日勝峠 待望の開通/社会基盤整備の重要性露わに/Local Topics 2017<5> 胆振
2017/12/14付 連載・特集
国道274号日勝峠は、ことし10月28日に1年2ヵ月ぶりの開通を果たした。開通時には、室蘭側の通行止めゲート手前に、80台以上の車両が待機。ゲートが解放された際には、関係者に対しドライバーから「ありがとう」「お疲れ様でした」などと声をかける様子がみられ、これまでの努力が実を結ぶ開通となった。日高町が開通直後に開催したセレモニーでは、室蘭開建の平野令緒部長が「北海道土木史に残るこの復旧工事は、建設関係者の熱意とプライド、技術力のたまもの」と述べ、昼夜を問わず作業に当たった関係者に対し感謝の言葉を贈った。
総力を結集し挑戦
日勝峠は、昨年8月の台風の影響によって橋梁や道路本体など計66ヵ所が被災。建設業者が「過去に類をみないくらいの災害」と言うほどの状況だった。峠での施工は、復旧した道路自体が工事用道路となるため、下流部の工事が急務となる。担当者は「自工区の施工を急ぐ中、上流工事のボトルネックとならないよう工事用道路造成を行う必要があった」と説明する。
また、一本の道路で安全かつ効率よく進めるには工事間の連携が必須であったため、日勝峠災害復旧関連工事推進協議会による情報共有と工程管理のもとで工事が進められた。
協議会では、全区間をいくつかの工区に分け、工区ごとに班長を決めて毎週開催する「班長会議」と、発注者も参加する2週に一度程度の「全体会議」を開催。各現場の資材搬入や土砂搬出等の工程をスムーズにすることで、早期復旧に役立てた。工事は降雪が激しい冬期間も行い、協議会会長の松隈嘉和氏は「“一日も早い通行止め解除”を合い言葉にした」と、総力を結集して臨んだ挑戦を振り返る。
こうした官民一体となった取組が結実し、三輪茂日高町長の「復旧まで3年はかかると思った」との言葉とは異なる結果に。1年2ヵ月という驚異的なスピードで開通した。
開通後の地元の声
室蘭開建によると、日勝峠通行止め解除後1週間の交通量(速報値)は、1日平均3,800台で、通行止め前と比べて全車種約1.2倍と交通量が回復した。日高町関係者は「道東・道央双方からの通行車両や輸送車両などが戻り、道の駅を含めた観光施設や飲食店にも活気が出てきた」と喜ぶ。輸送事業者は「北海道の冬の道路状況は厳しく、日勝峠の通行止め解除によって輸送ルートの選択肢が増えることは非常にありがたい」と話し、地元や輸送事業者がいかに日勝峠を活用しているかが伺える。
1年2ヵ月の間、道央および道東における物流・医療・観光等の社会経済活動は道東自動車道に頼ってきたが、日勝峠の復活によって、本道の物流は以前の姿を取り戻した。
再度災害防止へ
日勝峠開通に喜びの声が上がる一方、日高町観光協会の関係者は「また同じような台風が本道を襲ったとき、再び道路が寸断されないことを祈るばかり」と、災害の再発を危惧する。ある関係者は、大規模な自然災害が近年増加している傾向を挙げ「住民の財産や生命を守るため、今の自然状況に応じた、災害の起こりにくい社会基盤の整備・改築は普段からしっかり行っていくべき」と指摘する。ことしも9月に台風18号が本道を襲い、胆振管内は国道36号竹浦橋や白老・登別海岸で被害が出るなど、新たな災害が発生している。
今後、他の地域で同じような災害発生を未然に防ぐ観点からも、国土強靱化に向けた社会資本整備の着実な推進が求められる。
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