循環型酪農システム構築へ／世界初の技術でギ酸１０ｔ生産／岩田地崎など４者コンソーシアム

　ゼロカーボン北海道の実現へ―。岩田地崎建設（株）（札幌、岩田圭剛社長）は２５日、家畜ふん尿由来のバイオガスからメタノールとギ酸を製造する「興部カーボンニュートラルイノベーション」事業を開始することを明らかにした。開発は同社をはじめ、（株）ＭＯＲＥＳＣＯ、大阪大学、興部町の４者によるコンソーシアム（ＯＣＮＩＣ）で実施。世界初の技術で、２０２５年度ギ酸１０トンの生産を目指す。
　酪農が盛んな興部町とバイオガス活用技術の研究を進めてきた大阪大は、カーボンニュートラル循環型酪農システムの構築を目指して１９年に連携協定を締結。２０年には世界で初めてラボレベルで、メタンをギ酸とメタノールに変換することに成功した。
　その後、岩田地崎建設など民間企業が加わって２１年に町内にメタン酸化技術開発研究棟等を構築し、反応効率化やスケールアップの研究を進めてきた。
　４者はことし５月にＯＣＮＩＣを設立し、道が公募した「ゼロカーボン・イノベーション導入支援事業」に応募。事業が８月に採択されたのを受けて、本年度から３ヵ年計画でギ酸１０トンを生産するパイロットスケール装置の開発に取り組んでいくことになった。想定事業費は約３億円（北海道補助金２億円）。
　ギ酸は乳牛の肥料生産に添加剤として使われ、そのほとんどが海外からの輸入に依存している。新技術の社会実装は循環型農業や地産地消を可能とし、温室効果ガス削減に寄与できると期待されている。
　岩田地崎建設は興部町と共同で、ギ酸の評価および市場調査・利活用検討を行いサプライチェーンの構築を担当する。
　発表会ではコンソーシアム代表の岩田地崎建設から関博之副社長が事業について「家畜ふん尿由来のバイオガスからメタノールとギ酸を生成する。ギ酸については海外からの輸入に頼っているため社会的価値が高い。カーボンニュートラル循環型酪農システムの構築が可能になる」と日本における脱炭素政策に寄与できると強調した。
　コンソーシアムの４者が一堂に会した席上、「より強い結束で事業を進めることをあらためて決意し、必ずや成功させると宣言する」と決意を示した。
　質疑応答では、出席者が「本事業が北海道内に実装したときの導入効果は、どの程度を想定しているか」と質問。
　関副社長は「北海道全体に展開されるとバイオギ酸の販売で年間１００億円の経済効果が見込まれる」「年間２７３万トンの温室効果ガスの排出削減が可能になると想定している」と回答した。