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ICT施工で作業効率化/道央圏連絡道路長沼町嶮淵改良/週休2日の現場から Report3 ― (株)田中組 ―

2018/11/28付 連載・特集
柳本現場代理人画像
会社の全面的なバックアップが重要と話す柳本現場代理人
 「土日は完全に休工とすることを前提に工期を設定している」。秘めた闘志を胸にこう語るのは、(株)田中組の柳本信博氏。札幌開建発注の「道央圏連絡道路長沼町嶮淵改良」の現場代理人を務めている。工程管理を記す事務所のホワイトボードには、土日の欄に“休工”の文字が力強く並ぶ。技術者は、柳本氏を含め5人。技能労働者も最盛期には「20人ほどになる」という。
 工事は、高規格道路を新設するための掘削と盛土を中心とした改良工事で、工事着手日から起算した工期は、275日間。進捗率は、10月末時点で82%となっている。
 週休2日の確保に向けては、情報共有を図るため、取組計画・実施表を作成。各月と累計の現場閉所率を算出している。柳本氏は「しっかりと休日確保するという意識付けにもつながる」と話す。
 年末年始、夏期休暇を除き、工期内における現場閉所率が28・5%になると、4週8休相当と認められる。10月末時点の「道央圏連絡道路長沼町嶮淵改良」の現場閉所率は30・6%と基準をクリアしている。
 柳本氏は「ICT機器の導入で丁張がなくなるなど、作業が各段に効率化し、休日確保につながっている」と話す。国土交通省の調査でもICT活用による土工は、従来施工と比較して2~3割程度の延べ作業時間の短縮につながるとしている。土工中心の現場だからこそ、ICT施工は絶大な効果を発揮している。
 柳本氏は「技術者や作業員の意識が変わり、休日を取得するために、平日の仕事もこれまで以上に効率的に進める傾向にある」と分析する。1級土木施工管理技士を目指す若手技術者からは「週休2日になり、勉強する時間が確保できるようになった」との声も寄せられている。
 週休2日を実践する上で、発注者とクリティカルパスを共有することは不可欠という。工区内には、別な施工者による橋梁上部の現場も同時進行している。共用する搬入路の活用時期が工程を左右する重大な要素となっており、発注者と施工者たちは綿密な打ち合わせを実施。情報共有と意思疎通により、円滑な施工と休日確保につなげている。
 悪天候の場合は、平日を現場閉所日に、土曜日に作業を行うこともあるが、「なるべく4週8休になるよう調整している」と話す。

減収とならないよう技能者の給与配慮

 一方で、週休2日の実現に向けて、各企業とも頭を悩ませるのは協力企業の技能労働者に対する給与。実働に応じ給与が支払われる日給月給制のため、土日を休むことになると、減収につながるためだ。
 柳本氏は「減収分を補填するため、一定程度上乗せした給与となるよう必要経費を協力企業に支払っている」と話す。必要経費は実働の2割増程度となっている。待遇改善を通じ、人材確保と協力企業に週休2日に取り組むよう促すことも意識している。
 人件費も含め、積極的に週休2日に取り組むことができるのは「働き方改革を進めるという会社としての全面的なバックアップがあるから」と柳本氏。田中組は、ことしから、担い手の確保に向け、週休2日をはじめ、技能労働者の給与についても、月給化するよう協力企業に呼びかけている。
 協力企業の技能労働者だけではなく、もちろん自社の技術者の待遇面にも目を向ける。従来、現場代理人は、好天のうちに現場を進捗し、品質の高い成果品を早期に完成させ、利益を上げることが命題だった。しかし、現在は、週休2日の達成も加わり、現場代理人とっては、これまでより高いハードルが課せられる。
 同社は、今後、現場代理人の負担軽減のため、監理技術者と現場代理人の兼務を廃止し、それぞれ個別に配置する取組を検討。作業を分担することで、柳本氏は「若い人に続けてもらうことはもちろん、経験にもなれば」と期待する。

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