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BP建設地 北広島市に決定/2023年開業へ周辺整備も始動/LOCAL TOPICS 2018 ③石狩

2019/01/08付 連載・特集
 ことし10月、北海道日本ハムファイターズの本拠地球場建設地が北広島市のきたひろしま総合運動公園に正式決定した。新球場は、開閉式屋根を備えた天然芝グラウンドで、周辺にはアスレチック施設や飲食施設、温泉施設などの整備も計画。2023年春の開業へ、野球を中心としたアジアナンバーワンのボールパーク(BP)建設が始動する。

アクセス道路新設道が支援を表明

 北広島市の試算によると、年間10~20億円の税収増のほか、経済波及効果が150億円程度を見込む。その一方で、BP周辺のインフラ整備に多額の費用を要する。市は、既存道路改良やアクセス道路新設にかかる道路整備に133億4000万円、公園整備に5億4000万円、上下水道整備に17億円、合計で155億8000万円が必要と見込む。
 アクセス道路新設にかかわっては、3月の候補地決定を受け、早々に道に支援を要請。11月には、高橋はるみ知事が、BP北西部に位置する市道共栄南1号線から市道大曲椴山線までを結ぶ2.6キロメートルの整備に着手することを表明した。
 市の試算によると、2.6キロメートル区間の事業費は37億円。道が施工するためには、公共事業大規模事前評価での審議が必要で、事業化は最短で20年度となる。関係者は「一般的に2~3キロメートルの道路を新設する場合、用地取得なども勘案すると少なくとも10年はかかる」と話す。20年度に事業化してもBP開業まで3ヵ年しかなく、関係者は一様に厳しい表情をみせる。
 着工までの流れをみると、現在は市が概略設計や環境調査、用地確定測量、地質調査などを進めている。次年度以降、用地買収や実施設計までを市が担当することになっている。
 しかし、概略設計は19年2月、環境調査は7月が履行期限となっており、事業費37億円のうち工事費がどの程度を占めるかは現段階で不透明。用地買収も、ルート決定、用地確定測量後に開始する。関係者は「着工後に買収が滞ると、最悪の場合ルート変更が必要になる」と話す。

周辺整備に伴う市財政への負荷

 一方、市が担うBP周辺整備をみると、既存道路の拡幅2路線の事業費、上下水道の整備、公園用地の粗造成、新設アクセス道路の調査設計費の一部となっており、総額は少なくとも約60億円にのぼる。
 BP建設地は、JR北広島駅から約1.5キロメートル離れている。交通アクセスのさらなる向上を目指す上で、新駅建設もそ上に乗っているが、建設費に関しては明確な試算が示されていない。建設する場合、市の担当者は「請願駅のため、整備費用のほぼ全額を市が負担することになるだろう」との見通しを示す。
 市は、整備にかかる財源の9割程度を起債で賄う考えだ。市の財政健全化判断比率を示す将来負担比率をみると、市役所庁舎建設事業債に伴う市債残高の増加や、庁舎建設基金の取り崩しなどにより、20年度にはピークを迎え、111.5%となる見込み。ただ、これには、BP関連による歳出は含まれていない。市の関係者は、新駅整備などの不確定要素を踏まえると「将来負担比率が上昇することは避けられない」と話す。
 市は、経済波及効果による税収増などで円滑な市債償還を目指している。しかし、BP誘致に当たり、球場を含む公園区域に関して、10年間の固定資産税減免措置を表明しており、当面の事業税収は見込めない。また、球団関係者は11月、新球場周辺の商業施設出店企業について「複数の企業と折衝を進めている段階」と説明。「新球場開業と同時に商業施設がオープンすることが望ましい」と述べており、開業時の経済波及効果は現時点で不透明な状況だ。

老朽インフラの維持・修繕費確保を

 BP関連事業に多額の費用を要するが、市の担当者は「住民の安全・安心な暮らしを守るためにも、インフラの維持・修繕は避けては通れない」とする。一方で、維持・修繕にかかる財源確保については「BP周辺整備の負担金額が流動的で、市にとって不確定要素も多い」と不安をもらす。
 インフラの維持・修繕に関しては、国において事後保全型から予防保全型へのシフトが掲げられている。BP周辺整備を進める一方で、計画的な維持・修繕に向けた予算を確保する必要がある。

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