トップページ > 連載・特集一覧 > 連載・特集詳細

除雪省力化へ来春実証実験/網走建管 出張所技術職員を集約/LOCAL TOPICS 2018 ⑩オホーツク

2019/01/11付 連載・特集
ローカルトピック10画像
来春から行われる除雪作業の省力化実験は、除雪業務の今後を左右するものとして大きな期待が寄せられている=開発局提供=

除雪の見える化

 近年の気候変動に伴い、道内各地で吹き荒れる暴風雪。厳しい気象条件の中で、本道の冬の暮らしを支える道路除雪業務の遂行に黄色信号が灯っている。少子高齢化の波は、除雪機械を扱うオペレーターの高齢化とともに、担い手不足という深刻な問題をもたらしている。
 道民の暮らしを揺るがしかねない事態に対し、開発局は17年3月に「除雪現場の省力化による生産性・安全性の向上に関する取組プラットフォーム(通称i―Snow)」を立ち上げ、対策に乗り出した。進行する地方の人口減少と高齢化を推定し、除雪体制を維持するための対応策を議論している。
 除雪現場では、作業に当たり熟練オペレータの経験値と技術がものを言う。安全確認や車両運転などを同時に行うため、2人体制が義務付けられていることも業務圧迫の要因だ。
 こうした状況下で、業務の省力化を図るi―constructionの取組に注目が集まっている。開発局は「熟練オペレータに頼り切っている機械操作、現行の2人体制による車両運転の省力化につながれば」と期待する。

実証実験へ

 開発局は来春、除雪業務の省力化に向け、国道334号知床横断道路でICTを活用した道路除雪の実証実験を開始する。ロータリ除雪車の走行位置確認の省力化と投雪装置(シュート)の自動化について検証する。
 走行位置確認の省力化では、モービルマッピングシステムなどで取得した点群データをもとに高精度3Dマップを作成。作成したデータや準天頂衛生からの高精度位置情報をMCバックホウに活用し、作業位置・自車位置を確認する。
 投雪装置の自動化では、熟練オペレータが行う投雪作業時の操作や手順を計測。計測データと高精度3Dマップを活用し、投雪作業の自動化を目指す。
 除雪業務を担う管内業者は「実証実験の結果によっては、今後の除雪業務が劇的に変化する可能性がある」とし、「除雪業務が抱える諸課題の解決につながってほしい」と期待する。

土木技術職員の減少

 道建設部の土木技術職員は、1997年度の1390人をピークに減少し、本年度は991人と1000人を割り込んだ。そのうち、全道54ヵ所の出張所担当職員は、2005年度に634人だったのが、17年度には390人に減少。本年度の体制をみると、整備部門の係のうち、担当職員が2人以下の出張所は約6割にのぼっている。
 技術職員が減少している一方で、公共事業予算は増加傾向にある。12年度まで減少し続けていた道開発事業費は、13年度から増加に転じ、道の公共事業予算も微増で維持している。道建設部は、社会資本整備に支障が生じないよう、限られた職員数で対応してきた。

出張所職員の集約へ

 事業を円滑に執行するため、網走建管は本年度、紋別出張所の道路担当主査と担当者を遠軽出張所に配置する技術職員の集約に踏み切った。人員の集約により、社会資本整備の執行を持続できる体制にシフトした。
 建管によると、1人当たりの業務量を軽減したことで、事業効率が高まったという。係内の協力体制強化にもつながり、災害発生時などの急な対応にも効果がみられた。
 出張所の中堅職員からは「中堅・ベテラン職員の人数が確保されるので、若手への指導が行き届きやすくなる。育成効果が高まるのでは」との声も聞かれる。
 遠軽出張所の山下和幸所長は「事業所の集約によって、各年代の職員をバランス良く配置できた」と強調。若手と中堅・ベテランの連携が取りやすくなったとし、「職員の資質向上が、事業進捗率のアップにつながれば」と期待を寄せている。
 一方で、各地域におけるサービスの低下が懸念される。建管は出張所ごとの機能を維持するため、人員が減少した出張所に地域との窓口となる主査を配置。施設の維持管理や災害発生時の初期行動に支障が生じないよう対応している。
 社会資本整備を推進するためには、土木技術職員の確保が命題と言える。職員の大幅な増加が望めない中、網走建管の取組が優れた先行例となるか、注目が集まっている。

