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旭川空港の民営化控え/けんせつ担い手育成会議始動/Local Topics 2019〈7〉上川

2019/12/20付 連載・特集
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ターミナルビルの増改築が完了し、来年に民営化を控えた旭川空港

外国人宿泊数増加

 ターミナルビルの増改築工事が完了し、ことし9月にグランドオープンを迎えた旭川空港。近年の年間乗降客数は110~120万人で推移しているが、ことしは10月末現在で70万4604人を数え、旭川空港ビル(株)は「過去5年間で最多にのぼる勢い」と期待する。
 一方、10月末現在における国際線の乗降客数は3万1959人と低調に推移。近年は減少が続き、空港ビル関係者は「台湾や韓国などを結ぶ国際便の減便が低下の要因」と分析する。
 しかし、上川管内の訪日外国人の宿泊客数は増加しており、2018年度は過去5年間で最多の100万7175人にのぼった。
 関係者によると、新千歳空港を起点に道内を周遊する行程が人気を博しており、宿泊客数の増加につながっているという。国際線の乗降客数が伸び悩む中、同社の佐々木恵一専務は「海外も含め、就航便を増やしていくことが重要」との見方を示す。
 活路として注目を集めるのが、来年に控えた道内7空港の民営化。新千歳空港に続き、旭川空港の運営権は20年10月1日から民間に移される。
 運営を担う北海道エアポートグループは、着陸料割引のほか、中国や韓国を中心とした路線の拡大を計画。ハード面では、駐機場2ヵ所の増設や、ターミナルビルの増築などを行い、国際線就航需要増に対応する方針だ。乗降客数の増加に備え、駐車場の拡張や、ターミナルに直結するホテルの誘致にも動く考えを示している。

アクセス改善が鍵

 全国に先駆けて民営化に乗り出し、乗降客数を大幅に伸ばした仙台空港に目を向けると、多くの関係者が「空港にアクセスする2次交通網の強化が鍵」と口をそろえる。旭川空港においても、札幌圏や道東圏など道内主要都市との直通バスを運行し、2次交通網を強化していくことが不可欠とみられ、官との連携も重要な要素となりそうだ。
 高速道路に直結する仙台空港のように、旭川空港周辺でも地域高規格道路「旭川十勝道路」の整備が進められている。旭川から占冠を結び両端で高速道路に接続する計画で、旭川開建は、開通済みの富良野道路と整備中の富良野北道路を所管。旭川建管は、空港に最も近い旭川東神楽道路の整備を進めている。
 東神楽町の山本進町長は「地域観光の核となる旭川空港に人を呼び込むためにも道路網のさらなる整備が大切」と力説する。空港テナント関係者は「アクセス環境が良くなれば、利用客の増加につながる」と早期開通を期待する。
 大きな転換期を来年に控えた中、空港民営化による経済効果を全道に波及させるためにも、道路交通網の拡充を求める声は多い。

多世代に業界PR

 旭川建設業協会(川島崇則会長)が16年に会員企業を対象に行ったアンケート調査によると、回答した40社のうち、17社で新卒者36人を採用。旭川建協の高畑靖典常務理事は、「概ね同水準で推移している」と近年の状況を示す。
 担い手確保に向け、関係者は現場見学会や出前講座などに取り組んでいるが、上川調査設計協会の菅原泰彦事務局長は「どの企業も採用に頭を悩ませている」と窮状を訴える。「技術者の数が足りない。このままで地域を守っていけるのか」と不安を吐露する業界関係者は多い。
 こうした背景からことし3月、旭川開建、旭川建管、旭川市、旭川建設業協会(川島崇則会長)、上川調査設計協会(千葉新次会長)の5者は、北のけんせつ担い手育成会議を発足した。
 従来の取組に加え、発注者、建設業者、コンサルタントの役割や魅力、取得すべき資格などを紹介するPR冊子を新たに作成。管内の学校に配布している。
 保護者からは「資格の種類を知ることができ、子どもの就職の参考になる」と評価する声が聞かれた一方で、業界に対する認識不足も明らかになったという。
 育成会議の座長を務める旭川建管の劔持浩高事業室長は「学生だけではなく、親世代や一般にアピールしていくことが重要」と力を込める。
 育成会議は次年度、休日に保護者を対象とした現場見学会を行うなど、幅広い世代に業界をPRするとともに、普通高校での取組の実施を検討している。今後の動向に注目が集まる。
 

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北のけんせつ担い手育成会議の様子

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