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稚内大谷高 土木授業開講/振興局 新たな雑草対策の取組/LOCAL TOPICS 2018 ⑨宗谷

2019/01/10付 連載・特集
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測量の基礎技術を学ぶ若手技術者研修の受講者たち。草地整備では雑草対策の試行が始まった
 稚内建設協会は、ことし75周年の節目を迎えた。1943年の創立以来、会員企業とともに地域の発展と安全・安心を守るため社会資本整備の推進に尽力してきた。現在は担い手の確保と育成に力を注ぎ、真摯にその命題と向き合っている。
 宗谷管内には工業系高校がないため、協会は普通高校の卒業生を技術者に育てようと、北海道建設業信用保証(株)(吉田義一社長 ※吉は土に口)の助成などを受け2015年に若手技術者(新入社員等)研修を開始。これまでの4年間で会員企業から52人の若手職員が受講し、研修で学んだ基礎をもとに各企業で研鑚を積んでいる。

2級学科合格目指す

 2016年度からは、施工管理技術検定の2級学科試験が17歳以上の普通高校等の生徒でも受験できるようになった。これを受け協会は、高校生の入職促進を図るため、稚内大谷高校に対し協力を要請。同校は19年度から2級土木の学科試験合格を目指す「土木施工基礎技術」の授業を開講することに決めた。稚内建設協会の藤田幸洋会長は同校を例に「とにかく多くのチャレンジをしていかなければ」と、業界を挙げて様々な手を打っていく必要性を強調する。
 授業は3年生の選択科目として週2回実施。工業の教員免許を持つ教員1人のほかに、地元の(株)共成建設(稚内)から大須賀悟取締役土木部長が教壇に立ち、2人体制で行う。授業内容は両者でこれから検討していくが、座学や現場見学などを通して基礎的な知識を習得させ、在学中の学科試験合格を目指すカリキュラムの編成を計画している。
 同校の山下優校長は「教育の観点から地域のニーズに応え、地域振興のために参画し続けたい」と私学教育の柔軟性を生かし地元産業のために協力していく考えだ。
 講師を任された大須賀取締役土木部長は、学科試験に向けた机上の問題演習だけではなく、重機のデモンストレーション見学やドローン体験などを授業に組み込みたいという。「建設業についての知識を深め、卒業後の進路の選択肢としてとらえてもらいたい」と話す。
 藤田会長は「多くの生徒に合格してほしいのはもちろんだが、勉強を通じて建設業に興味をもってもらうことが大切。入社してくれれば協会の研修でしっかりサポートしていく」と力を込める。つぎの100年が地域にとっても、業界にとっても明るい未来となるよう、飽くなき人材の確保と育成の挑戦は続く。

雑草の生育を抑制

 宗谷総合振興局農村振興課は本年度、道内初となる飼料用麦類と牧草の同伴播種を活用した雑草対策の取組を実施した。
 宗谷管内では草地整備改良時に河川等への影響を考慮し、除草剤散布を自粛しているため、雑草が繁茂し施工後の整備効果を阻害している。また、その年の一番草を確保したい受益者が多いため、一番草収穫後の夏に草地整備が集中してしまう事情がある。
 これらの課題解決に向け同課では、早春に耕起・砕土し飼料用麦類と牧草の同伴播種を行う取組を試行。その目的は、雑草対策とともに一番草の代替飼料となる自給飼料の確保だ。
 本年度、稚内第2地区のほ場3ヵ所17ヘクタールでエン麦による同伴播種の施工を行った結果、2割程度の雑草抑制を確認できた。試行前は受益者から乳牛の麦類に対する嗜好性を不安視する声もあったが、「牧草と比べ若干、水分が多い気がするが、品質と食いつきに問題はない」という。

施工時期が分散化

 草地整備が夏季に集中する中、本試行では早春施工で施工時期の分散化・平準化を可能にしたことも大きな利点となった。
実際に施工した業者は「夏施工のうち2~3割程度を春施工に移行できれば施工体制に余裕ができ、天候不順等による工程遅延に対応しやすくなる」と手応えを感じている。
 施工時期の分散化・平準化について有澤紀昭農村振興課長は「夏施工が集中するとオーバーワークが懸念される。本取組が働き方改革の推進にも役立てば」と期待を寄せる。
 農業農村整備では、何よりも受益者と施工業者の連携・協力が不可欠だ。工期に制約がある施工条件の厳しさは、受益者も十分理解している。雑草抑制による品質向上と施工時期平準化は「まさに一石二鳥の取組」(同課)。
 同課は来年度、大麦を使い検証を続けていく考え。効果を全道に発信するためのPR資料作成の準備も進めている。環境に優しい酪農と生産性の向上の実現まで、あともう1歩のところまで近づいている。

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