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世界と渡り合える“食”を/基盤整備の重要性さらに高まる/新任インタビュー<2018>① 北海道農政部長 梶田 敏博氏

2018/06/19付 連載・特集
北海道農政部長 梶田 敏博氏画像
かじた・としひろ
 昭和58年山形大卒。平成24年総合政策部政策局参事、同年農政部農政課長、26年農政部次長、28年十勝総合振興局長。ことし現職。
 昭和35年2月5日生まれ、58歳。東川町出身。
  TPP11などの動きにより、本道における農業農村整備事業の重要性が高まっている。世界的な知名度を誇る道産食品のブランド力を守り、さらに高めていくためには、生産のベースを築く基盤整備の推進が不可欠となる。農業者や技術者の担い手不足が喫緊の課題となる中、情報化施工などの新たな取組にも注目が集まっている。ことし4月に、本道農政の舵取りを担うポストに就いた道農政部長の梶田敏博氏に、就任に当たっての抱負や今後の取組について聞いた。

―新任の抱負を

 ことしは北海道にとって、命名150年の節目の年。歴史を振り返ってみると、農業は北海道の開拓とともに歩んできた産業だということが分かる。本道を形づくってきた農業がなければ、これまでの発展はなかった。
 国内最大の食料基地として、生産性をさらに高めていくためには、基盤整備の推進が不可欠。地域の持続的な発展に資するという使命を果たすべく、行政としても最大限努力していきたいと考えている。

―農業農村整備事業の現状認識と道の対応を

 北海道において、農業農村整備事業が果たしてきた役割は非常に大きい。基盤整備のほかにも、生産力や品質の向上にも尽力し、経済発展のベースを築いてきた。北海道産の食のブランド力が世界的に高まる中、基盤整備に対する地域の要望に応えるため、予算の確保などに引き続き力を注いでいきたい。
 基盤整備を推進していく上では、積雪寒冷地特有の施工環境を踏まえ、技術的な課題と向き合っていかなければならない。財政的な問題とうまくバランスを取りながら、地域の要望にタイムリーに応えていけるよう努めていく。農政部だけではなく、関係部局とも連携を図り、市町村、受益者、生産者などの声を聞きながら、課題を一つ一つ解決していきたい。

―TPP11などによる農業分野への影響と対策を

 TPP11、日EU・EPAに関する国の試算をみると、本道の農業に対しては少なからず影響を及ぼすと考えられる。国が対策を講じていくことを前提にしつつも、道として影響を見極めていかなければならない。
 北海道の農産物、畜産物は知名度が高い。今後、世界と渡り合っていくためには、北海道産の食の魅力を発信することがますます重要となる。広大な大地を有する北海道においては、地域によって気象条件などが大きく異なる。安定的に良質な農産物を提供していくには、農家の方の努力はもちろんのこと、基盤整備の重要性がさらに高まっていると感じている。

―今後の生産基盤整備の展望を

 高齢化が進む現状を踏まえると、農家の減少は避けられない。こうした状況を受け、道では、市町村や関係団体と連携しながら、担い手確保の取組に力を注いでいる。一方、基盤整備の推進によって1戸当たりのほ場面積は拡大しており、省力化や技術の高度化への対応が求められている。
 農林水産省は29年度から、農業農村整備事業における情報化施工の試行を進めている。北海道においては、初年度に空知、本年度に上川が試行の対象地区として選ばれ、効果や課題について検証している。
 農業者のみならず、施工を担う技術者の不足も課題となる中、情報化施工は状況改善の有効策と考えられる。試行の結果を十分に検証しながら、取組を推進していくことが重要だと認識している。

―建設業界へのメッセージを

 28年8月には、台風に伴う豪雨により、道内では農地が相次いで被害を受けた。被災後、いち早く現場に駆け付け、昼夜を問わず復旧に当たったのは、言うまでもなく地元の建設業の方々。当時は十勝総合振興局長を務めており、復旧に向けて思いを巡らす中で、建設業の方々の存在が大変心強かったことを鮮明に記憶している。
 公共事業予算の縮減や技術者の高齢化、担い手の不足など、業界を取り巻く環境はいまだ厳しいと認識しているが、農業農村整備事業の推進はもとより、地域の安全・安心を確保する建設業を守っていくためにも、行政が知恵を絞っていかなければならない。
 現場における週休2日の確保など、道としても担い手確保に向けた取組に着手している。今後も道の関係部局と意見を交わし、情報を共有しながら、建設業がより発展していける環境づくりを進めていきたいと考えている。

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