将来見据えた取組が鍵に/建設業の働き方改革/ニュースファイル2017<1>
2017/11/27付 連載・特集
罰則付上限規制
政府はことし3月、働き方改革実行計画を取りまとめた。建設業については、現行、月45時間かつ年360時間と定めた時間外労働規制の適用除外となっているが、5年後には罰則付で規制対象に含めると明記。猶予期間は設けられたものの、重い命題が建設業に突き付けられる格好となった。時間外労働を減らす上で不可欠なのが週休2日の確保だ。しかし、昨年11~12月にかけて国土交通省が直轄工事の受注業者を対象に実施したアンケート調査をみると、技術者・技能労働者問わず完全週休2日または4週8休を取得しているのは、わずか15%程度にとどまっている。実行計画の策定は、5年という猶予期間の中で、この数値を100%にするということを意味する。国交省では、こうした状況を踏まえ、これまで以上に週休2日による施工、適正な工期設定、施工時期の平準化、生産性向上に力を注ぐ方針だ。
積雪寒冷地も考慮
開発局でも、国交省の方針に基づき、適正な工期設定、施工時期の平準化、生産性向上に加え、契約後、受注者からの申請に基づき、週休2日に取り組むという受注者希望型を中心とした施工対象工事を公告。道においても、本年度ゼロ道債等から適用する方向性を示している。適用工事で週休2日相当の現場閉所を実現できた場合、共通仮設費に1.02、現場管理費に1.04の補正係数を乗じることとしている。こうした動きに対し、担い手確保を切実な課題として認識する建設業も経営陣を中心に、「週休2日確保の方向性は、もちろん賛成」との声が挙がる。
ただ、個別工事で実現していくことを考えたとき、「積雪寒冷地である本道は、本州と異なり、施工時期が限られる。積雪寒冷地に考慮した制度設計は必要」「下請と休日の双方を確保するには、何らかの収入補てんも必要」「土日を休んだ場合、試行の経費率では実態と合わない」「公共工事設計労務単価も週休2日を土台に積算してほしい」―と悩みは尽きない。
実践積み上げ重要
一方で、江別市の草野作工(株)は単価と経費の厳しさに加え、積雪寒冷地という本州以上に難しい施工条件の本道で、週休2日を確保した施工を実践。技能労働者の休日分の給与を一定程度支給することや、元下間による休日協議などを通じ、週休2日を実現している。他の建設企業でも、週休2日の確保までとはいかないが、処遇改善を図る観点から、5年かけて技術者の収入を、年収ベースで100万円増やした。これらの企業の根底にあるのは「利益がある程度減少しても週休2日をはじめ、従業員の処遇改善に取り組まないと優秀な人材が集まらない」との危機感だ。
わが国の雇用環境は、一昔前の就職氷河期から一変した。少子高齢化による人口減少で、企業経営の視点は労働力の確保に重きが置かれている。雇用される側の多様な価値観に応え、人材獲得競争で生き残ることが、企業存続につながるという意識に変わりつつある。ことし10月に開かれた定例記者会見で開発局の和泉晶裕局長も「人が入ってきてもらえるような環境をどうつくるかが、地域に根差した魅力ある建設業として維持していくために重要」との考えを示した。
開発局では、施工平準化の一環として本年度当初予算で設定したゼロ国債対象工事の大半を、受注者希望型の週休2日の施工対象で公告する。開発局関係者は「週休2日を確保するための課題と解決策、諸条件を改善するにもデータが必要で、それには実践の積み上げが不可欠」との認識を示す。
裏を返すと、「実践が積み上がらなければ、課題も分からず、改善しようにもできない」(関係者)。こうしたことからも当初ゼロ国債工事をはじめとした週休2日の取組が、今後の制度を左右する重要な材料になると言えよう。
一方で、公共工事設計労務単価については、流動的な要素も残すが、「週休2日を加味した価格となっていくのではないか」と予想する関係者は多い。発注者、建設業者問わず、積算が週休2日相当となり、時間外労働の罰則付上限規制も迫る中で、「果たして受注者希望型という形でいつまで継続するかは疑問。将来は、発注者指定型がベースとなるのでは」との声も聞こえてくる。
1月に法案提出へ
建設業の時間外労働規制を盛り込んだ働き方改革実行計画に基づく関連法案は、来年1月の通常国会に提出される見通しだ。5年という猶予の中で、どのような環境整備が進められるのか。今後の動向が注目される。その他の連載・特集 一覧
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