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自動運転 全国初の長期実証/イメージアップ事業開始/Local Topics 2019〈11〉十勝

2019/12/25付 連載・特集
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自動運転による公共交通サービスの実現に期待が集まる

実現を望む声多数

 ことし5月、大樹町の道の駅「コスモール大樹」を拠点に、自動運転サービスの長期実証実験が行われた。国土交通省では、道の駅等を拠点とした自動運転サービスの社会実装に向けた実証実験を全国18ヵ所で展開。うち、大樹で行われた、自治体等が自家用車を用いて運送サービスを提供する「自家用有償旅客運送」による長期の実証実験は、全国初となる。
 2017年度の実証実験が5日間で市街地7.6キロメートルを走行したのに対し、今回は市街地周辺4キロメートルの循環便に加え、コスモール大樹と生産空間の尾田地区を結ぶ12.5キロメートルの往復便の2ルートで検証を実施した。
 1ヵ月間に及ぶ実証実験の総利用者数は循環便が288人、往復便が89人の計377人。利用者の75%が60歳以上の高齢者という結果から、地方の高齢者の「足」となる公共交通機関のニーズの高さが伺える。
 実際、利用者からは「買い物や通院が便利」など好意的な声が多く、高齢者の8割が満足する結果に。高齢者による自動車事故が問題視される中、免許返納後の生活を考えて早期の実用化を望む声も多く上がっていた。
 さらに、道の駅運営者からは「交通結節点としての機能をもたせたことで、道の駅利用者が増えた」と、地域活性化にも期待が高まる。
 実証実験では、GPS制御と磁気マーカー制御とで正着制御の比較検証も実施し、磁気マーカーがより精度が高いことを確認。トンネル内などGPS不感地域においては、走行ルートに磁気マーカーを埋設することで安全性向上に効果を発揮する。
 今回の実証実験はドライバーが同乗するレベル2で実施。地元交通事業者は「ドライバーの資格要件緩和が必要」と指摘し、実際にドライバーを務めた有償ボランティアからは「長時間の拘束は難しく、空き時間を利用した働き方が望ましい」と話す。
 今後の事業の可否を左右する採算性については、有償ボランティアを活用することで、人件費の削減が期待できる。それでも国や地元自治体による補助などで収入を補填することが必要な状況にある。
 しかし、急速な少子高齢化が進む中、中山間地域の人流・物流の確保は、今後も生産空間を維持・発展させていくために必要不可欠。大樹町ではすでに公共交通網計画の再編に乗り出し、また、シームレス交通戦略推進会議をはじめ、十勝では交通ネットワークについての議論が活発化している。
 人口減少社会の中で、新たな交通網の在り方が問われている。室蘭工業大学の有村幹治准教授は「今後は十勝管内にある様々な交通ネットワークに視野を広げ、いまある技術を使ったネットワークの再構築を考えていく」と展望する。

普通科高も対象に

 若年層の入職者不足とともに、離職率が高いことも課題に挙がっている建設業界。帯広二建会(萩原一宏代表幹事)では、「建設業が若者にとって魅力ある産業となるよう、今後の建設業の在り方を見直したい」との考えから、本年度から建設業イメージアップ事業をスタートさせた。
 同事業は、管内の公私立高校全24校を対象とした一大プロジェクト。高校生やその保護者、教員に対し、アンケート調査を通じて建設業に対するイメージを把握した上で、出前講座や座談会の中で建設業の実態を伝えてきた。
 出前授業では「地元・十勝で働くことの魅力を伝える」ことをスタート地点に設定し、農業や観光業など十勝のもつポテンシャルの高さを伝えることを中心に、それらの産業を支える建設業の役割も説明した。
 全校生徒約120人を対象に出前講座を行った広尾高校では、講座後に再度行ったアンケート調査において“建設業のポジティブなイメージ”について、「将来性がある」が講座前に比べ5ポイント増の17%、「女性も活躍している」が7ポイント増の11%と、イメージ改善の兆しがみえる。
 座談会では、保護者らと建設業のイメージなどについて意見交換。公務員への就職を望む声や福利厚生制度など実態が分からないという声が上がる中、「若手社員の働く姿を知りたい」という意見もみられた。
 萩原代表幹事は「十勝の魅力を感じる生徒が増えたという手応えは感じている」とする一方で、「保護者側のイメージ改善に力を注いでいく必要がある」と見据える。
 来年度は入社1、2年目の社員の様子を動画にまとめ、イベントなど様々な機会を通して上映することを検討。建設業のさらなるPRに取り組んでいく。
 少子化が進む現代。入職促進を図るためには工業系高校だけではなく普通科高校の生徒も未来の技術者として対象としていく必要がある。“管内すべての高校を回る”という新たな挑戦がどのような実を結ぶか、今後の展開が注目される。

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