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“十勝の強靭化元年”が始動/スピード感もち地域インフラ強化へ/Local Topics 2017<11> 十勝

2017/12/22付 連載・特集
Local Topics 2017<11> 画像
管内建設企業はことし、地域の安全・安心・利便性を取り戻すとともに、十勝の強靭化に向けて災害復旧工事に奔走。引き続き、フル稼働で工事を進めていく

建設業が総力結集

 十勝管内ではことし、未曾有の被害をもたらした昨夏の連続台風からの復旧・復興が本格的に始動した。各地の工事現場においては、バックホーなどの建設機械が例年以上に慌ただしく稼働。国道では、十勝川の改修工事で発生した河道掘削土を、被災農地に運搬するダンプトラックの姿も数多く見受けられた。
 落橋や大規模な盛土崩壊等の壊滅的被害が生じ、不通となった国道274号日勝峠は、通行止め開始から約14ヵ月の歳月を経て10月28日に開通した。その後、交通量も順調に回復し、沿線自治体や道路利用者からは、飲食店等の客足の回復や物流の安定などに期待の声が寄せられている。
 河川関係では、道内の過去の大水害「56水害」以来の破堤という衝撃を与えた直轄の札内川と音更川の復旧工事が8月に竣工。改良復旧が進む道管理河川の芽室川では、新年度の事業完了に向けて工事が佳境を迎えるなど、甚大な被害を受けた管内の被災個所は着実に原形を取り戻しつつある。
 こうした被災直後からの昼夜を問わない懸命な復旧作業は、多くの住民が地域の安全・安心を守る建設業の役割を知る機会ともなった。
 河川と農地の被害が著しかった芽室町では「マスコミでは自衛隊や消防ばかりがクローズアップされたが、真っ先に現場に駆けつけてくれたのは建設業者だった」(担当者)と振り返り、素早い災害対応に感謝する。

強靭化の予算確保

 ただ、管内では依然として工事に未着手の個所も少なからず存在するほか、流木が散乱したままの河川も目立つ。国、道の幹部職員は「連続台風の爪痕は色濃く刻まれており、十勝の復旧は未だ道半ば」と口を揃える。
 災復工事の発注は新年度以降も続く見通しだが、帯広建設業協会の萩原一利会長は「壊れた施設をただ元に戻すだけでは、昨年と同規模の台風が襲来した場合、再度被害を受ける可能性がある」と指摘する。
 昨年の台風では、これまで実施してきた治水事業が水位低減などのストック効果を発揮し、被害を未然に防いだことから「国の方で強靭化のための予算を別枠で確保し、スピード感をもって地域のインフラを強化していく必要がある。通常予算と同じ枠組みだと、どうしても維持補修が優先されてしまう」と訴える。
 帯広市内の建設企業の経営者は「昨年の台風被害はある意味で十勝の脆弱性が露呈されたとも言える。災害が終わったからといって、予算が急激に落ち込むようなことはあってはならない」とし、災害復旧がひと段落する31年度以降の予算確保が重要とみている。

十勝に必要な整備

 一連の台風では、収穫を目前にした農作物や、先人たちがつくりあげた農地を流出させるなどの農業被害も発生。結果的に、全国的な野菜の価格高騰という社会現象までを引き起こし、十勝が日本の食料供給基地であることをあらためて認識させられた。
 開発事業に詳しい関係者からは「十勝の強靭化は本道だけでなく、日本全体の安定した社会経済活動を支えるといっても過言ではない」との声も聞かれる。十勝圏活性化推進期成会においても「道東道の4車線化や道横断道および帯広広尾道の整備、十勝川の流下能力向上、十勝港の機能強化など、十勝に必要な社会資本整備はまだまだある」との見方だ。
 これまで「災害は忘れたころにやってくる」とされてきたが、気候変動等の影響により、今後は災害の頻発化・激甚化も懸念されている。
 ある発注機関の担当者は「広範囲にわたる十勝川水系では、土砂や流木を捕捉するための砂防堰堤の効率的・効果的な整備が急務」と指摘。その上で「ソフト対策を含む総合的な治水対策を施すことが自然災害への万全な備えにつながる」と提唱する。
 昨年の台風で堤防が決壊し、氾濫の恐怖を肌で感じたペケレベツ川流域の住民は「昨年のような強い雨が降ると今でも怖い。大きな災害にも耐えられる対策をいち早く進めてほしい」と強く望んでいる。

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