トップページ > 連載・特集一覧 > 連載・特集詳細

担い手確保・育成へ事業量安定不可欠/緊急対応 明確な役割分担を/未曽有の自然災害に挑む〈3〉

2019/09/12付 連載・特集
室蘭建設業協会会長 中田孔幸氏画像
室蘭建設業協会会長

   中田 孔幸 氏

―災害対応を振り返って、地域の守り手としてどう行動し、役割を発揮したか

 発災当日、直ちに協会役員の安否確認を行い、災害対策本部を設置した。その時点で、国や道で年間の維持工事を請け負う会社に発注機関から直接連絡が入り、すでに緊急対応を実施していた。
 協会では常置委員会の災害対策委員会などから会員企業に連絡を取り、バックホーやトレーラーを手配し、現地に向かわせた。
 しかし、道路事情が悪かったため、集めた重機すべてが稼働することはなかった。
 協会としては現地と離れていたため、役所とのパイプ役、会員の後方支援ということで、連絡・伝令役となり、燃料の調達に奔走するなどした。
 振り返れば、協会としての役割は、ある程度果たすことができたと思っている。
 発注者と受注者の関係ではあるが、現場の声をストレートに言わせてもらった。役所に理解してもらわないことには、復旧作業も順調に進まないという思いがあった。

―災害対応をよりスムーズに進める上で痛感したことは

 発災時の緊急対応に関して、船頭が多かったこともあり、受ける側の業界も混乱することがあった。
 現場には公共工事の発注機関をはじめ自衛隊や警察、TEC―FORCEなど様々な組織が一刻を争って出動してくる。災害の状況(河川災害、地震災害など)に応じて対処法も変わるため、国・道の災害対応の組織は、事前にある程度役割分担を決めた方が良いと感じた。そうした方が、我々としてもスムーズに意志の疎通ができると思う。
 集結した機材を有効に使いきることができなかったという反省点を踏まえると、本部の情報共有のために、一つの基本的なパターン(ベースとなる組織体制と役割分担)をつくっておけば、いざというときに役に立つのではないかと考えている。
 協会も災害時の体制を見直すということで、災害対策委員会のメンバーを増員し、新しい体制づくりに取り組み始めている。

―課題解決に向けた方策と環境整備について

 管内は噴火、台風、地震など様々な災害を経験している。いつ同じような災害が来ないとも限らないため、経験を生かして、様々な災害のマニュアルをつくりたいと思っている。
 また、可能な限り早く復旧・復興できるよう動くことも、建設業の存在意義の一つだと思っている。そういう意味では、地域に根ざし、精通した地元企業を、行政にはより上手に使ってもらいたい。
 北海道胆振東部地震の経験から、被災地に近い場所に本部を構え、発注官庁の監督員と顔を合わせた中で様々なキャッチボールをすることが望ましいと思っている。
 今回、特に日高管内の会員企業は機動力のある会社が多かった。作業員を直接抱えていたり、機械を持っていたりしたため、フットワーク良く動いてもらった。
 そのことを考えると、担い手の確保・育成や建設機材を所有していくには、安定的な事業量を確保していかないといけない。
 新卒採用にも処遇の改善が必要で、新卒者が求める条件などをクリアするには、経営基盤がしっかりしていなければ対応できない。

―本復旧・復興に向けた決意

 復旧の進捗率は、現段階で30%前後(取材は8月上旬時)かと思う。年内には50~60%程度までいくのではと思う。
 住民の日常生活や地域の経済活動が正常に戻って、復興したと言うことができる。それが遅れると、地域から流出した人口が戻ってこないということを東日本大震災で目の当たりにしている。
 そうした事例が起きないよう、協会としてはできるだけ早く、そして全力を挙げて災害復旧優先で取り組みたいと思っている。

