旭川紋別道 二次交通として期待/オホーツク管内2空港 札幌便就航/Local Topics 2020⑩オホーツク
2020/12/21付 連載・特集
8年ぶりの就航
(株)北海道エアシステム(HAC)はことし10月、札幌丘珠~女満別線の運航を8年ぶりに再開した。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い発生した札幌丘珠~三沢線の減便分を女満別線に充当。札幌の大学病院からの非常勤医派遣に依存する、オホーツク管内の医療関係者の求めに応じ、札幌圏へのアクセス強化に乗り出した。HACの山口俊治取締役は、新型コロナウイルスによる影響に強い危機感を示しながらも、「今はできることを確実に」と意気込む。オホーツク圏が有する観光資源にも注目し、新型コロナウイルス終息後は「観光需要の取り込みに全力を注いでいく」と展望した。
観光需要の増加
オホーツク圏は、知床世界自然遺産やオホーツク海の流氷など観光資源に恵まれており、海外からも注目されている。航空事業者に道内新規路線の開設を促すため、道が2018年度に8路線の流動人口を調査した「道内空港ネットワーク充実・強化調査研究事業」においても、札幌(丘珠・新千歳)~紋別間の流動人口が96万人と最も多く、続く函館~旭川間の29万人を大きく上回ったことが示された。季節ごとの内訳をみると、夏期は61万人、冬期は35万人。全道的に観光需要が落ち込む冬期に関しては、他の平均を大幅に上回っていることが明らかに。道の総合政策部航空課の担当者は「流氷シーズンによる観光需要によるものでは」と分析する。
結果を受けHACは、ことし2月の週末、札幌丘珠~紋別間でトライアルチャーター便を運航した。トライアルチャーター便の利用率は、札幌丘珠空港発が61.3%、オホーツク紋別空港発が48.3%。利用人数は延べ291人だった。現在、定期就航している新千歳~稚内間の前年度の利用率は55.2%。関係者は「他路線の利用率と比較しても、定期就航の可能性がある」と前向きな見解を示した。
空港から観光地へ
一方、空港からの二次交通に目を向けると、脆弱性を指摘する声が様々な方面から聞こえてくる。特にオホーツク紋別空港近辺には鉄道が通っておらず、管内の周遊には車両による移動が不可欠。空港から観光地を結ぶ道路ネットワークの整備が求められている。網走開建は、道縦貫道との交点にある比布ジャンクションから紋別市までを結ぶ延長約130キロメートルの旭川紋別道の整備を推進。現在までに、比布JCT~遠軽ICの計98.5キロメートルが開通している。
ことし7月に行われた社会資本整備審議会道路分科会第24回北海道地方小委員会では、丸瀬布遠軽道路につながる遠軽IC~上湧別間の計画段階評価が行われ、別線整備ルート約14キロメートル、別線・一部現道改良ルート約14キロメートル、現道改良ルート約13キロメートルの3案から検討することが示された。現在、対策方針の決定に向け第2回アンケート調査の結果を取りまとめており、地域住民の関心も高まっている。
命の道の重要性
道内の中でも、広域分散型社会の色合いが強いオホーツク管内。西紋別地区総合開発期成会は「1989年にJR名寄本線が廃止となってから、道路への依存度がより強くなっている」とし、国に対して旭川紋別道の整備促進を強く要望し続けている。(株)紋別観光振興公社の担当者は「旭川紋別道は、オホーツク紋別空港から観光地へのアクセス向上に必要不可欠な道路。一日も早い全線開通は悲願だ」と語気を強める。医療面においても、旭川紋別道が大きな役割を担うことが期待されている。北海道の地域とみちをつなぐネットワーク連携会議の田中夕貴代表は、地元の紋別市に産科医師が不足しており、遠軽町まで通院し出産した経験から「地域と地域をつなぐ安全・安心な“みち”は、私たちの暮らしに必要不可欠」と話す。地域住民も「地方都市でも安心して暮らせるようになる」と述べ、“命のみち”の整備が急がれる。観光や医療などの社会経済活動を支える交通ネットワークの拡充を待つ声は多い。
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