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震災からの復旧・復興へ/苫小牧市IRの優先候補地に/LOCAL TOPICS 2018 ⑤胆振・日高

2019/01/09付 連載・特集
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日常を取り戻すべく、関係者が一丸となって取り組むことが重要となっている

緊急対応に尽力

 ことし9月、最大震度7を記録した北海道胆振東部地震が発生した。特に被害が甚大だったのは厚真町、安平町、むかわ町の3町。厚真町は、大規模な山腹崩壊をはじめ、斜面崩落による河川の大規模な河道閉塞などが発生した。安平町は、学校など公共施設が大きなダメージを受けた。
 国や道など施設管理者からの要請を受け、室蘭建設業協会は、緊急復旧対応に当たった。重機をフル動員し、道路啓開のため、行く手を阻む倒木を含んだ崩土除去や、河道閉塞の解消に全力を尽くした。
 10月上旬には、高橋はるみ知事が被災3町を訪問。甚大な被害を受けた学校施設などを視察し「復旧・復興に向けた支援への思いを強くした」と言及。技術支援や人材派遣なども実施し、3町に対する全面的なバックアップを行う考えを示した。
 地震発生から時間が経過するにつれ、被害の詳細な状況も明らかに。公共土木施設では、道道上幌内早来停線の土砂崩落、日高幌内川、チケッペ川、東和川の大規模河道閉塞、完成を来年度に控えていた勇払東部地区も甚大な被害を受けていることが判明した。
 日高幌内川、チケッペ川、東和川は、道からの要請を受け、直轄による緊急工事を実施。日高幌内川では、岩田地崎建設(株)が水路整備のための堆積土砂掘削などを行っている。チケッペ川、東和川についても、地質調査を経て、緊急工事に着手する見通しだ。

年明け工事本格化

 道と町の管理施設は、災害査定が年内までに完了することから、年明けから本復旧工事が本格化する見通し。室蘭建管の関係者は「これほど大規模な災害は経験したことがない。復旧工事に全力を尽くす」と話す。
 室蘭建協の中田孔幸会長は、復旧の課題として、局地的な範囲での施工となることから「重機等のふくそうが考えられる」と指摘する。室蘭開建の米津仁司部長も「来年度以降も復旧は続く。資機材等の円滑な手配を含め、各関係機関と密に連携を取り、検討を進めることが重要」との認識を示す。
 厚真町の関係者は、復旧工事の発注本数増大が予想されることから「早急に復旧しなければいけない個所と、そうでない施設を見極め、一定程度平準化していくことも重要なのでは」と提案する。
 現在、最も被害の大きかった道管理施設を所管する室蘭建管においては、2016年8月豪雨による災害時に帯広建管管内限定で創設された復旧JV制度を適用する。今後の動向が注目される。

空港近接ポイントに

 カジノを含む統合型リゾート(IR)の本道の候補地として、苫小牧市が有力となっている。道が7月末に設置した「特定複合施設(IR)に関する有識者懇談会」によると、IRを整備した場合の経済波及効果は苫小牧市が1991億円で最も高く、他の候補地である留寿都村、釧路市を大きく引き離す結果となった。
 少子高齢化や産業構造の変化を背景に、人口減少が続く苫小牧市では、人口減少社会に負けない活力ある産業として、IR誘致に乗り出す。
 市は15年6月にIR可能性調査・検討結果を報告し、新千歳空港や札幌都市圏への良好なアクセス、広大な敷地を有することなどの強みを打ち出した。これを受け、苫小牧商工会議所は16年8月に苫小牧統合型リゾート推進協議会を設立した。
 市によると、IRがもたらす経済効果として、建設総投資額2200~3000億円、生産誘発額4000~5500億円、就業誘発人数3万3000~4万5000人を想定している。
 道は11月、IR誘致の基本的な考え方素案において「苫小牧市を優先候補地とすることが妥当」と明記。市の担当者は「やはり空港に隣接していることが大きい。その点も含めたIR構想をアピールしてきた結果、高い評価を得られている」と話す。
 苫小牧商工会議所の関係者は「土地が広大で、かつ平地であることも誘致には有利。苫小牧市に決まれば、間違いなく雇用創出につながり、地域が活性化する」と期待を寄せる。
 世界各国でカジノやカフェなどの施設を展開するアメリカのハードロック社は、苫小牧市を含む日本での事業展開をねらう企業の1つ。ハードロック・ジャパン(東京)のPR担当者は、「苫小牧市の雄大な自然を活用した自然共生型IRの構想に魅力を感じている」とし「世界中で運営している自社のカフェなどで苫小牧市、北海道をPRすることもできる」と語る。同社は、来年1月ころの苫小牧市での事務所開設を予定している。
 政府は、全国3ヵ所にIRを設置することを検討している。今後、どのような方向性が示されるのか。注目が集まる。
 

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