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コロナ禍の道内建設業/社会を支える存在感示す/ニュースファイル2020〈1〉

2020/12/02付 連載・特集
2020年10-12月期企業経営者意識調査(中間集計)グラフ
2020年10-12月期企業経営者意識調査(中間集計)

官民協力し事業継続

 ことし1月に国内で初めて感染が確認されてから、瞬く間に拡大していった新型コロナウイルス感染症により、人々の移動は制限され、観光・飲食業をはじめとする多くの産業が壊滅的なダメージを受けている。
 新型コロナウイルス感染症が各産業に深刻な影響を及ぼす中、道建設業協会が3月に実施したアンケートでは、施工中の工事への「影響なし」が9割強を占めた。
 その後も、現場事務所内や作業場における徹底した感染対策、遠隔臨場などの手段を講じ、緊急事態宣言下においても、一部を除き大半の現場で工事を継続。開発局や道などの発注者も感染症拡大防止に関する費用を設計変更で計上するなどの対策を打ち出し、全面的に支えた。
 工事の継続により、雇用面でも、建設業は大きな役割を発揮した。道経済部の8月勤労統計地方調査によると、月間現金給与総額は全産業を上回り、離職率は全産業の平均を下回る結果に。9月末時点の雇用失業情勢をみても、建設業の有効求人数は唯一、前年から増加した。
 新型コロナウイルス感染症が雇用に深刻な影響を与える中で、道労働局の一人は「各産業の求人数は1月から軒並み下降したが、建設業が受けた影響は小さかった」と分析する。新型コロナウイルス感染症に起因する解雇や雇い止めが増加する中で、建設業は雇用の受け皿としても重要な存在となっている。
 

第3波の到来

 6~9月にかけて一旦は落ち着いた感染者数も、10月下旬に入ってから大幅に増加。全国的な感染拡大を受け、西村康稔経済再生担当相は11月25日、「このまま感染拡大が続けば、緊急事態宣言などの強い措置を講じる必要も出てくる」と発言。移動制限、休業要請などによって再び経済が停滞し、多くの産業に深刻な影響を与える可能性も出てきている。すでに多くの失業者を生み出している中で、追い打ちをかける事態となる。
 金融機関の担当者は「低迷する経済を下支えし、雇用を確保する上で、公共事業は最も有効な手段」と指摘する。近年の気候変動によって激甚化・頻発化する自然災害から国民を守る国土強靱化も求められる中で、「公共事業こそ、雇用確保と国土の課題を解決するという、いまわが国が抱えている課題を効率的に解決できる手段なのでは」との見方を示す関係者は多い。札幌商工会議所の職員は「ポストコロナの社会経済活動の活性化に向けても、インフラは必要不可欠だ」と話す。
 

地域の守り手として

 コロナ禍の中でも、外需に左右されない地域の建設業は、安定した産業ということを立証した。道経済部が実施した10~12月期企業経営者意識調査(中間集計)をみると、大半の産業において、「売上が大きく減少した」が20~30%に上った一方で、建設業はわずか2%という結果に。「ほとんど変化しなかった」は、各産業でトップとなる66%を占めた。
 9月に開かれた北海道建青会全道会員大会のパネルディスカッションにおいて小金澤昇平会長は「雇用をしっかりと守りながら、新型コロナの影響で職を失った方へのフォローなど心ある活動も多くみられた。建設業は、こういうときこそ周りを助ける安定した産業」と言及。コロナ禍において建設業の果たしてきた役割をしっかりと分かりやすい言葉で表現した。
 政府は、新型コロナウイルス感染症対策などを盛り込んだ経済対策を12月に閣議決定する。コロナ禍にあえぐわが国の窮状を救う実効性ある方策は限られている。

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