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水防災対策 着実な推進を/旭川建協全会員がBCP策定/Local Topics 2017<7> 上川

2017/12/18付 連載・特集
Local Topics 2017<7> 画像
市街地が浸水した南富良野町。目標としていた全会員のBCP策定をことし8月に完了した旭川建協

市街地が浸水被害

 昨夏に発生した台風等によって、南富良野町では幾寅地区を流れる空知川の堤防2ヵ所が決壊した。住宅や公共施設、道の駅「南ふらの」が浸水するなど市街地を中心に甚大な被害を受けた。町内を通る国道38号太平橋で洗掘が発生し、一時通行が遮断された。ポテトチップを出荷する工場も被災し、全国で商品の流通に支障を来したことは記憶に新しい。
 道の駅を運営する(株)南富良野町振興公社は「建物が濁流に飲まれ水没した」と話す。町役場職員は「決壊個所のほか、上流部も浸水し町内の農地約110ヘクタールが流亡しただけではなく、ビニールハウスも流され、農業機械も浸水被害を受けた」と振り返る。
 地元業者の昼夜を問わない懸命な復旧作業によって、早期に交通や物流の正常化が図られたが、災害の恐ろしさとともに防災対策の重要性があらためて浮き彫りとなった。

抜本的対策検討へ

 このため、札幌開建は石狩川流域委員会を開催し、空知川の抜本的な水防災対策の検討を始めた。現時点では、空知川と市街地間の既存道路を嵩上げし、堤防の役割をもたせることを想定。河道掘削の発生土を左岸2.4キロメートルで堤防拡幅盛土に活用し、右岸側の無堤区間700メートルで築堤を行うとともに、太平橋の改築も視野に入れている。
 町では、災害時の避難所および防災拠点として道の駅「南ふらの」の再編整備を検討しており、合わせて道の駅構内に河川防災ステーションの新設を構想。敷地面積は1ヘクタール以上となるもようで、堤防の高さと同程度となるよう1メートル程度の地盤嵩上げを見込んでいる。
 こうした動きに対し、地域からは歓迎の声が相次ぐ。町担当者は「抜本的な水防災対策は非常にありがたい」とし、早急な事業推進を期待する。地元農家も、「農地が被災しないよう一刻も早く事業推進を願っている」と話す。
 先の水害では寸前で浸水を免れ、避難所として多くの町民を受け入れた町立南富良野小学校の金光保校長は「町民の安全のため、二度と大きな水害が起きないような整備を」と切望する。

災害で会員に変化

 昨夏の災害に代表されるように、近年は異常気象による災害が全国的に頻発。地域の安全と安心を守る建設業の役割があらためてクローズアップされている。こうした中、旭川建設業協会(川島崇則会長)の正会員全60社は、災害等の緊急時に企業が損害を最小限にするとともに、事業の継続と復旧を図るための計画(BCP)を策定した。
 27年度の総会で、荒井保明総務企画委員長の呼びかけで始まった全社策定の試み。当初は、「小さな会社がBCPをつくっても仕方がない」(会員企業)といった声も聞こえるなど、会社規模の違いなどによる会員間の温度差があった。しかし、昨夏の台風災害を機に、「会員の意識変化が表れ、策定の機運が高まった」(高畑靖典常務理事)。災害を目の当たりにした会員の間に、「復旧の最前線に立つ自分たちが被災しては復旧作業が進まない」との使命感が、会員各社のベクトルを合わせた。
 策定作業は、全国建設業協会のBCPモデルを参考にした様式をもとに進んだ。非常時に行うべき重要業務と完了目安時間、会社が被災した際の代替拠点、事業継続の全体手順、社員の安否確認の方法などの項目について、各社で検討。委員会委員、建協役員、一般会員の企業の順にBCPを取りまとめ、ことし8月に全会員が策定を終えた。
 会員企業は「自社の取組や社内体制を見直す良いきっかけとなった」と話す。旭川建協の取組を官公庁も高く評価。「災害に強い国土づくりが求められている中、非常に心強い」との声が聞かれる。

今後も改善を継続

 旭川建協は「策定完了はあくまでもスタート」と気を引き締める。上川管内の多くの自治体は、特別豪雪地帯に指定されており、道内でも有数の積雪寒冷地と言える。このため、「将来的に冬期間のガソリンの備蓄などを項目に盛り込むことも視野に入れている」とし、本道の地域特性を踏まえた計画に発展させる必要性を挙げる。
 今後、BCPが有効に機能するよう、会員企業を集め安否確認などの訓練の実施も検討している。有事の際に、各社がBCPに基づいた適切な行動を取るための支援をしていく考えだ。

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