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連携授業等で大きな成果/空知建協 担い手確保の取組/Local Topics 2020①空知

2020/12/08付 連載・特集
ローカルトピックス2020空知_画像
本年度からは道教育庁のフューチャープロジェクトに協力。岩見沢農業高校で単管ハウスを建設する授業を通じ、業界の魅力なども伝えている
 両親から体力のなさを心配して反対されたが、特にきついと感じることもなく、連携授業で知り得たICTの知識を体験できて楽しい―。充実した表情を浮かべてこう語るのは、ことし(株)砂子組に就職した木川田和樹さんだ。木川田さんは、空知建設業協会(砂子邦弘会長 ※邦は手におおざと)が2018年度から進める「岩見沢農業高校との連携授業」を受講したことを契機に、建設業界を志望した。空知では現場での実体験を通じて建設企業への就職希望者が増加しているほか、入社後のミスマッチが防止されるなど、空知建協における担い手確保の取組が実を結びつつある。
 建設業では、少子高齢化の進行等による慢性的な人手不足に加え、就職後3年以内の平均離職率が他業種と比べ高いことが課題に。課題解決の糸口を探るため、空知建協は、16年度に入職促進特別委員会を設置した。

魅力PRし入職促進

 委員会設置後、業界のイメージアップを狙うPR動画の製作や、インターンシップの受入拡大、建設現場見学会などの活動を展開。18年度からは、ICT技術の学習と優れた人材の育成を目的とする「岩見沢農業高校との連携授業」も開始した。
 具体的には、若年層が適応しやすいICT技術について紹介する中で、業界のイメージアップを図るとともに、その魅力をPR。会員企業全体のICT導入推進も兼ねて、5~11月にかけて週1回2コマ、従来施工との比較・検証を行う授業などを行っている。
 連携授業を受けた生徒の中から、ついにことし2人が会員企業に入社。木川田さんとともに(株)砂子組に入社した金谷柊迆さんは、現在の仕事内容に違和感を覚えることなく業務に打ち込んでおり、「今後は2級土木施工管理技士の実技を取得し、農業土木のスペシャリストになりたい」と話す。
 前年度に授業を受けた3年生の髙畠優花さんと東海林悠哉さんも、来春の会員企業への就職が内定。「女性が現場でより働きやすい環境をつくれるよう、積極的に意見を出していきたい」「分かりやすく丁寧に教えてもらい、優しい人たちだと感じた。学んだ知識を生かして空知の農業基盤整備に貢献していきたい」と意欲をみせる。

新規事業に協力

 これまでの取組の成果が着実に現れる中、本年度からは、新たに道教育庁の「実践的職業教育推進事業専門高校フューチャープロジェクト」にも協力。将来の本道の産業を支える人材育成に向け、地域産業の課題解決に必要な実践研究を進める事業で、岩見沢農業高校を含む2校が指定を受けた。
 事業では、空知管内の畑作・野菜栽培を取り巻く課題への対応を研究する中で、雪害に強い単管ハウスを建設。専門的技術を有する会員企業も事業に協力し、整地から測量、ハウス建設に至るまでのすべての工程を支援した。
 2年生の樋口悠太さんは、事業を振り返り「思っていたイメージと違い、社員同士の仲が良さそうだと感じた」と感想を。実際に建設会社で働く人々の表情が見えたことで、業界を身近に感じるとともに、仕事への理解度が深まり、「入社したいと思った」と話す。

定着の取組も

 一連の取組について、阿部善史教諭は「仕事に対する技術者の熱が伝わり、将来像が描きやすくなってきている」と評価。長年の活動が実を結び、「地元の建設会社に就職したいという生徒が増えてきた」と話す。しかし、一方では管内の業界関係者から「まだまだ人手は不足しており、保護者のイメージ改善や、働き方改革などやるべきことは多い」との声も少なくない。
 空知建協では、今後、開発局と合同で実施している学校キャラバンの回数増に向けた検討のほか、トラック協会と連携した小学生対象の交通安全教室などを予定。大崎里志事務局長は「より効果的な活動を模索していく」と話す。若年入職者の定着に向けた新たな取組も展開することとしており、今後の動向が注目される。

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