トップページ > 連載・特集一覧 > 連載・特集詳細

道内7空港一括民営化/BPを街おこしのモデルケースに/Local Topics 2019〈3〉石狩

2019/12/16付 連載・特集
ローカルトピック3画像
国際線の需要が増加する新千歳空港

HAPの経営戦略

 ことし7月、道内7空港一括民営化に向けた優先交渉権者に「北海道エアポートグループ」が選ばれた。審査委員会では道内企業の知見を生かして、7空港の役割分担を明確化し、航空路線網拡充を図る「マルチ・ツーリズムゲートウェイ」を提案。外資企業も参戦する中で、7空港間の連携を重視した戦略が高く評価された。
 グループが設立した北海道エアポート(HAP)は、7空港が有する国際線60路線を、30年後には142路線に拡大する目標値を掲げている。30年間の総投資額には、4250億円を見込む。運営開始当初の10年間で、国際ゲートウェイ機能を概成させることとしており、7空港すべてで国際線旅客ビルを増築するなどの経営戦略を示した。
 7空港の先陣を切って、新千歳空港が2020年6月に運営事業を開始する予定。新千歳空港の旅客数は国内外線ともに7年連続で増加しており、18年には過去最高となる2331万人に達した。需要が急増している国外線の対応として、官民が連携してエプロン拡張や国際線ターミナルビル増築などに取り組み、機能向上を図っている。
 新千歳空港の設備投資には、30年間で約2950億円を見込む。今後5ヵ年は、空港施設の整備を優先的に行う。空港中央には、2次交通への乗継案内や観光情報を堤供する交通観光センターを設置し、利用者へのサービス向上に努める。

2次交通拡充を

 盛り上がりをみせる新千歳空港だが、ほか6空港は赤字が目立つ。HAPの蒲生猛社長は7空港全体で利益を高めるため「新千歳空港に到着した旅行客に、他空港から帰国してもらうなどの仕組みづくりが必要」と強調する。
 空港民営化の成功例をみると、16年に全国初の民間運営に乗り出した仙台国際空港(株)は、2年目で黒字を達成。2次交通の拡充を鍵とし、JRの増便や空港に直結する高速バスの開設などに取り組んだ。同社戦略企画グループの担当者は「観光流動を拡大するには行政機関などとの連携が不可欠」との認識を示す。
 本道の課題について蒲生氏は「新千歳と札幌を結ぶ快速エアポートの増便は、現状の路線数では難しい。トンネルを掘るなど複線化も含めた協議を進めなければならない」と訴える。地方路線では廃線や減線が進み、道央圏以外への観光流動を目指すHAPにとっては厳しい状況にある。
 一方で、本年度における訪日外国客のレンタカー利用率をみると、北海道が全国で2位となっている。北海道全域における周遊型観光の創出には、高速道路のさらなる延伸や、暫定2車線区間の4車線化なども必要となりそうだ。
 HAPは戦略実現のため、事業者や行政機関などを交えた協議会の立ち上げも構想している。道内全域に経済効果を波及するためにも、官民一体の取組が求められる。

BP構想実現へ

 ボールパーク(BP)構想の実現に向けて、ことし10月に(株)ファイターズスポーツ&エンターテイメントが立ち上がった。社長に就任した川村浩二氏は「地域とファンが愛着と誇りをもてる施設・空間を目指す」と、BPのコンセプトを示す。
 多様な世代が集うスポーツコミュニティ空間の創設に当たり、街の活性化を期待する声も大きい。北広島市の人口は、07年の6万987人をピークに11年連続で減少。市の柴清文BP推進課長は、BP事業について「人口増加や雇用の促進などの起爆剤としていきたい」と思いを表した。BPをきっかけに街おこしが成功すれば、「地方都市再生のモデルケースとなる」(道幹部)。
 にぎわい創出が期待される中、周辺道路では交通渋滞が懸念される。道と北広島市は交通渋滞の緩和に向け、仮称・きたひろしま総合運動公園線としてアクセスルートの建設を計画。20年1定道議会で新規道道認定を受ければ、来年度にも着工する見通しだ。また、北広島市はJRと新駅の新設について協議を進めていく。
 札幌市や空港とのアクセスを強化することで、交流人口の拡大を図り、北海道の新たなシンボルの形成を目指す。

