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現実味ある構想に高まる期待/新たな青函トンネル実現へ/Local Topics 2020⑥渡島・檜山

2020/12/15付 連載・特集

29年で投資を回収

 日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)はことし11月、「津軽海峡トンネルプロジェクト構想」を発表した。
 これまでの「青函マルチトンネル構想」は、カートレイン・JR貨物共用トンネルと無人自動運転車専用トンネルの2本を整備する内容だったが、自動運転が可能となることを前提として道路幅員を縮小。内径を15メートルに抑えることで、1本のトンネルで済む構想へと変更した。これらによって、概算事業費を従来案より300億円抑制した。
 工期についても、従来案では約20年と想定していたが、トンネルが1本となり、高水圧・長距離掘進に対応したシールド工法の採用などで15年に短縮できるとしている。
 事業方式については、BTO方式のサービス購入型を提示。収支のシミュレーションも行い、現行の金利で財政投融資を活用したケースでは、29年で投資を回収できるという試算結果も示した。JAPICで構想策定に携わった戸田建設(株)土木営業第一部の松崎成伸課長は、「収支試算で投資回収が可能ということを示せたことで、構想が実現可能なものだと裏付けることができる」としている。

最も蓋然性ある案

 11月2日に札幌で開催されたシンポジウムで、道経済連合会青函物流プロジェクトチーム座長の石井吉春北大公共政策大学院客員教授は「津軽海峡トンネルプロジェクト構想が、最も蓋然性を持っている」とした。
 道経連では、「新幹線の最高性能を引き出すとともにトラック運送の運搬時間短縮・コスト低減を図るもので、北海道経済の活性化に有効」と評価。第2青函多用途トンネル構想研究会の委員を務めた道建設業協会の栗田悟副会長は「鉄道貨物が入る分、研究会の提言よりも投資効果が高まる。JRの経営安定や持続性向上にもつながるのではないか」との効果も示す。

機運醸成が最優先

 道経連青函物流PTは3月にまとめた報告書で、3団体が示した第2青函トンネル案の課題にも言及した。3案に共通するデメリットとして民間主導による履行完了リスク、事業運営後の破綻リスクを指摘。民間側の負担軽減と青函地区の公共・民間の広域連携などを課題に挙げている。松崎氏も「官の協力も必要。官民のリスク分担を考えていかなければならない」との認識を示す。
 それでも、異口同音に「夢物語ではなく、現実的なプロジェクト」と訴える。青函トンネル建設に携わった技術者も多数在籍する鉄道路線強化検討会の委員を務める吉川大三氏は「これまで培ってきた技術と最新の技術を駆使すれば、間違いなくできる」と強調。他の関係者も「資金面を含めて実現可能」とする。その上で最優先課題として挙げるのが機運の醸成。「第2青函を実現させようという環境づくりがまだできていない。道内、青森や東京などに声を届けていくことが必要」と口をそろえる。
 そうした中、青函トンネル建設の前線基地だった福島町で昨年、第2青函トンネル構想を実現する会(会長・鳴海清春福島町長)が発足。のぼりや垂れ幕で町民に周知を図る取組を進めてきたが、ことしは今後の本格的な要望活動等を見据えてPR用のパンフレットを作成した。
 鳴海町長は「まずは足元を固めながら、オール北海道での活動につながるよう取り組んでいきたい」との考えを説明。「北海道全体のプロジェクトとしてとらえ、道の総合計画などに位置付けてもらいたい」とし、一丸となって推進していく方向性を形にする必要性を示す。

半島道路に追い風

 JAPICの構想には、アクセス道路の整備も盛り込まれたが、北海道側で接続を想定しているのは地域高規格道路の「松前半島道路」。これを受け、関係者の期待が膨らんでいる。本州と直結することで、飛躍的に松前半島道路の重要性が増すからだ。
 第2青函トンネルはもともと新幹線と貨物の共用問題を解決するいうことが出発点だったが、物流の8割を担うトラック輸送も可能となれば、さらに効果は増大。日本全体に影響を及ぼすような国家的プロジェクトと言えるが、松前半島道路はその一端を担い、第2青函トンネルが最大限の効果を発揮するために必要不可欠となる。
 関係自治体は、「間違いなく追い風になる」と期待。ある関係自治体の関係者は「トンネル、半島道路、そしてアクセス道路のどれが欠けててもダメ」と三位一体での実現の必要性を訴えている。

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