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普通科卒の若手育成へ/旭川建協 初の土木技術者入門講座/Local Topics 2020⑦上川

2020/12/16付 連載・特集
Local Topics 2020⑦画像
教育者ならではの視点で土木の知識・技術を手ほどき。写真はキャラクター文鎮の作成作業

離職防ぐ対策開始

 旭川建設業協会(川島崇則会長)は、初の普通科高校等卒業者を対象とした土木技術者入門講座を6月から4回にわたり実施。講師は元旭川工業高校教諭の宮川淳氏が務めた。
 建協が2016年に会員企業を対象に行ったアンケート調査では、回答した40社中、17社が新卒者36人を採用した。建協によると、近年は概ね40人程度で推移しており、相次ぐ若手社員の離職に経営者は頭を悩ませているという。
 人材不足を補うためには、土木科などの専門科卒だけではなく、普通科卒の採用も視野に入っていた。しかし、専門知識の不足等から離職してしまうケースが少なくなかった。
 ある関係者も「普通科卒は専門科卒の社員と比べ、専門的な知識や技能、経験の差から、ギャップを感じることが多い」と話す。普通科卒の若手社員の離職の背景にそうした状況があるのは否めない。一方で、「だからこそ、専門科卒に負けまいと意欲的でもある」と評価する声もあり、普通科卒の若手技術者の育成が求められていた。

元工業高教諭招き

 元旭川工業高校教諭の宮川淳氏はことし4月、花本建設(株)(旭川、花本金行社長)に人材育成担当として入社した。宮川氏は同校で進路指導を担当していた際、企業経営者から就職相談を受けるなど、若手社員の離職に危機感を抱いていた。「自らの経験を生かしてできることはないか」と、建協の土木委員を務める花本社長と相談。土木委員会主催で宮川氏を講師に、専門科以外の学科卒の新入社員を対象とした土木技術者入門講座を初めて開講することとなった。
 これまで4回の講座を行い、土木技術者として必要とされる数学や幾何学の知識、測量、土工などを指導。うち、第4回のコンクリート土工では、キャラクターの文鎮をモルタルや骨材を使って作成する作業を取り入れるなど、教育者ならではの視点から、各回でより興味をもってもらえるよう工夫を施している。

横の関係構築が鍵

 宮川氏は特にコミュニケーションの大切さを説き、「会社の垣根を越えて横のつながりをつくってほしい」と繰り返し伝えている。普通科卒の仲間同士で気軽に相談できる関係性があれば、つらいときでも励まし合い、離職を踏みとどまることができるからだという。講座を重ねるごとに、周囲と協働し課題に取り組み、一人前の技術者を目指して研鑚を積む受講者の姿に、手応えを感じている。
 受講者の一人は「勉強していて土木に対する興味が出てきた。参加して良かった」と意欲を示す。また、「講座の内容をより深め、もっと時間を増やしてほしい」との要望も寄せられた。受講者の上司からも「継続を願っている」と講座を歓迎する声が上がっている。
 旭川建協の小林淳専務理事は「受講者や各企業の方々から高い評価をいただきありがたい限り。現場に慣れるための手助けができた」と成果を語る。
 一方で、手探りで始めた取組のため、課題もみえてきた。想像以上に、講座に求める要望が多いため、受講者の基礎知識とのバランスを考慮した指導内容を検討していく必要があると、宮川氏は感じている。

来年度以降も継続

 次回は来年1月27~29日の3日間にわたり実施する予定で、受講者やその上司へのアンケート結果を踏まえ、道路や河川、農業土木をテーマに設定した。
 21年度についても継続する方針で、本年度に行った内容をベースに、より充実したものとする。小林専務理事は「今後は普通科高校にも講座をアピールしていきたい」と展望を語る。
 さらに、空知建設業協会(砂子邦弘会長 ※邦は手におおざと)においても、21年度から宮川氏を講師に、土木技術者入門講座の開講を計画しており、取組は管外へと波及しつつある。
 人手不足の劇的な解消が見込めない中、ますます専門科以外の学科卒の採用と育成が業界の発展の鍵となる。旭川建協の取組はその試金石として、注目されている。

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