その他の連載・特集 一覧

稚内大谷高 土木授業開講/振興局 新たな雑草対策の取組/LOCAL TOPICS 2018 ⑨宗谷

2019-01-10付 連載・特集

 稚内建設協会は、ことし75周年の節目を迎えた。1943年の創立以来、会員企業とともに地域の発展と安全・安心を守るため社会資本整備の推進に尽力してきた。現在は担い手の確保と育成に力を注ぎ、真摯にその命題と向き合っている。 宗谷管内には工業系...
ローカルトピック9画像

限られた労働力 フル活用/「V―Con」で生産性向上へ/LOCAL TOPICS 2018 ⑧留萌

2019-01-10付 連載・特集

 留萌管内の人口減少、高齢化に伴う過疎化は、急速に進行している。2015年の国勢調査によると管内の総人口は5年間で1割減少。地域の将来を担う労働力不足は深刻な課題となっている。こうした状況を受け、管内では産官が連携し、課題解決に向け、労働力...
ローカルトピック8画像

道管理施設の恒久対策推進/経済発展支える2次交通を強化/LOCAL TOPICS 2018 ⑦上川

2019-01-09付 連載・特集

再度災害の発生 ことし7月、記録的な豪雨が上川地方を襲った。旭川市では1日当たりの降水量が同月の観測史上最大となる144.5ミリに達し、道が管理する中小河川などが被災。7月豪雨の被害額は、旭川建管、旭川市、東川町で約25億円にのぼった。 2...
ローカルトピック7画像

JR駅前大門地区 函館で再開発進む/青函トンネルは開業30周年/LOCAL TOPICS 2018 ⑥渡島・檜山

2019-01-09付 連載・特集

インバウンド期待 異国情緒あふれる歴史的な街並みが広がり、ことしの全国魅力度ランキングで1位に返り咲いた函館市。本年度上期の外国人宿泊客数は約22万1000人で、前年度同期比10.5%増となり、上期では2年連続過去最高を更新した。 人口減少...
ローカルトピック6画像

震災からの復旧・復興へ/苫小牧市IRの優先候補地に/LOCAL TOPICS 2018 ⑤胆振・日高

2019-01-09付 連載・特集

緊急対応に尽力 ことし9月、最大震度7を記録した北海道胆振東部地震が発生した。特に被害が甚大だったのは厚真町、安平町、むかわ町の3町。厚真町は、大規模な山腹崩壊をはじめ、斜面崩落による河川の大規模な河道閉塞などが発生した。安平町は、学校など...
ローカルトピック5画像

後志道余市~小樽間が開通/小樽新市長 円滑な市政に期待の声/LOCAL TOPICS 2018 ④後志

2019-01-08付 連載・特集

様々な波及効果 後志道余市IC~小樽JCT間23.3キロメートルが今月8日に開通した。同区間は、2006年3月に国から事業認可を受け、12年に本線工事に着手。事業認可から12年の歳月をかけて完成した。開通を心待ちにしていた沿線自治体、地元商...
ローカルトピック4画像

BP建設地 北広島市に決定/2023年開業へ周辺整備も始動/LOCAL TOPICS 2018 ③石狩

2019-01-08付 連載・特集

 ことし10月、北海道日本ハムファイターズの本拠地球場建設地が北広島市のきたひろしま総合運動公園に正式決定した。新球場は、開閉式屋根を備えた天然芝グラウンドで、周辺にはアスレチック施設や飲食施設、温泉施設などの整備も計画。2023年春の開業...

暗渠疎水材に石炭ズリ利用へ/空知建協 建設戦士ツクルンダー登場/LOCAL TOPICS 2018 ②空知

2019-01-08付 連載・特集

災害リスク低減へズリ山採取を許可 夕張市内に66ヵ所存在する、石炭採取時の発生した石や土砂を堆積させた「ズリ山」。2012~13年度に融雪で一部崩壊した高松ズリ山の防災対策として、夕張市は15年度から民間事業者にズリの採取を許可している。 ...