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限られた労働力 フル活用/「V―Con」で生産性向上へ/LOCAL TOPICS 2018 ⑧留萌

2019/01/10付 連載・特集
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多くの成果が期待されるV―Construction。現場状況の把握、円滑な指示・伝達が可能
 留萌管内の人口減少、高齢化に伴う過疎化は、急速に進行している。2015年の国勢調査によると管内の総人口は5年間で1割減少。地域の将来を担う労働力不足は深刻な課題となっている。こうした状況を受け、管内では産官が連携し、課題解決に向け、労働力の融通、生産性の向上に取り組んでいる。

働き手対策室設置

 留萌振興局は本年度、商工労働観光課内に「食と観光・働き手対策室」を設置した。建設業や漁業、農業など管内の基幹産業を支える労働力を確保するべく、14振興局で初となる専門部署を創設。繁忙期・閑散期の異なる産業間で人材のマッチングを図り、労働力を融通させる取組について検討を進めている。
 本年度は、道経済産業局と連携し、労働力融通システムの構築に向けて、各業種・エリアにおける繁忙期・閑散期と労働力融通の意向について調査を実施。このうち、建設業では、64%の企業が「労働力融通の意向がある」との回答を寄せた。
 市町村の動きをみると、初山別村では本年度から、商工会が事業主体となって労働者派遣の取組を開始。派遣元として初山別土建(株)を含む建設業2社が参画し、4月から5月末にかけて農業・漁業を営む事業所に6人の労働者を派遣した。
 事業終了後、派遣先業者は「慢性的な人手不足の中で、大変ありがたい」と来年度以降の事業継続を要望する。一方で、派遣元からは「派遣時期によっては必要人員の確保が難しい」との声が。また、普段とは異なる就労によって生じる労働者の負担などを課題として指摘し、労働力融通には細やかな調整が必要との意見が大半を占めた。
 留萌振興局商工労働観光課の守屋光章課長は「建設業が労働力融通の軸となる」と話す。意向調査の結果や初山別村の事例からも、労働力融通システムの実現に建設業が密接にかかわってくる。

建設業を軸に

 建設業においては発注時期の平準化に向け、これまでは閑散期とされてきた端境期の発注件数が増加傾向にある。同課は端境期の受注契約から融雪後の着工までの期間を活用し、他産業への労働力融通を図っていく考えだ。
 管内の産業を支える労働力の減少は、地域の衰退を招きかねない。建設業をはじめとする基幹産業の経営効率化のためにも、19年度の労働力融通システム構築に期待が高まっている。

生産性向上へ

 労働力の融通により、一定の労働力確保が可能となったとしても、わが国の生産年齢人口の減少に歯止めが利かない現状に変わりはない。こうした課題を解消するためにも、現場の生産性向上を図る「i―Construction」の推進は、建設業界の命題となっている。
 ことし10月、(株)堀口組を代表者、(株)ドーコンなどを構成員とする「Visual―Construction(以下、V―Con)による遠隔臨場実験コンソーシアム」が道内で唯一、国土交通省の「建設現場の生産性向上を図る革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」に選定された。
 V―Conは、4K全周型カメラやネットワークカメラなどの映像デバイスを活用することにより、施工プロセス・品質管理などの遠隔監理を可能とする工法。施工の見える化、新しいコミュニケーションの創出によるスマート土木の実現を目的としている。
 コンソーシアムは、留萌開建発注の「239号苫前町霧立峠改良ほか一連」現場において、V―Conを試行中。11月2日に開催した公開実験会では、現場への移動時間の大幅短縮、映像を介した施工状況確認・指示伝達など、生産性向上につながる成果が示された。
 このほか、映像の数量・数値化による業務の簡素化、各種対策工への反映、記録映像のアーカイブ化による類似現場に関する技術伝承・ノウハウ共有など、予想される成果は多岐にわたり、関係者の期待も大きい。
 V―Conについて、堀口組の堀口哲志社長は「業界全体の希望の光」、立命館大学の横山隆明氏は「今後の建設土木における強力なツールになり得る」と語る。建設業が抱える課題を解決する大きな一歩へ、地方から始まるi―Constructionの革新に注目が集まる。

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