その他の連載・特集 一覧

輻輳する現場、安全確保が最優先課題/垣根を越えた連携不可欠/未曽有の自然災害に挑む〈2〉

2019-09-11付 連載・特集

円滑な事業執行へ連絡協議会設立 厚真町内の本復旧に向けては、330万立方メートルにのぼる膨大な崩土の運搬と、限られた区域で施工するための工程調整が最大の鍵となっている。施設管理者も多岐にわたり、発注者の垣根を越えた連携が不可欠に。情報共有の...
災害復旧特集2

無残な姿「崩土と倒木との闘い」/迅速な初動が円滑復旧導く/未曽有の自然災害に挑む〈1〉

2019-09-10付 連載・特集

 昨年9月6日未明に発生した北海道胆振東部地震は、道内で観測史上最大となる震度7を記録した。道内全域での停電、いわゆるブラックアウトが情報収集を困難とする中、震源に近い厚真町、安平町、むかわ町では、甚大な被害が想定された。開発局は、すぐさま...
厚真川幌内橋付近で緊急の土砂除去作業

地域の魅力高めるために/働きやすい職場づくりへ官民一体/新任開建部長リレーインタビュー⑦稚内 舘石 和秋氏

2019-06-26付 連載・特集

―管内の印象と新任の抱負 宗谷地域は厳しくも豊かな自然を生かし、ホタテをはじめとした水産業や酪農業、観光業が盛んであるほか、近年は風力などの再生可能エネルギー事業にも取り組んでいる。宗谷産のホタテは北海道から輸出される農水産物の多くを占め、...
舘石 和秋氏画像

地域の発展 知恵絞りたい/直面する諸課題解決へ手を携え/新任開建部長リレーインタビュー ⑥網走 村上 昌仁氏

2019-06-25付 連載・特集

―管内の印象と新任の抱負について 第8期北海道総合開発計画の目指す“世界の北海道”を実現する上で、「食」・「観光」の資源が豊富であり、地域のポテンシャルの高さを感じている。地域の戦略的・魅力ある産業として継続的に発展...
村上 昌仁氏 画像

業界の魅力 広く発信/災害対応の体制整備が重要/新任開建部長リレーインタビュー⑤帯広 竹内 正信氏

2019-06-21付 連載・特集

―管内の印象と新任の抱負について 十勝での勤務は5年ぶり2度目となるが、当地は元気があり、自主自立の気風を強く感じるとともに地域として一体感があると思う。 十勝の地は農業、酪農、畜産および観光などでポテンシャルが高い地域であり、それらの発展...
竹内 正信氏画像

建設業の持続的発展重要/安全・安心確保へ手を携え/新任開建部長リレーインタビュー④旭川 鹿嶋 弘律氏

2019-06-20付 連載・特集

―管内の印象について 大学を卒業し農林水産省に入省して以来、東京を中心に数度の出向や地方勤務も経て、30年目にして初めての地元勤務。その当時と比べ、道内の高速道路や高規格道路などのインフラ整備は進んだようにみえるが、まだ整備途上のところも多...
鹿嶋 弘律氏画像

将来計画の整理・発信を/建設業は先端技術産業へ/新任開建部長リレーインタビュー ③小樽 渡邊 政義氏

2019-06-19付 連載・特集

―新任の抱負・管内の印象について 開発局は「食と観光の生産空間の維持発展」を総合開発計画の柱に掲げ、管内では「世界の後志」を目指し事業を展開している。 管内は、全道的にも社会基盤投資の中心軸にある地域だと認識している。開発局事業に加え北海道...
渡邊 政義氏画像

災害時の冗長性確保を/喫緊の課題解決へ官民連携推進/新任開建部長リレーインタビュー ②函館 樺澤 孝人氏

2019-06-18付 連載・特集

―管内の印象と新任の抱負について 約6年ぶりに函館に戻り、早速、2市16町を訪ねた。管内は農水産業が盛んで、観光資源にも恵まれ、北海道の戦略的産業である「食」と「観光」を担う「生産空間」そのものであり、北海道の縮図であると感じている。 4月...
樺澤 孝人氏画像