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漁港機能の強化へ対策推進/建設業は水産林務行政のパートナー/道水産林務部長 幡宮 輝雄氏 インタビュー

2017/09/29付 連載・特集
幡宮 輝雄氏画像
 はたみや・てるお
 昭和57年北大水産卒。平成25年水産局長、27年桧山振興局長。ことし4月現職。
 昭和34年5月30日生まれ、58歳。深川市出身。
 幼少期から海が好きで、一時は船乗りを目指したことも。趣味はサッカー観戦で、地元の北海道コンサドーレ札幌をこよなく愛する。週末は夫人と試合会場に足を運び、選手に声援を送っている。J1残留に向けた戦いが続く中、「若い選手が多いので、希望がもてる」と笑顔をみせる。
 本道における水産業と林業は、漁業生産活動の拠点となる漁港の機能強化や、伐採期を迎えている人工林の利活用など、取り組むべき課題が多い。ことし四月に、本道の水産林務行政の舵取り役を担う道水産林務部長に就いた幡宮輝雄氏に、課題解決の方策や、建設業への期待などを聞いた。
 

―水産基盤整備の現状と課題を

 水産基盤整備では、漁業生産活動の拠点となる漁港において、大型低気圧に伴う波浪被害を防ぐための施設の機能強化や老朽化対策、防波堤の嵩上げなどを進めている。ほかにも、航路と港内に堆積した砂への対策として、防砂堤の整備や浚渫による機能の維持管理に取り組んでいる。
 近年の漁船の大型化に対応するため、漁港の拡張整備にも力を注いでいる。国内外から注目を集めている北海道の水産物の輸出を促進するため、漁港の衛生管理対策も推進する。屋根付き岸壁や清浄海水導入施設などの整備も進め、水産物の品質を確保できるよう、環境を整えていきたい。
 漁業生産が減少する中、水産生物の生活史に配慮した良好な生息環境を創出するため、カレイ、スケトウダラ、ホッケを対象とした魚礁や、タコ、ヤリイカの増殖を目的とする産卵礁の整備を継続して行う。
 豊かな生態系を育む機能を有し、水産資源の増大に大きな役割を果たす藻場と干潟を回復するため、海域ごとに藻場ビジョンを策定し、ハードとソフトが一体となった対策によって生産力の向上に努めていく。

―北海道の林業を取り巻く状況と課題は

 林業・木材産業では、カラマツ、トドマツといった人工林が利用期を迎えている。道産木材の自給率は、全国の2倍相当の約6割に達した。「植えて育てて、伐って使って、また植える」という森林資源の循環利用は着実に進みつつある。
 道は、これらの動きを加速させるため、ことし3月に北海道森林づくり基本計画を改定し、「森林資源の循環利用の推進」を施策の一つとして位置付けたところ。今後は伐採後の着実な再造林はもとより、高性能林業機械と路網の組み合わせなどによる木材供給力の向上に取り組んでいく。
 伐採や植林などを担う人材の育成・確保も喫緊の課題として捉えている。他府県の取組を参考に、林業大学校など生産活動を支える人材育成機関の設立に向けた検討を進め、育成すべき人材の在り方について基本的な方針をことし中に取りまとめたいと考えている。
 近年頻発する山地災害などから地域住民の暮らしを守るため、森林の防災・減災機能をより強化するとともに、担い手の育成にも全力を尽くしていきたい。

―日欧EPA大枠合意による道内水産林業への影響は

 7月に日欧EPAが大枠合意したことで、本道の水産業や林業・木材産業が影響を受ける可能性がある。サケ・マス、製材、構造用集成材などの品目において、EUからの安価な製品の流入や市場価格の低下が不安視される一方、ホタテ貝をはじめ、輸出の増加が期待される食材もある。
 道は今後、地域や団体の意見をしっかりと聞きながら、力強い水産業および林業・木材産業をつくっていかなければならない。国に対し、万全な対策を求めていく考えだ。

―建設業へのメッセージ

 建設業は、地域経済はもちろん、雇用を支える観点からも非常に重要な産業だと認識している。大災害が相次いで発生している近年においては、地域の安全・安心を確保する上でも不可欠な存在となっている。
 一方で、公共事業予算の縮減を受け、厳しい経営を強いられている企業が多いと思われる。技術者をはじめとする人手不足も深刻な状況だ。地域を支える建設企業が適正な利益を上げていくためにも、水産林務部としてできる限りの協力をしていきたい。
 今後も地域要望に応じた基盤整備を進めるため、業界の意見を聞きながら、現場に反映させるべきものは速やかに対応していく。「困った時の建設業」と表される無二の産業を守るためにも、受発注者の連携が重要だと考えている。

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