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情報の透明性確保し市民理解を/北海道新幹線ホーム位置問題/ニュースファイル2017<2>

2017/11/28付 連載・特集
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42年度末の開業に向けて、早期解決が望まれる
 昨年3月に開業した北海道新幹線。平成42年度末の札幌開業を目指し、着々と工事が進められている一方、札幌駅に視点を移すと、ホーム位置問題が依然として未決着のままとなっている。

札幌駅地下案浮上

 ホーム位置問題を巡っては、27年夏に一部報道で「JRが西側案を検討」という記事が掲載されたことを機に問題が表面化。現駅1、2番線を活用する「認可案」を想定していた道と市にとっては、寝耳に水といった状況だった。
 その後、同問題の解決に向けて、28年4月にJR北海道、鉄道・運輸機構、道、市による4者協議の場を設置。同年10月の4者協議では、「現駅案」(認可案)と東側のJRタワーに隣接する「東側案」の2案に絞り込むことを決定したことから、ゴールは近いかと思われた。しかし、在来線に影響が及ぶ現駅案とJRタワーの改修が必要となる東側案の課題を解決するまでには至らず、年を明けても結論が出ることはなかった。
 こうした中、ことし10月6日、鉄道・運輸機構とJR北海道が記者会見を開き、現駅案と東側案に加え、「地下案」を新たな候補として検討することを表明した。地下案は、もともと建設費が巨額になることが分かっていたため、検討の遡上に載ることはなかったが、現駅案と東側案の両課題を解決できる地下案が再浮上することとなった。

透明性確保が必要

 鉄道・運輸機構とJR北海道のこうした動きに対し、ある関係者は「説明が不足している」と指摘する。「現駅案においては、在来線に影響が出てしまう技術的な根拠を示すべき」とし、「東側案は、JRタワー改修費がどのくらいかかるのか示されていない」と述べる。今回示された地下案にしても、“巨額”と想定していた事業規模が示されることはなく、当事者以外は蚊帳の外といった状況だ。
 「このような状況では、建設費を負担する市民からの理解は得られない」(同氏)と述べ、情報の透明性を確保するよう訴える。市の関係者も情報不足を感じており、「どの案が最適なのか、判断材料が全く足りていない」と嘆く。また、市のまちづくり構想や42年度末の開業にも影響が及ぶ可能性があるため、「早く結論付けてほしい」と心境を語る。

建設費抑制が鍵

 地下案では、地下鉄東豊線の下に新駅を造ることを想定している。ルートは、北5条・手稲通の下を通す考えで、深度は30㍍弱と見込む。地下案の最大のメリットは、在来線への影響を回避できる点だ。
 道のある幹部は、観光施策のさらなる推進に向けて、札幌市と新千歳空港を結ぶ快速エアポートの増発の必要性を訴える。「在来線のホーム数が減少し、快速エアポートの増発ができなくなることは避けたい」と断言する。
 一方、最大の障壁となる巨額の建設費においては、鉄道・運輸機構とJR北海道が建設費抑制の可能性を探っているようだ。車両基地を地下で造り、設備機器を可能な限り地上に設置するなどの具体的な案も示している。ある関係者は、42年度末までの開業に間に合わせるには「早期の解決が必要」とし、「建設費が一定程度抑えることができれば、地下案で決着するのでは」との見方を示す。
 ただし、在来線との乗り換えが遠くなることや、札幌市のまちづくり構想への影響、早期開業への影響といった課題も多く残す。限られた時間の中、議論の透明性を高め、どのような判断が下されるのか、今後の動向に注目が集まる。

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