釧根のポテンシャル向上へ/着実にインフラ整備を推進/新任副局長リレーインタビュー【6】釧路建管 別所 博幸 氏
2018/07/11付 連載・特集
―新任の抱負について
釧路・根室管内は、平成5年に釧路沖地震、26年に根室高潮災害、一昨年には台風による豪雨災害など、これまで幾度も大規模な自然災害に見舞われてきた地域といった印象がある。昨今は、北海道東部沖で巨大地震が発生する可能性も言われているので、いつ起こるか分からない自然災害から人命や財産を守るため、災害に強い道路や河川など、社会資本を着実に整備していくことは非常に重要であるとあらためて認識している。一方で、建設業界を取り巻く環境は非常に厳しい状況が続いており、建設投資額の減少が雇用を抑制し、高齢化に伴う建設就業者の大量離職が懸念されるので、新たな担い手の育成・確保が喫緊の課題となっている。引き続き、若年者の担い手はもとより、女性の活躍促進、就業環境の改善、ICT活用による生産性の向上など、建設業をサポートしていく取組を通じ、支援を行っていきたい。
―管内の印象について
釧路・根室管内は、とにかく広く、風光明媚なところが多いといった印象。釧路湿原や阿寒摩周、知床といった3つの国立公園を有し、豊かな自然と、そこに根差した農林水産業がもたらす新鮮な食材が豊富な地域だと思っている。また、一昨年には道東自動車道において庶路インター、阿寒インターが開通し、これら高規格幹線道路の延伸と相まって観光客が年々増加を続けるなど、まさに北海道の強みを生かした「食」と「観光」を育む地域となっている。
まだまだ、この管内には取り組むべき公共インフラ整備が多く、幹線交通網の整備や良好な河川環境の保全、水産業を支える漁港整備など、物流機能の向上や防災・減災対策、地域のポテンシャルを向上させる取組を進め、今後とも、社会資本の着実な整備に努めていく。
―本年度の主要事業について
地域の基幹産業である水産業の核として漁港整備を進めている。尾岱沼漁港では、屋根付岸壁施設や浚渫などの衛生管理型漁港の整備を引き続き実施し、琵琶瀬漁港では、老朽化により機能低下している部分の保全工事を行う。散布(火散布)漁港では引き続き、大型化した漁船に対応する漁港施設の整備を進めていく。道路事業では、農水産物の輸送、観光アクセスや緊急輸送ルートを確保するため、幹線交通ネットワーク整備を重点的に行う。継続事業としては、別海厚岸線の厚岸大橋橋梁補修工事を実施するほか、薫別川北線では、乳薫橋架替工事の完了に伴い、旧橋撤去ならびに橋梁接続部の改良等に着手する。
街路事業では、中標津町3・4・14西町通および弟子屈町3・3・5鐺別通改良工事において、安全で円滑な交通と歩行者空間の環境改善を図るため、必要な用地買収・物件補償から着手していく。
河川事業では、釧路湿原の保全・回復を図るため、久著呂川において河道の安定化対策や土砂調整地の整備を行うことにより、湿原内に流入する土砂を軽減する取組を進めている。
―災害対策について
道路事業では、一昨年の台風等の豪雨で被災した屈斜路津別線や知床公園羅臼線について、本格的な観光シーズンを前に災害復旧工事を終えることができた。また、防災・減災のための事業として、冬期の視程障害や吹き溜まりを抑制する防雪対策を実施しているが、とりわけ過去に大きな雪害を経験した中標津地区は重点的な整備に努めている。河川事業では、釧路川で浸水対策のための築堤工や護岸工を引き続き実施するほか、25年度に2度の浸水被害を受けてきた釧路町別保市街地の治水対策として、別保川ならびに標津川では河道掘削、春採川では護岸の整備を進めていく。
砂防事業では、24年の集中豪雨により山腹崩壊、渓岸侵食した刺牛1号川で整備を行っているほか、常時観測火山の一つである雌阿寒岳において、監視情報伝達に必要な施設設置などを引き続き実施するとともに、アトサヌプリでの火山噴火緊急減災対策砂防計画策定に向けた取組を進めている。
急傾斜地崩壊防止事業では、急傾斜地の崩壊から住民を守るため、釧路町老者舞地区や釧路材木町2地区を含む8ヵ所で事業を継続している。さらに、土砂災害防止法に基づく必要な手続きが進められるよう、31年度までに基礎調査の完了を目指している。
建設海岸事業では、高潮や波浪による海岸侵食や決壊などから国土を保全するため、野付崎海岸では侵食対策として消波堤の整備を継続するほか、これまで度重なる津波被害を受けてきた霧多布海岸では、昨年度に引き続いて堤防の整備を行っていく。また、越波被害を防止するために、羅臼(岬町中央、岬町南外)海岸では護岸の整備を継続していく。
漁港海岸事業では、標津漁港海岸で侵食対策として人工リーフを引き続き実施する。
建管では、今後とも、ハード・ソフト両面からなる総合的な対策を通じ、地域の皆さんが安全で安心して暮らしていける地域社会となるよう、国や市町村との連携を深めながら、防災・減災対策の着実な推進に努めていく。
(連載終わり)
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