担い手確保へ取組本格化/建設業の働き方改革/ニュースファイル2020〈5〉
2020/12/08付 連載・特集
働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(以下、働き方改革関連法)の成立から間もなく2年半を迎える。建設業は一定の猶予期間が与えられたものの、2024年度の時間外労働の上限規制施行まではわずか3年余り。各企業には、罰則付上限規制施行を見据えた環境整備を着実に進めつつ、深刻さを増す担い手不足の解決に向けた取組を加速させていくことが求められている。週休2日浸透
建設業では、従前から長時間労働の是正が課題となっていた。課題解決に向け17年度から週休2日制試行工事の取組が始まる。初年度は全道でも数十件にとどまったが、働き方改革関連法の成立を受け開発局や道は、試行件数を大幅に増やしている。発注方式は受注者希望型を基本としているものの、取組への申出率は年々上昇。ある発注機関の担当者は「補正係数の見直しなども影響しているが、業界の就業環境改善に向けた意識の高まりも大きい」と分析する。
道内主要発注3機関における週休2日の達成率も大きく向上。試行対象工事全体に占める4週8休以上の19年度達成率は、開発局が前年度から7ポイント上昇し70%、道建設部(建管発注分)が21ポイント上昇し63%、道農政部が15ポイント上昇し62%にのぼった。
取組が浸透してきた状況を踏まえ、開発局は、来年度から発注者指定方式の試行をさらに拡大する方針。一次改築、年内工期など制約が少ない工事では、土日を完全休みとする完全週休2日制の試行にも乗り出す。
課題指摘する声も
ただ、積雪寒冷地である本道では、9月から12月にかけて工事追い込み期に入り、時間外労働が長くなる傾向にある。降雪が少ない本州とは異なる特殊性から「この期間の上限規制はハードルが高い」とみる関係者は少なくない。週休2日を巡っては、技能者の収入減に直結するため、日給月給制から月給制への移行も求められるが「現状では厳しいし、経費率のさらなる引き上げが必要」(業界関係者)。さらに、一部からは「現在の日当たり施工量をベースとしたままではやり繰りが難しい」と、積算体系そのものを疑問視する声も聞かれる。
業界から週休2日に関する課題解決を求められる中、国交省は「実態調査に基づく設計労務単価を引き上げ続けることも重要」(担当者)と説明。「休日分の経費を補填するためには、工事費を現在の1.2倍にする必要がある。上限規制の適用までにその基準まで引き上がっていれば、人件費等の課題はクリアできる」と展望する。
遠隔臨場で成果
ことしは新型コロナウイルスが全国的に猛威を振るったが、国交省は、デジタル技術を駆使して業務や働き方などの改革を目指すインフラ分野のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進。非接触・リモート型の働き方への転換や、抜本的な生産性や安全性の向上などを目指すもので、遠隔臨場などの試行に本格的に取り組んでいる。道内でも取組は注目を集めており、札幌市内で試行を進める受注業者は「社内検査を含めた移動時間の短縮や、臨機な対応を必要とする場合の迅速な初動対応にもつながる」と効果を実感。各発注機関も成果と課題を検証し、試行件数を拡大していく考えを示す。
環境整備が急務
建設業は、社会資本の整備や維持管理、災害対応などを担うが、他業種と比べて担い手不足が深刻化。時間外労働の上限規制適用は目前に迫っているが「そこは最低限クリアしなければ課題」(関係者)。持続的な発展に向けては「週休2日制試行工事はもとより、i―Constructionの推進による生産性向上、女性も働きやすい環境整備なども通じてその魅力を高め、世間の方々に知ってもらうことが大切」と訴える。(シリーズ終わり)
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