その他の連載・特集 一覧

基盤整備が支える農業のICT化/三笠ぽんべつ着工再開求める声/Local Topics 2019〈2〉空知

2019-12-13付 連載・特集

スマート農業導入へ着々と環境整備 ことし8月、岩見沢市内で行われたスマート農業技術現地実演会に鈴木直道知事が訪れた。11月には、大区画化による高精度のICT農業を展開すべく、2008年から整備を進めてきた札幌開建所管の国営農地再編整備妹背牛...

北5西1・2推進が再開発誘発/円山動物園100万人突破/Local Topics 2019〈1〉札幌

2019-12-13付 連載・特集

札幌五輪から半世紀新たなまちづくりへ 1972年の札幌冬季オリンピックでは、開催に向けて15~20年分のインフラが「通常では考えられないスピードで整備が進められた」(関係者)。68年には、地下鉄南北線北24条~真駒内間の建設が実質2年9ヵ月...
ローカルトピック1画像

公共事業予算の行方/長期的な投資の方向性を/ニュースファイル2019〈5〉

2019-12-12付 連載・特集

 政府は5日、頻発・激甚化する災害への対応と経済の下振れリスクを回避するため、事業規模で26兆円の経済対策を閣議決定した。行政関係者は「補正と当初、臨時・特別の措置を含めた2020年度の公共事業関係費は、19年度並みとなるのでは」と予想する...

道内有料高速道路の4車線化/採算性・機運醸成 事業化の命題に/ニュースファイル2019〈4〉

2019-12-12付 連載・特集

4区間136㎞選定 国土交通省がことし9月に発表した「高速道路における安全・安心基本計画」では、概ね10~15年かけて有料高速道路の暫定2車線区間を順次4車線化する方針が打ち出された。優先整備区間のうち、道内分は道央道の八雲~国縫間17キロ...

防災・減災対策を推進/気候変動予測し事業効果向上/ニュースファイル2019〈3〉

2019-12-11付 連載・特集

治水対策を強化 大型自然災害に伴う被害が断続的に発生する中、各関係機関は公共インフラの整備を柱とする防災・減災対策の推進に力を注いでいる。政府はことし6月、国土強靱化年次計画2019を策定。本道を襲った16年夏の台風や18年7月豪雨、北海道...
ニュースファイル2019画像

医療機関の再編・統合/高速道路拡充が至上命題に/ニュースファイル2019〈2〉

2019-12-10付 連載・特集

全国最多54ヵ所 厚生労働省は9月、全国の公立・公的医療機関などを対象に再検証要請対象医療機関のリストを公表した。過疎地域の人口減が深刻化している状況を受け、直近の診療実績をもとに地域の医療需要を分析し、全国自治体に急性期機能や病床数などの...
ニュースファイル画像

札幌市の総合評価拡大/負担軽減や担い手確保がカギに/ニュースファイル2019〈1〉

2019-12-09付 連載・特集

くじ引き抑制 中期実施計画のまちづくり戦略ビジョン・アクションプラン2019素案に、競争入札に占める総合評価落札方式工事の割合を15%から20%に拡大する方針を盛り込んだ札幌市。14年度の品確法改正により、これまでも総合評価の実施割合を徐々...
図表・過去5年間における総合評価適用工事の契約金額と適用割合

災害体験 人材育成に生かす仕組みを/より強靭な基盤整備へ/未曽有の自然災害に挑む〈4〉

2019-09-13付 連載・特集

―災害復旧事業の現在の状況、今後の見通し、課題について 公共土木施設関係では、厚真町として本年度約100億円の予算を計上した。これと合わせて国、道もそれぞれ災復事業を実施することとなったが、1ヵ所に複数の事業主体が重なる場所もあるので、被災...
厚真町長宮坂尚市朗氏画像