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新幹線効果 最大限引き出す/倶知安町のまちづくり/Local Topics 2020④後志

2020/12/11付 連載・特集
Local Topics 2020④後志画像
新幹線駅舎デザインコンセプトや駅周辺整備の在り方について、活発な議論が行われている
 2030年度末の開業を目指す北海道新幹線新函館北斗・札幌間。駅舎が設置される倶知安町では、ことし8月に駅舎デザインコンセプト検討委員会を立ち上げ、開業に向けた準備を本格化させている。
 新幹線の開通によって、倶知安・札幌間の所要時間は25分程度と、JR在来線を使った場合の4分の1以下に短縮。定時性および安全性の高い移動手段の実現、その効果に地域は熱い視線を送っている。倶知安町観光協会は「駅を起点に各方面への周遊が図られることで、より一層の観光発展につながれば」と開業を心待ちにする。

高まる観光需要

 町市街地南部のひらふ地区をはじめとするニセコエリアは、世界一とも称される雪質で知られる国内有数のスノーリゾート。2000年代以降のインバウンド取り込みが功を奏し、特にオーストラリアやアジアからのスキー観光客が集うウィンタースポーツのメッカへと変貌を遂げている。
 ホテルやコンドミニアムなど、海外資本による開発も盛んに行われている。観光業のほか、旺盛な投資意欲に支えられ、ニセコエリアに土地を求める需要は年々増加。ことし9月公表の都道府県地価調査では、倶知安町内の基準地が前年比約30%の伸びをみせて、住宅地・商業地共に全国3位の上昇率を記録している。
 コロナ禍にありながら地価高騰が続く状況に、町の関係者は「企業も数年先に目を向け、終息後の賑わいを見越しているのでは」と分析する。ニセコ・倶知安がもつブランド力に衰えはみられず、その観光需要は高まっていくと言えそうだ。

駅拠点に周遊促進

 国際リゾート地として広く認知され、新幹線を通じて今まで以上の人の流れが見込まれる倶知安町。駅舎デザインコンセプト検討にかかる町民アンケートの結果をみると、「駅舎開業で期待すること」への回答は「駅周辺市街地の活性化」が57.2%と半数を超えた。
 町のまちづくり新幹線課の担当者は、「まずはニセコエリアを含めた羊蹄山麓地域の玄関口となる駅を拠点に、交通結節点の機能をもたせたい」と話す。
 例えば、タクシーや路線バスの乗降場などを備える方向で検討している駅前広場。駅前通り方面への回遊促進につなげ、賑わいを創出する上で欠かせない空間だ。新たな交通施設ができれば2次交通の拡充も予測されるため、担当者は「駅周辺におけるアクセス路の整備も必要」と強調する。
 ハード施策と併せて、倶知安ならではの魅力を高めていくことも求められる。町民を対象とした景観に関するアンケートでは、「倶知安町の魅力だと思うもの」に対し「羊蹄山やニセコ連峰の山なみ」が最多の88.2%に。町が誇る豊かな自然をまちづくりに生かすべきと考える関係者は多い。

魅力づくりが鍵

 新幹線開業を見据え、後志自動車道の倶知安延伸に向けた整備が進められている。18年12月に開通した余市IC~小樽JCT間の沿線・周辺自治体では、翌年5月の大型連休期間に観光施設の入込客数増加といった効果が。余市町商工観光課の担当者は、「交通利便性が向上し、高速道路を利用して町内に足を運ぶ人が増えた」と振り返るように、観光への好影響を実感している。
 一方、札幌都心部とのアクセス向上に伴う懸念も。ある関係者は「車、新幹線のいずれにしても目的地が倶知安でなければ単なる通過点になってしまう」と訴え、さらなるまちの魅力づくりが必要との見方を示す。
 国や道の出先機関がそろう転勤族の多いまちだからこそ、「倶知安が通勤圏内となれば、札幌に住みながら通う人も当然出てくる」と定住対策の重要性を指摘する声も少なくない。町は“訪れたい”“住みたい”気持ちを喚起する倶知安らしい景観などを大切にした、賑わいあふれるまちづくりを目指している。

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