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バルク戦略港湾 待望の完成/求められる巨大地震への対策/LOCAL TOPICS 2018 ⑫釧路・根室

2019/01/11付 連載・特集
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道東地域の活性化が期待される国際物流ターミナルが完成。釧路建協は、想定される以上の災害対策に知恵を絞る

大型船寄港へ悲願

 国際バルク戦略港湾釧路港国際物流ターミナルが、11月に完成した。
 釧路西港第2埠頭は、これまで水深12メートルで、世界で主流となっている載貨重量7万4000トン級の大型船に対応できなかった。このため、茨城県の鹿島港や愛知県の名古屋港で貨物を減載してからの寄港などを余儀なくされていた。
 こうした現状を受け、2014年から釧路開建は、大型船に対応した施設を整備し、安定的かつ効率的な海上輸送網を構築するための事業を開始。5年間という短い事業期間での完成となった。

輸送効率化やコスト縮減に

 釧根地域は、国内最大の酪農地帯。地域産業の振興、経営の安定に向けては、輸送の効率化や物流コスト縮減は不可欠だ。
 国際物流ターミナルの完成により、穀物主要生産地域である北米からの輸送のファーストポートとして、大型船を寄港させることが可能となる。従前の関東圏の経由がなくなることで、輸送時間を約1日短縮することができる。また、釧路港における海上輸送コストは年間約21億円の削減が見込まれている。
 釧路丹頂農業協同組合の担当者は「酪農業にかかるコストは飼料費が約4割を占める。海上輸送費を抑えられれば、酪農業の経営安定化につながる」と期待を寄せる。

地域経済の活性化

 釧路港バルク戦略港湾の供用開始を見据え、民間企業が設備投資や新規進出などの動きをみせている。
 愛知県に本社を置く配合飼料総合メーカーの中部飼料(株)は、ことし釧路港西港区に進出。道内では苫小牧市に次いで2ヵ所目となる飼料工場を建設している。担当者は「北米からの大型船が寄港できるため、原料を安定的に調達でき、道東エリアへの飼料の安定的な供給に大いに貢献できる」と話す。
 国際バルク港湾の供用による穀物の安定的かつ安価な供給体制が実現することは「TPP等による外国産の安価な乳製品に対しても柔軟な対応が可能となる」(関係者)と期待する声は大きい。

釧路建設会館竣工災害時対応機能も

 釧路建設業協会(白崎義章会長)は2月、釧路開建および釧路地方気象台と災害時の相互協力に関する協定を締結した。災害発生時に3者が連携する災害対策本部を、1月に竣工した釧路建設会館に設置することとした。
 釧路建設会館は、海抜約30メートルに位置し、重要度係数1.25の耐震強度を誇る。
 3者は、非常参集から災害対策本部の設置の流れを確認するなど、本番さながらの訓練を重ねる。建協の役員は「想定される規模以上の綿密な計画が必要になる」と話し、さらなる防災対策の強化を図っていく考えを示す。

巨大地震の発生確率上昇

 政府の地震調査委員会は昨年12月、北海道東部の十勝沖から択捉島沖の太平洋に伸びる千島海溝で、マグニチュード9クラスの超巨大地震が今後30年以内に7~40%の確率で起きるとの予測を発表した。
 切迫した地震災害への対策が急務となる一方で、対策を構築するためには、基準値となる被害想定が必要となる。
 道の担当者は「防災タワーの建設などを検討する自治体としては、国が新たに作成する千島海溝沖地震における被害想定があれば早期に計画できる」と指摘。管内自治体の担当者も「巨大地震による被害想定がどの程度か知りたい」と話す。
 しかし、内閣府の防災担当者は「現在、日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震モデル検討会を進めている。被害想定の段階までは至っていない」と明かす。

命をつなぐ道

 東日本大震災においては、三陸縦貫道釜石山田道路が「命の道」として機能を果たした。釜石市の住民らは、6日前に開通した道路を歩いて避難し、一命を取りとめた。
 当時の旧釜石第一中学校避難所担当者は「釜石山田道路のおかげで復興作業も早く進んだ」と振り返る。
 釧路管内の自治体関係者は、計画段階評価となっている道横断道尾幌~糸魚沢間について、「巨大地震が発生した場合には、避難経路や緊急物資の輸送路になる」と、早期事業着手に期待する。

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