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輻輳する現場、安全確保が最優先課題/垣根を越えた連携不可欠/未曽有の自然災害に挑む〈2〉

2019/09/11付 連載・特集
災害復旧特集2
関係者が一同に介し、早期復旧に向けて綿密な調整を図っている

円滑な事業執行へ連絡協議会設立

 厚真町内の本復旧に向けては、330万立方メートルにのぼる膨大な崩土の運搬と、限られた区域で施工するための工程調整が最大の鍵となっている。施設管理者も多岐にわたり、発注者の垣根を越えた連携が不可欠に。情報共有の重要性を認識した関係者はことし3月、室蘭建管を事務局とし、室蘭開建や厚真町、本復旧工事に携わる建設業者などで構成する胆振東部地震災害復旧工事安全連絡協議会を立ち上げた。
 大量の流出土砂の処理法に目途が付いたのは、ことしの2月。地震による斜面崩壊の影響で、日高幌内川上流部に出現した天然のダム湖に土砂埋めする地すべり対策工が採択を受けた。道は直後に、土砂を上流部に運搬するための仮設道路の建設を開始。現在は下流部に確保した仮置きヤードへの土砂運搬を進めている。
 協議会には、道をはじめとする発注者と、約200社の受注者が参加。数多くの現場が稼働する幌内地区や吉野地区など8地区には、受注者で構成する部会を設けた。「各現場が作成した工程をもとに、作業が輻輳しないよう調整している」と語るのは、会長を務める室蘭建設管理部の塩田雅史苫小牧出張所長。特に、1日当たり1000台を超えるダンプトラックの走行スケジュールの調整に時間を割いているという。
 車両ごとに走行時間や走行ルート、土砂の運搬先を指定。困難な業務に追われているが、協議会による連絡体制が機能し、「当初の予定を上回るペースで作業が進んでいる」(道建設部)。大量の土砂や流木により難工事を強いられた仮設道路についても、受発注者が連携して円滑に対応。上流部までのルートは10月に完成する予定で、間もなく土砂運搬を開始する計画だ。20年度末の完成に向け、塩田所長は「盛土の品質確保など、検討しなければならない課題は多い」と気を引き締める。
 一方、国の発注工事では、勇払東部地区の本復旧に向けた準備工が進む。厚真ダムの本復旧に当たっては、作業員が管に入り、土砂を除去しながら直接被害状況を確認する。
 安全確保が最優先課題となる中、協議会は苫小牧労働基準監督署とも連携を図っており、塩田所長は「無事故・無災害で工事を終えたい」と強調。「発災以降、最前線に立って汗を流す建設業者が、地域から感謝される環境を」とし、会員のみならず、地域との連携強化にも努めていく方針を示した。
 本復旧工事の発注は当初、不調・不落も懸念されたが、地震災害復旧JV制度、発注ロットの拡大、フレックス工期の導入などにより、「建管発注工事の入札は、円滑に執行されている」(道建設部)。ことし8月末現在における災害復旧工事の進捗状況をみると、道施工分は被災個所数の96.2%に当たる152ヵ所、市町村施工分は82.4%に当たる285ヵ所に着手している。直轄農業の災害復旧工事の発注についても、ロットの拡大などにより順調に進んでいる。

担い手の確保・育成が急務に

 入札執行は現在のところ順調に進んでいるものの、緊急復旧と本復旧を含め、官民ともに技術者および技能労働者が「ギリギリの状態で対応している」(関係者)のが実態だ。担い手の確保・育成に向け、発注機関と建設業界は、週休2日や書類の簡素化など工事現場における働き方改革を推進している。
 ただ、行政機関においても定員削減計画により「南海トラフ級の災害が発生した場合、人員不足で派遣する側の行政機能が麻痺してしまう」(行政機関関係者)と危機感を募らせる。建設業界でも、人手が不足すると「災害対応すらままならなくなる」と警鐘を鳴らす関係者は多い。
 相次いで発生する大型の自然災害により、早急な対応が不可欠となる中、今後は官民挙げた担い手の確保・育成に向けた取組の強化が求められている。

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