災害体験 人材育成に生かす仕組みを/より強靭な基盤整備へ/未曽有の自然災害に挑む〈4〉
2019/09/13付 連載・特集
―災害復旧事業の現在の状況、今後の見通し、課題について
公共土木施設関係では、厚真町として本年度約100億円の予算を計上した。これと合わせて国、道もそれぞれ災復事業を実施することとなったが、1ヵ所に複数の事業主体が重なる場所もあるので、被災地の復旧は時間がかかるという見方だった。ただ、いま現在は道に代行している工事もあり、国直轄事業の方も順調であることから、私たちが昨年感じた不安からみれば、スピーディーに災復事業が進んでいるという印象だ。ただ、公共土木施設だけではないし、生産基盤である農地の災害復旧もある。また、森林も大きく被災しているが、復旧スケジュール等が明確になっていないのが課題。宅地の耐震化の手法がまだ固まらない地域もあるので、これも課題の一つとなっている。
町における災復工事の発注率は非常に高い。災害に特化した復興JVのほか、規模の大きい工事では特定JVを駆使しており、現在のところ不落になっている案件は報告されていない。建設事業者の方々が資機材・人材の確保に相当努力しているのではないかと思っている。
昨年不安に思っていた状況とは違い、災復工事はスピード感がある。地元の被災者もそう思っている。また、横の連携を密にするため、安全連絡協議会をつくっていただいたことも、先駆的な取組であると高く評価している。予算の執行状況をみると、我々が見通していた来年度に公共土木系はほとんど完成するのではないだろうか。
―災害に強いまちづくりに向けて
町の場合は、市町村における強靭化計画が未策定。今回は、北海道胆振東部地震の被災地ということで、復旧・復興計画のあとに強靭化計画をつくることを考えている。計画をつくるということは、単なる復旧にとどまらず、強靭でしなやかなインフラ整備も含めた災害に強いまちづくりを基本コンセプトにしていく。単なる復旧に終わらせない、より強靭な基盤整備を目指すべきだと思っている。すでに取り組んでいるのは、ルーラル地区の配水管の耐震強化。それから道道10号線を補完するような町道についても当然整備を進めていく。昨年の地震で孤立した幌内地区は、厚幌ダムもあるので、孤立しないような町道等の複線化は絶対にしていかなくてはならない。
現在、苫小牧厚真通という都市計画道路について、道道昇格の要望を始めている。市街地周辺で我々ができる町道の整備もしっかりと進めたい。
昨年を振り返ると、災害時に本庁舎が拠点機能として役割を果たせたかという反省はしているので、庁舎の再編は復興計画の目玉となる。それから避難所として苦労した分、課題も浮き彫りになった。再度災害に備える観点からも、公共施設に付加すべき機能なども明らかにし整備していきたい。
―復旧に当たっている開発局、道、建設業界への想いを
復旧の道半ばではあるが、開発局、道など関係者にお礼を申し上げたい。我々が想定し得なかった災害だったが、リエゾンも含め、大勢の方々が厚真町に支援に来ていただいた。自衛隊を含めると3万人という数字も報告されているが、そうした大勢のプッシュ型の支援があって、人命捜索活動が完遂し、その後の災害査定までの様々な調査、各事業についての方向性、あるいは採択に結び付いた。昨年は、我々がどれだけアナウンスをしても営農再開は厳しいという雰囲気が漂っていたが、冬の間に着実に復旧を進め、春までにできる限り再開できるように仕上げた国と道の底力に心から感謝したい。
災復工事に応じてくれた建設業者の方々も評価したい。発災直後の重機調達の仕方はすごかった。河道閉塞個所などでは24時間バックホーが稼働し、被害が拡大するのを全力で防いでいただいた。目に見える形で復旧が進んでいることを実感している。
今後は、災害時に必要な人材をどう育成していくかを考えていかなくてはならない。全国各地で自然災害は発生しているが、一つ一つのまちにとっては何十年、何百年に一度のレベルなので、それに対応できる人材を育てていける仕組みづくりが必要ではないかと思う。
例えば、本道が被災した場合、道内だけでは人が足りないので、他府県から人材を派遣してもらう。派遣された人員が現場でしっかりと勉強し、また地元に戻って中核の人材になっていく。こうした災害派遣は人材を育成するシステムとして必要ではないかと思う。
土木・建築技術は学んでいても、災害は実体験がないと対応できない。人材育成に必要なシステムとして制度化していくべきだ。
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