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働き方改革に 大きく貢献/十勝総振局 畑地整備で夏工事/Local Topics 2020⑪十勝

2020/12/22付 連載・特集
Local Topics 2020⑪画像
土が乾燥し高品質な基盤整備が可能に。さらなる協力を得るためPR資料も作成
 夏の日差しが照りつける十勝晴れのもと、ほ場を行き交う重機の数々。十勝総合振興局は本年度から、地元農家の理解・協力を得て施工時期を前倒す、夏工事の試行を開始した。例年であれば秋に見られる光景だが、雨の少ない夏期に施工を行うことで、高品質な基盤整備と働き方改革の推進という、受益者と施工業者の双方に大きなメリットがある取組として期待されている。
 天候不順や受益者調整など、働き方改革の推進に多くの課題を抱える農業農村整備事業。道農政部は、働き方改革に対応した「業務改善プログラム」を策定し、畑地整備においても積極的に施工時期の平準化を図る方針を打ち出した。
 農業基盤整備における施工時期の平準化を巡っては、促進費を活用する通年施行制度が浸透。空知などの水田地帯では大きな成果を上げているものの、十勝をはじめとした畑作地帯では営農形態の違いなどから制度の導入が進んでいない。
 通常、畑地整備においては小麦等の収穫後の秋に施工時期が集中する。建設業界からは「施工期間が短く、人員や資機材の確保も難しい」として、施工時期の平準化を望む声が上がっていた。
 こうした声を受け、十勝では、通年施行制度にとらわれず、作付調整などの協力を得て施工時期を前倒す夏工事の試行に乗り出した。初年度は、美蔓高倉第2地区(音更町)など8地区をモデル地区に指定。区画整理や除礫など64ヘクタールの整備を夏期に実施した。

施工業者高く評価

 試行による効果の確認に当たっては、工事受注者と協力農家を対象にアンケート調査も実施。施工業者の現場代理人は「段階確認や事務作業が分散化し、業務時間の平準化が図られた」などと取組を高く評価した。
 受注者へのアンケートでは、資機材不足の解消や下請業者の確保につながったとする回答が大半を占め、夏工事の推進については「積極的に推進するべき」と全社の意見が一致。働き方改革推進の大きな一手として、業界から受け入れられていることが分かった。
 夏工事は農家側にも十分なメリットがある。降雨の少ない夏期は土が乾燥し、営農に適した良質なほ場において、作付や秋起こしが可能となる。
 協力した農家も「秋は水はけが悪く畑のこね返しを心配していたが、前倒しで施工してもらったことで満足できる品質となった」と、その利点をしっかりと認識。アンケートでは、夏工事について、「協力する」と「まぁ協力する」を合わせ9割超の農家が引き続き協力していく意向を示している。

農家の理解促進を

 夏工事をさらに推進していくためには、「受益者の建設業界に対する理解をより深めていくことが重要」と関係者は指摘する。しかし、建設業界における働き方改革の必要性について前向きな農家は6割程度。十勝総振局の樋口雅士整備課長は「働き方改革の重要性について、受益者の理解が得られるよう引き続き説明していく」としている。
 農政部では、今回の試行を踏まえ、夏工事推進のためのPR資料を作成。振興局においても「事業説明会などにおいて資料を活用し、理解の促進につなげたい」(樋口課長)と意欲をみせる。

通年施行への一歩

 受益者にとって休耕による収量減は、夏工事に協力する上での課題となっている。通年施行制度は受益者の負担軽減につながるとして、畑地整備においても導入を目指す動きがある。
 十勝総振局では昨年、制度の事業主体となる市町村担当者を対象とした説明会を開催。畑地整備における通年施行制度実現への第一歩を踏み出した。
 市町村の制度設計など実現への道のりは長いが、帯広建設業協会の斉藤和之農林水産土木委員長は「農家の協力を得やすくなれば、建設業の働き方改革もより進んでいくはず」と期待を寄せており、建設業界としても今後の通年施行制度の動向を見守っている。
 十勝総振局では来年度も夏工事の取組を継続する方針。今回のモデル地区に限らず広く関係団体に協力を呼びかけていく。
 また、他の振興局においても夏工事導入に向けて検討を進めており、通年施行制度を含め、施工時期の平準化の取組が働き方改革にどれだけの効果をもたらすか、今後の先行きに注目が集まる。

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