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巨大地震への対応急務/根室初 高規格道路が開通/Local Topics 2020⑫釧路・根室

2020/12/23付 連載・特集
Local Topics 2020⑫釧路・根室画像
津波を伴う巨大地震への備えの観点からも、高規格道路のさらなる延伸が求められる。写真は根室道路=釧路開建提供=

地域振興を支援

 根室管内初の高規格幹線道路となる根室道路が、ことし3月に開通した。区間は温根沼ICから根室ICまでの7.1キロメートル。釧路市から根室市までの所要時間短縮とともに、拠点間のアクセス向上により地域の観光活性化や産業の発展に期待が高まっている。
 管内の運送業のドライバーは、「根室市内から釧路市に向かう際、非常に便利だと感じている」と話す。
 また、根室消防本部の緊急搬送隊員も「交差点や信号がないことも、より安全な搬送につながる」と評価。さらに、防風林を整備していることから、冬期の地吹雪による交通障害の緩和にも期待を寄せる。

道路網構築が課題

 一方で、釧路~根室間における高規格幹線道路の整備促進は、いまだ長年の課題として残されている。
 道横断道根室線釧路~根室間は、釧路外環状道路の釧路西ICを起点に、根室道路・根室ICに至る延長約143キロメートル。このうち開通しているのは、起点の釧路西IC~釧路別保ICまでの16.8キロメートルと、根室道路7.1キロメートルの合わせて23.9キロメートル。その他の区間は未開通となっている。
 産業振興や経済活性化、安定的な救急医療に加え、釧路・根室管内では津波防災の観点からもミッシングリンクの解消が強く求められている。

津波対策の役割も

 政府機関の地震調査研究推進本部によると、千島海溝沖(十勝・根室沖)でマグニチュード8.8程度以上の地震が30年以内に発生する確率を7~40%と推計。また、内閣府の有識者会議「日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震モデル検討会」はことし、過去6000年間に起きた津波による堆積物を分析するなどの手法で、北海道沖で発生する可能性がある最大規模の津波予測を公表した。これによると、最大津波高は釧路市で20.7メートル、釧路町で27.3メートル、厚岸町で21.4メートル、根室市で22メートルと想定されている。
 このため太平洋沿岸に位置する自治体では、避難道路や避難施設の整備など、早急な津波対策が迫られている。
 東日本大震災発生時においては、高速道路が津波避難場所になったという事例がある。高速道路は他の道路と交差しないよう高所に作られており、津波から避難する上で重要な構造物となる。
 宮城県石巻市は震災後、三陸自動車道への避難階段を4ヵ所設置した。市の職員は、民家の近くに緊急避難場所がない地区もあったとし、「高速道路の活用が非常に役立っている」とその効果を語る。
 管内の事例では、釧路外環状道路釧路西IC~釧路別保IC間が、津波浸水区域を回避していることから、釧路市は避難目標地点・避難経路に指定。また、釧路町は釧路別保ICそばに「釧路町防災ひろば」を併設整備し、約3300人が避難できる用地を確保している。
 このほか、整備を進めている道東道阿寒IC~釧路西IC間においても、2012年に見直された津波浸水予測を受け、浸水域にかかる区間の縦断線形を再評価。盛土高を4メートル嵩上げするなどの設計変更を行い、被害を受けないルートを構築する。釧路市の防災担当者は、「近傍に民家などがある場所では、当然緊急避難場所に活用したい」と望む。
 津波被害が想定される地域において、緊急避難場所となる高速道路の整備は、より一層重要性が増している。

根室線延伸へ

 釧路~根室間の中間地点に位置する厚岸町の尾幌~糸魚沢間24.7キロメートルが19年度に待望の事業着手を迎えた。
 現道の44号は、津波による浸水予測範囲が広域に及んでおり、通行止めが発生した場合、根室地方への救援物資の輸送や災害復旧に大きな支障を来すことが懸念されている。
 根室市役所の防災担当者は、応急復旧の際「釧路市とのアクセス性の強化が非常に重要になる」と話す。道横断道釧路・根室間開発促進期成会(会長・石垣雅敏根室市長)も、「防災の観点からも一刻も早い道横断道根室線の整備が必要」と訴える。
 千島海溝沖で巨大地震の発生が切迫していると指摘されている中、釧路~根室をつなぐ高規格道路ネットワークの整備が急がれる。

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