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マチナカに大型クルーズ船を/最大限の効果発揮へ整備が始動/Local Topics 2017<6> 渡島

2017/12/15付 連載・特集
Local Topics 2017<6> 画像
関係者が一堂に会した着工式典。文化交流促進の観点からも、期待が寄せられた

道内1位の寄港数

 函館港におけるクルーズ船の寄港数は年々増加傾向にあり、ことしは28隻が入港。寄港数は2年連続で道内1位を記録した。
 函館市はポートセールスの強化に努めており、本年度は米国マイアミでクルーズ船の誘致活動を展開した。再来年の4月には道内初となるクイーン・エリザベスが寄港する予定で、将来的には年間寄港数を70隻まで増やすことを目標に掲げている。
 この目標を達成し、旅客船寄港による波及効果を最大限にするために計画されたのが、若松地区での大型クルーズ船が寄港できる岸壁の整備。国の政策とも合致したことで具体化し、11月から本格的な工事が始まった。

広域観光にも寄与

 同地区から徒歩20分圏内に函館市内の主要観光地が集中し、中でも観光客に人気がある函館朝市は、クルーズ船寄港予定地の目の前に位置。函館朝市の関係者は「出港時間ぎりぎりまで、朝市で買い物や食事を楽しんでもらえる」と、観光消費の増加による経済効果に期待する。
 JR函館駅までも300メートルと至近距離で、鉄道やバスなど公共交通へのアクセスが格段に向上。利便性が高まることで、道南地域の広域観光ルートの拡充にも寄与する。
 今月3日には着工式典が開催されたが、オープニングセレモニーで会場を盛り上げたのが遺愛女子高校の吹奏楽局。同校の生徒がクルーズ船で通訳ボランティアを行っている縁で演奏を披露したが、出席者は「クルーズ船での演奏を実現させよう」と口をそろえ、文化交流を促進する観点でも事業の効果に期待を寄せた。

鍵となる泊地浚渫

 多くの期待を背に始動した若松地区の整備だが、現段階で予算の裏付けがあるのは水深8メートルを10メートルにする岸壁整備のみ。ダイヤモンド・プリンセスなど10万トン以上の大型クルーズ船を受け入れるためには50万立方メートルとも言われる泊地浚渫が必要となるが、現時点で着手時期は未定となっている。
 所期の効果をもたらすためには浚渫工事の早期実施が求められる中、工藤壽樹市長も「来年秋ころには岸壁の暫定供用による小型クルーズ船、その後数年のうちに大型クルーズ船が入港できる環境が整えば」と期待。さらには、「若松地区に新たな旅客ターミナルを」とターミナル整備にもも言及し、新たなにぎわいの創出に向けた青写真を描いている。

新駅を軸に振興策

 ことし3月で開業1周年を迎えた北海道新幹線。新駅が整備された木古内町の28年度観光入込客数は、62万6千人と前年度の4倍以上を記録するなど、新幹線を軸としたまちづくりが実を結んでいる。札幌延伸の工事が本格化する中、関係自治体では木古内町と同様、新幹線開業を見据えたまちづくりの検討を進めている。
 長万部町は、道縦貫道や国道5号、37号、230号という大動脈が交わる、道南地域から桧山・胆振・後志の各方面を結ぶ交通の要衝。新幹線開業後は、道南・道央観光の玄関口となることで、交流人口の増加を目指す。
 利用客が落ち込んでいる長万部温泉利用協同組合の関係者は、「いかに日帰り客を取り込むかが重要」と今後の取組を思案。町では、駅と主要路線を結ぶアクセス道路の整備など2次交通の拡充を検討している。
 八雲町ではことし、新駅周辺整備に関する検討会議を立ち上げた。今月5日の第2回検討会議で示された新駅周辺の土地利用基本方針では、新駅建設予定地が市街地から3キロほど離れた酪農地帯であることを考慮。駅前広場や駐車場といった新駅建設に伴う整備も、必要最小限の規模に抑えることとした。
 八雲町らしい“牧歌的な風景”を生かす方針だが、その上で「よっぽど魅力あるものがなければ八雲町に降りないのでは」と新たな観光資源の掘り起こしを求める意見も。町は今後も広く町民から意見を求めながら、30年度の計画策定に向け検討を進めていく。
 

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