動き出す札幌駅周辺再開発/北海道新幹線延伸を視野に/Local Topics 2017<1> 札幌
2017/12/08付 連載・特集
活性化する再開発
札幌市は、昭和44年の都市再開法制定以前から、都市基盤や市街地環境整備を重要な施策として再開発を進めてきた。特に既成市街地の町並みづくりでは、過密や用途混在、生活環境の悪化、建築物の老朽化などの課題を解決する手法として、再開発が重要な役割を担ってきた。近年の札幌市における再開発の動向は、事業に対する補助金の増減から活発化している状況が見て取れる。過去5ヵ年の推移をみると、25年度の3億7,500万円に対し、26年度12億9,600万円、27年度38億3,500万円、28年度86億8,400万円。本年度は47億1,200万円が見込まれている。
28年度の補助金額は、平成元年度から27年度までの平均13億1,800万円と比べても、約6.5倍と大幅な増加となっている。
増加の要因について、再開発事業に詳しい関係者は「2026年冬季オリンピック・パラリンピック招致や13年後の新幹線の札幌延伸を見据え、市が積極的に再開発事業を後押ししている表れだ」と話す。
新幹線延伸見据え
その中心となる札幌駅周辺や大通・創成地区周辺は、昨年に市が策定した第2次都心まちづくり計画の「交流拠点」として位置付けられている。札幌駅周辺においては、新幹線の札幌延伸を念頭に置いた整備計画を構想。空港・港湾の国際化や防災意識の向上などの背景を踏まえ、国際競争力の牽引、広域交通アクセス強化のほか都心の回遊性向上等を図ることとしている。
市はことし2月、札幌駅交流拠点先導街区整備基本構想をまとめた。JR札幌駅、南北の駅前広場、北5西2のバスターミナル、駐車場で暫定利用中の北5西1を含む約17ヘクタールの区域を先行して整備する計画だ。
北5西1街区は高層ビル等のランドマーク形成、北5西2街区はバスターミナルの再編整備を目的とし、冬季五輪招致を見据え38年までの竣工を目指している。
現在、再開発事業に携わっている民間企業は「札幌市の顔づくりとなる再開発事業を担うことに使命感を感じている」と言う。
北4西3街区始動
さらに同月、動向が注目されていた北4西3街区の検討会の初会合が開かれた。同街区の敷地面積は約1ヘクタールで、このうちヨドバシカメラが23年に取得した旧西武本館とロフト館跡地の大部分は、建設が進められることなく5年以上未利用の状態が続いていた。突然動き出した背景には、札幌駅周辺の環境変化や、市のまちづくりビジョンの実現に向けた動きが見えてくる。
ただ、着工に至るまでは高いハードルが幾重も立ちはだかる。“現場”は一等地でしかも、札幌の玄関口での大規模な再開発となる事業。利権調整や事業手法の検討、資金計画の策定など問題が山積している。
現在再開発ビルの施工が進んでいる北1西1街区を例に挙げると、検討会設置から準備組合設置まで3年、都市計画決定および組合の設立認可までに5年の期間がかかっている。
容積率緩和が後押し
市内の至るところで再開発の動きが加速する中、札幌市はことし9月、札幌駅前や大通周辺など都心部の再開発事業を対象に、容積率緩和にかかわる指針を策定する考えを示した。都心部における容積率緩和は、再開発を後押しするカンフル剤となり得る。さらには、目前に迫る北海道新幹線の札幌駅開業が民需を刺激し、北4西3街区を含め市内各地の再開発を促すのではと期待も大きい。今後の再開発の動向に目が離せない。
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