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道管理施設の恒久対策推進/経済発展支える2次交通を強化/LOCAL TOPICS 2018 ⑦上川

2019/01/09付 連載・特集
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11月24日に富良野道路が開通。被災河川の復旧に向けては地元を含めた協議会を設立して話し合った

再度災害の発生

 ことし7月、記録的な豪雨が上川地方を襲った。旭川市では1日当たりの降水量が同月の観測史上最大となる144.5ミリに達し、道が管理する中小河川などが被災。7月豪雨の被害額は、旭川建管、旭川市、東川町で約25億円にのぼった。
 2年前の台風による豪雨でも被害を受けたペーパン川(旭川市)と倉沼川(旭川市、東川町)では、農地浸水や河岸浸食が再度発生した。地元農家は「2年前の大雨のときより被害が大きい。再び災害が起きるとは」と肩を落とす。
 年間約3万2000人が訪れる東川町の天人峡温泉では、温泉街にアクセスする道道天人峡美瑛線が、忠別川の氾濫により4ヵ所計690メートルにわたり決壊。宿泊客など約130人が孤立する事態に見舞われた。松岡市郎東川町長は「恒久的な対策を」と強く求めた。

地域一体の要望

 再度災害を防止するため、上川総合振興局や旭川建管、両河川流域の首長や農業団体、自治会関係者などは7月、ペーパン川・倉沼川災害対策連絡協議会を立ち上げた。地域が一体となり、中小河川の整備促進を訴える環境を整えた形だ。
 協議会の要望が実を結び、ペーパン川は、道管理河川で初の河川災害復旧関連緊急事業の採択を受けた。機能向上を図る復旧工事を8キロメートルにわたり展開する。倉沼川と天人峡美瑛線においても、間もなく復旧工事が本格化する。
 再度災害防止に向けた取組へのめどが立った一方で、地元農家は「農地が元通りになっても、土までは戻らない。現状のままでは営農に支障を来す」と不安を吐露する。ほかにも「河川工事の残土を利用して農地の大区画化ができないか一考してほしい」との意見が挙がっている。
 2日に開かれた協議会では、道の岡田恭一建設部長と梶田敏博農政部長が、早期復旧に向け全力を尽くすとともに、こうした提案を検討する姿勢を示した。

国際線施設を拡張

 年間110~120万人の利用者で賑わう旭川空港。ただ、中国・台湾の定期便運休のため、海外乗降客数は2015年度の19万1552人をピークに、2017年度には5万5364人に落ち込んだ。一方、上川管内の訪日外国人宿泊者数は増加傾向で、17年度は13年度の2倍近い65万人3077人を記録した。
 上川総合振興局商工労働観光課は「新千歳空港を利用して管内を周遊する外国人観光客が増えたのでは」と分析する。
 20年度から、旭川空港を含む道内7空港の一括民営化が始まる中、増加するインバウンド対策、空港活性化の起爆剤として大きな期待が寄せられている。
 国内で民営化第1弾となった仙台空港では、LCC等の新規就航や便数増加、空港ビルのリニューアルなどを行い、運営を効率化。インバウンド需要に活路を見いだす旭川空港もその例に倣い施設整備を進め、11月22日に待望の国際線ターミナルビルがオープンした。来年9月には既存ビル改修が完了しグランドオープンする予定となっている。
 (株)旭川空港ビルの社長を務める西川将人旭川市長は「将来的に国内線200~250万人、国際線50万人の利用を目指す。今後は積極的に海外就航便を誘致していきたい」と展望する。

アクセス改善が鍵

 そのためには、空港利用客の動線となるアクセス道路の整備や2次交通ネットワークの充実が不可欠となる。
 高速道路と直結している仙台空港と同様、旭川空港周辺でも旭川市~占冠村間約120キロメートルを結び両端が高速道路と接続する地域高規格道路「旭川十勝道路」の整備が進められている。ビル完成から間もない11月24日には、富良野市学田三区~上五区まで8.3キロメートルを区間とする富良野道路が、旭川十勝道路で初となる開通を迎えた。
 北猛俊富良野市長は「空港へのアクセス改善により、広域観光周遊性がさらに高まり、北海道の経済発展につながる」と道路網強化の必要性を説く。
 このほか、旭川開建は中富良野町~学田三区の5.7キロメートルを区間とする富良野北道路の整備を推進。旭川建管は鷹栖東神楽線と愛別当麻旭川線の交点から旭川空港線の交点まで10.1キロメートルを区間とする旭川東神楽道路を整備している。
 旭川開建の樺澤孝人部長は「さらなる整備促進を図るとともに、残る未事業区間も早期に取り組みたい」と前向きな姿勢を示す。
 空港付近のレンタカー店は「空港につながる道路が整備されればさらに利便性が高まり、利用者増につながる」と早期完成を切望する。空港施設の整備が大詰めを迎えている中、2次交通網の充実が今後の鍵を握りそうだ。

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