厚岸町尾幌~糸魚沢間の早期整備へ/担い手確保に就業環境を改善/Local Topics 2017<12> 釧路
2017/12/25付 連載・特集
道横断道整備促進を
釧路開建は本年度、道横断道厚岸町尾幌~糸魚沢間で、計画段階評価を進めるための調査に着手した。釧路市から根室市に至る国道44号は総延長124.6キロメートル。厚岸町を通る尾幌~糸魚沢間は、JR根室本線に並行して内陸部・海岸線沿いを通る約20キロメートルの区間で、津波浸水想定区域に指定されている。
これまで大雨による路面冠水被害や、道路の線形不良による速度低下等の支障を来してきた。
地元では釧路地方総合開発促進期成会、道横断道釧路・根室間建設促進期成会等が主体となって、「道横断道予定路線釧路別保~温根沼間のうち厚岸町尾幌~糸魚沢間の早期整備」を要望。ことし現地調査に着手したことに、期成会の関係者は「一歩前進した」と評価する。
地元も地域振興に動く
道横断自動車道釧路地区早期建設促進期成会が11月に開いた「道東自動車道シンポジウムinくしろ」では、トラック協会、農協、観光関係団体など多方面から関係者がパネリストとして参加した。シンポジウムの会場では、昨年3月に道横断道が阿寒ICまで開通した効果を実感する利用者の意見とともに、管内高規格ネットワークの延伸でその経済効果や、沿道で各市町村の特産物を扱うレストランロードの創出、移動時間短縮による観光圏域の拡大に期待の声が挙がった。
釧根管内での高規格道の整備は現在、道横断道阿寒IC~釧路西ICの整備促進とともに、釧路外環状道路の釧路東IC~釧路別保ICおよび釧路中標津道路上別保道路の30年度開通、根室道路の31年度開通に向け順調に工事が進捗している。
そのため、開通を前に地元の活動も活発化してきている。市町村や観光団体などからなる「ウェルカム道東道!!オールくしろ魅力発信協議会」では、釧路の観光や食の魅力を新聞やインターネットを使って国内外に情報を発信。
札幌では管内観光をPRするため協議会の関係者が物産展を開催し、多くの札幌市民が会場を訪れ賑わった。
社会資本を活用し経済効果を生み出すには、国任せではなく地域の経済界や行政が連携し振興策を進めていくことが大切だ。区間の供用を間近に控え、地元のさらなる町おこしに期待したい。
担い手確保に向け
北海道建青会(上田修平会長)主催の第32回全道会員大会が9月に釧路市内で開催された。「次世代への基礎づくり」をテーマに、業界関係者300人が会場に詰めかけた。担い手の確保と定着率の向上に向け、職業観の醸成や職場環境改善の取組強化に努めていくことを、あらためて確認する機会となった。地元2世会の釧路建親会では25年度から地元釧路工業高校の生徒を対象とした工事現場見学会を実施している。工事現場を見学するだけではなく、ドローンを使った3次元点群等の計測による体験活動、建設業で働く卒業生との交流等を企画し職業観の醸成に力を注いでいる。
保護者対象の見学会も開催し、高校生の進路に影響力のある父兄への建設業に対する理解促進に効果を上げている。
同校の坂野裕悦教頭は「生徒は実際の現場を見て、勉強していることが仕事に役に立つと実感し、やる気につながっている」「地元建設業に目を向ける生徒も多くなってきている」と感謝する。
しかし、その一方で釧路管内の求人状況は新規高卒者の求人が29年3月末で878人と前年同期より14.6%増加したものの、高校生の就職者は578人にとどまっている。建設業は58人で管内企業には41人が就職した。
大手志向、給与等の処遇条件などもあるのだろうが、貴重な“人材”の流失をいかに最小限度に食い止めるか。上田会長は、これまで高校生対象に行っていた現場見学会を小中学生にも拡大し、早い段階から建設業界に関心をもってもらう必要性を挙げる。
働き方改革を推進
全道会員大会では開催を通じ、「建設業の必要性や仕事の役割を地域住民にPRできた」という声がある一方で、「建設作業員と現場代理人との違いが分からない一般の人も多くいた」と建設業を知ってもらうための課題も浮き彫りとなった。その状況下で、いかに若年者に業界に来てもらうか。就業環境の改善は喫緊の建設業界の課題だ。若者が希望する就業環境を業界一丸となって整備していかなければならない。
それには業界同士で情報ネッワークを拡げ、各社の「働き方改革」の取組を共有して進めていく必要がある。もちろん、受注者だけで解決できるものではない。発注者の支援は絶対条件だ。今まで以上に受発注者の綿密な連携も求められる。
これは供給体制を維持しようとする産業間の熾烈な人材確保の競争でもある。
(シリーズ終わり)
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