胆振東部地震を教訓に/札幌市の大規模災害における対応/LOCAL TOPICS 2018 札幌
2018/12/27付 連載・特集
最大震度6弱 市内で初めて観測
ことし9月6日に発生した北海道胆振東部地震は、札幌市内にも大きな被害をもたらした。東区では市内の最大震度となる震度6弱を観測。震度5以上を記録し、災害対策本部を設置したのは、札幌市政上初めてだった。本道に大きな被害をもたらした地震をみると、2003年の十勝沖地震では、十勝地方で最大震度6弱の地震が発生したが、市内の最大震度は4。道路損壊も10ヵ所ほどで、被害額は1億5975万円だった。
対して今回の地震では、道路破損などが発生したことで、27ヵ所が通行止めに。住家被害では、全壊87棟、半壊611棟、一部損壊1580棟を確認。清田区里塚地区では、5ヘクタールで液状化現象による地盤沈下や道路陥没、土砂流出が発生。東15丁目屯田通4.3キロメートルで、液状化現象による路面沈下や道路陥没が生じた。
9月の第3回定例市議会では、北海道胆振東部地震および台風21号の災害復旧費を盛り込んだ補正予算が成立。災復関連の補正総額は182億4040万円。このうち、災復費をみると、道路等に66億1200万円、下水道管路に71億円を充てた。
住民の合意形成が鍵
被害が大きかった清田区里塚地区の早期復旧に当たって市は、道路などのインフラや宅地を一体的に復旧するため、滑動崩落防止工法のうち地盤改良工を適用する。住家の横や斜めから施工を進めるが、住家下の液状化層を改良するもので、19年度の早い段階で工事着手したい考え。6日の4定市議会代表質問で吉岡亨副市長は「コミュニティの再生は、時間の経過とともに難しくなる」と述べ、「(復旧・復興に向けて)スピード感を重視して取り組んでいる」と強調する。
今月中旬に開催する第4回住民説明会では、具体的な対策範囲と施工方法、対策工法への同意確認の方法を提案するが、別の市幹部は「着工時期から逆算すると、来年2月ころまでにすべての住民から合意を得る必要がある」という。合意形成に向けて、懇切丁寧な説明が不可欠となる。
今後の災害に備え連絡網など改善へ
市は災害復旧と併せて、初動や対応の検証作業を進めている。ある土木系職員は「(1981年の)いわゆる56水害を経験した現役職員が少なく、多くの職員にとって大規模な災害の対応は今回の地震が初めて」と話す。災害を教訓に「日ごろから災害防止協力会などと連絡を取ることで、初動体制をより強化する必要がある」と指摘する。職員からは「普段の防災訓練を見直す必要がある」「復旧に当たった業者が、不利益を被らないような体制づくりを考えなければならない」という声が上がっている。
一方、応急復旧に当たった業者は「初めての大規模地震にしては、よく指示してくれた」と市の対応を評価する。一方で「応急復旧について協議する際、市職員からの連絡が輻輳(ふくそう)し、混乱が生じた」と振り返る。「いつ起こるか分からない大規模災害に備え、緊急時の連絡網の改善に努めてほしい」と要請する。
強靭化計画の改定経験や課題を糧に
来年度には、札幌市強靭化計画の計画期間が最終年度を迎える。秋元克広市長は、5日の4定市議会本会議で、強靭化計画の改定に言及し「北海道胆振東部地震で見えた課題や、国・道の強靭化計画改定の動向などを踏まえ、できるだけ早い時期に改定したい」との方針を示した。今回の地震では、里塚地区での断水など、ライフラインが寸断される事態が多発した。ある職員は「インフラ施設の被災状況を受け止め、強靭化計画に反映させなければならない」と話す。大規模災害の経験や、それによって浮かび上がった課題を踏まえた、実効性ある対策を構築する必要がある。
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