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全道に大きな経済効果/期待高まる都心アクセス道路/ニュースファイル2020〈2〉

2020/12/03付 連載・特集
冬場の渋滞解消等が課題の創成川通画像
冬場の渋滞解消等が課題の創成川通。11月の都市計画審議会で地下トンネル案が示された
 ことし、国の社会資本整備審議会の計画段階評価を終え、札幌市の都市計画決定手続きに移行した国道5号創成川通(以下、都心アクセス道路)。札幌市は11月13日、都市計画審議会を開き、都心アクセス道路の変更案に関する事前説明を実施した。事業そのものに対する否定的な意見はほとんどなく、「出入り口の数を増やすべきでは」「地上部は車線減となる。新たに生まれる空間については緑化を進めてほしい」などの意見が寄せられた。

地下トンネル採用

 現在の創成川通は、恒常的な渋滞発生が大きな課題。特に冬期は、都心から札幌北ICの移動時間が夏場の20分未満から、日によっては40分以上を要し定時性の確保が極めて難しい状況だ。
 都心アクセス道路は、札幌北IC~札幌都心部間の延長4.5キロメートルで、両側2車線の地下トンネル化を進めるもの。ダイレクトアクセス部分を含め7ヵ所の出入り口を新設する。完成すれば、地上部と合わせて全8車線となる。
 降雪の影響を受けない地下案は、他の案と比べ「都心部~札幌北IC間の速達性、定時性の向上」「札幌北ICの出口渋滞解消」などの点で優れているほか、高次医療施設への速達性向上といった効果が期待されている。昨年12月に都心アクセス道路に関する説明を行ったオープンハウスにおいても、道路構造に関する意見494件のうち、「地下構造肯定」が半数以上の263件を占めた。多くの市民が大きな期待を寄せていることが判明した。
 市のまちづくり政策局の担当者は「用地補償が不要で降雪地にふさわしい道路が整備されることとなる。地下案にすることで地上部の環境改善も図られる。関係者の意向が良い形で合致した」と語る。
 

市に必要な投資

 事業費は1000~1200億円。札幌開建が事業予定者となったことから8割が国費、2割が市の負担となる見通し。市の財政担当者によると、事業費を1000億円と仮定した場合、「地方交付税の措置等を含めた実際の市の負担額は約160億円」と説明する。大半が30年償還となることから、「1年当たりの償還額を考慮すると、市の財政をひっ迫させる要因にはならない。必要な投資だ」と話す。
 過去には、巨額の事業費が懸念されていたが、完成後は市の活性化に寄与している施設がある。札幌駅前通地下歩行空間が好例だ。当時整備に携わったという建設局担当者は「多くの人に利用してもらい、周辺のビルなどと接続した経済効果は相当なもの。地上部も札幌駅から南方面への回遊性が向上するといった効果があり、なくてはならない施設となった」と胸を張る。供用から間もなく10年、多くの人々が行き交う地下歩行空間の存在を否定する声は聞こえてこない。
 

人々の動きが拡大

 都心アクセス道路完成予定の2030年度には、北海道新幹線札幌延伸や北5西1・西2地区再開発の完了も見込まれている。再開発ビルに設置されるバスターミナルとのダイレクトアクセスも実現する。
 札幌商工会議所都市・交通委員会の渡邊克仁委員長は「観光、医療、防災、物流など様々な分野で大きな整備効果が見込まれている。とりわけ、北海道新幹線札幌開業の効果を全道に行き渡らせるという点において重要で、早期実現を大いに期待している」と話す。
 札幌市都市計画審議会の委員を務める、はまなす財団の濱田康行理事長は「渋滞解消は急務。政令市においてこれほど都心部と高速道路に距離があるところはない。道路整備による経済効果は札幌市にとどまらず、全道に波及するといった点でも非常に大きい」との見解を示す。

丘珠の機能向上も

 さらに、丘珠空港から都心部へのアクセス向上を期待する声もある。空港と都心を結ぶ連絡バスは現在、冬場の渋滞多発を考慮し、夏のみの運行にとどまっている。まちづくり政策局の担当者は「完成となれば冬場もスムーズな運行が確保できる」と語る。新千歳空港とともに、空港から都心に、都心から道内の各都市へと人の動きが大きく広がることとなる。
 都市計画決定に向けては、来年1月または2月に開かれる市都計審で諮問される見通し。順調に進めば、3月にも都市計画決定告示となる。道民の悲願でもある都心アクセス道路。ビックプロジェクトがいよいよ動き出そうとしている。

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