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農業土木で情報化施工/雨竜川治水対策促進へ期成会発足/Local Topics 2017<3> 空知

2017/12/12付 連載・特集
Local Topics 2017<3> 画像
モニタに映し出された3次元設計データのもと重機が稼働

全国初の試行

 農林水産省はことし3月、低コスト農地整備推進実証事業を創設。農業農村整備事業で情報化施工を試行し、得られたデータの営農への利活用も含めて、効果や課題を検証する。
 本年度は全国2地区の試行で、空知総合振興局が所管する経営体西川西地区が調査ほ場として選ばれた。6.5ヘクタールを情報化施工区域に設定し、区画整理を実施した。
 2次元の発注図面をもとに、3D―CADで座標データを入力して情報化施工対応の3次元設計データを作成。さらに、施工を担う(株)砂子組(奈井江)の技術提案によって、農水省のガイドラインには記載のないUAVを使った3次元測量点群データも作成した。
 整地と排水路には、3次元設計データをもとにガイダンスや自動制御を行うバックホーとブルドーザを使用。測量などに要した作業時間や労務数、単位当たりの施工時間に関し、通常施工区域5.2ヘクタールとの比較検証を行った。

効果と課題を検証

 東部耕地出張所の報告によると、起工測量に関しては、通常施工に対して情報化施工の作業時間が31~52%となり、労務数も半減。UAV測量では、1ヘクタール当たり450万点にのぼる測定点数が測量精度を高め、誤差は30ミリ以内に収まった。砂子組の岡内俊憲現場代理人は「ガイドライン化されれば農業土木でも活用が進むのでは」とUAV技術の普及に期待する。
 施工時間は、バックホー施工で49~70%に短縮。ブルドーザ施工においては、軟弱地盤の影響により作業時間が106%に増えたが、岡内氏は「キャビン内のモニタを確認しながら作業するので、重機の近くに作業員を配置せずに済む」と人員削減および安全面のメリットを強調する。
 国の方針を踏まえ、道農政部は引き続きデータの集積に取り組む考えを示している。他管内での試行も視野に、農業農村整備事業におけるICT技術の活用法を探っていくという。
 一部関係者からは、ICT建設機械の高額なリース代や超湿地への対応などの課題が指摘されているが、ICT技術が生産基盤を支える鍵となるか、その動向に注目が集まっている。

ダムの有効活用を

 雨竜川治水促進期成会が、10月に発足した。設立総会では、流域1市6町の首長が一堂に会し、雨竜川の整備促進を後押ししようと決意を新たにした。
 雨竜川流域においては、26年8月の豪雨によって、計画高水位を超える洪水が発生。幌加内市街地上流で家屋・農地が浸水するなど、生産空間や住民の安全を守るための迅速な治水対策が急務となっている。
 開発局はことし7月、石狩川水系雨竜川河川整備計画を変更。雨竜第1・第2ダムの有効活用による治水対策を盛り込み、新規事業採択に向けた計画段階評価でも、河道掘削+雨竜第2ダム嵩上げ案を妥当と結論付けた。道開発予算の30年度概算要求には、雨竜第2ダムの嵩上げなどを行う雨竜川ダム再生事業の地質調査・環境調査費に1億1,100万円が計上されている。

思いを一つに

 こうした状況から、流域では期成会立ち上げの機運が上昇。期成会の名のもとに、深川市、幌加内町、妹背牛町、雨竜町、秩父別町、北竜町、沼田町の1市6町が一丸となって恒久的治水事業の促進を目指す。
 11月中旬には、道内選出の国会議員や国土交通省北海道局などへの中央要望を実施。①雨竜川ダム再生事業の推進②雨竜川の河道掘削等の推進③危機管理施策、災害情報の共有化対策の推進④河川管理施設等の整備強化と適切な維持管理の推進⑤河川環境の整備と保全の推進⑥強靭な国土づくりを支える人材の育成 ― の6項目の重要性を訴えた。
 会長を務める山下貴史深川市長は「ダムの貯水力が高まれば、洪水のリスクは下がる」とダム再生事業の意義を強調。予算確保に向け、「一致団結して要望していく」と力を込める。
 来年1月下旬~3月に、30年度の治水事業採択要望個所についての調査や取りまとめを行う方針。地域住民は「流域一帯の安全・安心を守るためにも、ダムなどの整備促進を」と期待する。今後も期成会は、地元の願いを胸に防災・減災対策の推進へ軌を一にして声を上げていく。

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