者との協議では、地元商店街の意向も踏まえ、ホテル・マンション棟のほか、新たに3階建ての商業棟の建設案を示した。年度内に策定が予定されている整備計画に注目が集まっている。

世紀のプロジェクト

 青函トンネルが、ことしで開業30周年を迎えた。全長53.85キロメートルに及ぶ海底トンネルは、北海道と本州を結ぶ大動脈として重要な役割を担ってきた。
 1954年の青函連絡船「洞爺丸」の転覆事故をきっかけに、青函トンネル構想が始動。64年には、福島町の吉岡において調査斜坑の掘削が始まった。
 海面下240メートルでの工事は、湧水など過酷な条件下での施工だったが、コンクリート吹付工法やロックボルト工法といった高度な技術が初めて実用化されるなど、日本が誇る高度な技術力を結集。数々の困難を乗り越え、85年3月に本坑が貫通し、88年3月13日に悲願の開通を迎えた。
 連絡船時代と比べ、函館青森間の所要時間は大幅に短縮され、天候に左右されずに走行できることで、旅客の増加だけでなく、物流の安定的な輸送にも貢献している。
 2016年には北海道新幹線が開業。開業から2年が経過し、開業初年度から多少の落ち込みはあったものの、下り線の利用者は在来線時代と比べると約40%増で推移。航空機やフェリーによる来函者数についても、利用者の大幅な減少はみられず、新幹線は新たな交通手段による新規の観光需要を生み出し、交流人口の着実な増加という効果をもたらしている。

第2青函トンネル

 一方、ことし6月、民・学の有志で立ち上げた第2青函多用途トンネル構想研究会が、有人自動車走行を可能とする多用途トンネル構想の報告書を取りまとめた。
 これまでにも、日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)などが第2青函トンネル構想を提案していた。今回、同研究会がまとめた有人自動車走行の構想は、北海道経済の便益性を考慮した北海道版のプロジェクトとして策定した。
 トンネル延長は30キロメートルで、総工費には7229億円を試算。トンネルは内径14.5メートルの円形とし、一般車両と緊急車両の通行路を上下に分離する。
 同研究会は、1日の走行台数を4000台とした場合の年間観光消費額を730億円と試算。トンネル総工費は50年程度で投資回収できるとし、民間主導での実現の可能性を示している。

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