暗渠疎水材に石炭ズリ利用へ/空知建協 建設戦士ツクルンダー登場/LOCAL TOPICS 2018 ②空知
2019/01/08付 連載・特集
災害リスク低減へズリ山採取を許可
夕張市内に66ヵ所存在する、石炭採取時の発生した石や土砂を堆積させた「ズリ山」。2012~13年度に融雪で一部崩壊した高松ズリ山の防災対策として、夕張市は15年度から民間事業者にズリの採取を許可している。地元の(株)北寿産業がプラントを整備し、ズリに含まれる石炭を回収。ズリを採取しながら山の勾配の安定化を図っている。鈴木直道市長は「市にも採石料が入ってくる上、雇用も生まれた。一石何鳥にもなる事業」と話す。
同社は石炭を除いたレキ分(石炭ズリ)の活用策も検討。試験施工の結果、ビリ砂利や火山レキなどと同等の透水性が確認されたことから、空知総合振興局産業振興部に道営農業農村整備事業での疎水材利用を提案した。
これを受け同部は、実現の可能性を検討。本年度、実用に向けた動きが具体化してきた。
北寿産業によると、年間3万立方メートルの石炭ズリを疎水材用に産出できる見込みで、数百年間にわたり供給が可能という。空知総合振興局の藤原弘昭整備課長は、疎水材資源に限りがある中、石炭採取後の副産物を有効活用している点を評価する。
石炭ズリの単価は現在、ビリ砂利より安く設定。農業農村整備事業において重要な受益者負担の軽減につながるものと期待される。
ただ、南部耕地出張所管内では火山レキを採用しており、火山レキの方が低価格。藤原課長は「普及促進には価格低減が必要」との見解を示す。
石炭ズリが稲作に必要とされる肥料分を含むなど、副次的な効果も分かってきた。同部は、所管する20年度着工地区からの導入を視野に、ズリを用いるメリットを整理して受益者に伝えていく考え。「将来的に有望な資材。普及させていけたら」(藤原課長)。
夕張市サイドも「山の規模縮小が加速する可能性のある良い取組」と期待。持続可能な農業基盤整備の一助として、さらなる注目を集めそうだ。
担い手確保へ動画などでPR
空知建設業協会(砂子邦弘会長 ※邦は手偏におおざと)の会員企業67社における18年度新卒者採用は55人。採用者数が企業数を下回る状況が、ここ数年続いている。建協は昨年2月、今後の担い手不足に対応するべく入職促進特別委員会を設置した。建設業への関心を高めることを目的に、ことし8月にはオリジナル動画「建設戦士ツクルンダー」を公開。安全安心な暮らしを守るヒーローの活躍を通して、建設業の役割をアピールしている。
インターンシップの受け入れを希望する企業は約半数。工業系のみならず普通科の学校にも入職の裾野を広げようと、大崎里志事務局長らが管内23の高校・短期大学を訪問し、建設産業に関する説明を行っている。
インターンシップのほか、建協による出前授業の開催に前向きな反応を示す学校も。大崎事務局長は「一日で入職者が増えるものではない。継続的な取組が大事」とする。
岩農高と授業連携ICTの魅力伝える
情報化施工を推進する(株)砂子組(本社・奈井江、本店・札幌、砂子邦弘社長 ※邦は手偏におおざと)は、若年層が適応しやすいICT技術について紹介する機会を模索。ICTの魅力を知り、業界で働く意義を見いだしてほしいとの思いから、ことし5月、岩見沢農業高と授業連携協定を締結した。同社は、協定に基づき、春から秋にかけて実習や現場見学を実施。参加した農業土木工学科2年開発土木専攻班の生徒9人に、建設産業のイメージアップにつながる最先端技術をPRした。
生徒からは「ICT施工の知識が深まった」「ICTにふれて建設業に興味がわいた」などの声が。専攻班を指導する堀毛憲太郎教諭は「生徒の土木・建築業に対する進路意識が芽生えたのはもちろん、教員として学ぶことも多かった」と感謝する。
次年度以降も協力体制を継続する予定。同社企画営業部の真坂紀至部長は、今回の取組をあくまでも「つぎのスタートの第一歩」と強調する。入職者の定着がつぎなる課題と認識しているためだ。
空知管内建設業の過去3年間の新規入職者離職率は3割で、全道の5割を下回るものの、高い水準が続く。担い手確保とともに、定着に向けた取組が不可欠な状況となっており、さらなる取組が注目される。
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