2050年の北海道の姿を考える会/食料供給、観光、脱炭素化など/多様な視点から提言
【発表者】 (株)北洋銀行頭取(書面参加) 安田 光春氏 (株)セコマ会長 丸谷 智保氏 ヤマト運輸(株)執行役員・北海道地域統括長 松井 克弘氏 北海道コカ・コーラボトリング(株)社長 佐々木康行氏 (株)クリエイティブオフィスキュー代表取締役 伊藤亜由美氏 (株)北海道日本ハムファイターズ社長 川村 浩二氏 (株)北海道銀行頭取 兼間 祐二氏 クリプトン・フューチャー・メディア(株)社長 伊藤 博之氏 |
橋本氏 新型コロナウイルス、気候変動、カーボンニュートラルなど大きな変化があることから第8期北海道総合開発計画を前倒しで見直しに着手する。2050年の北海道の姿を描き出し、バックキャスティングで考えていくため、北海道の未来を真剣に考えている皆さんのお考えを伺い、新計画の起草案の肉付けに生かしていきたい。
安田氏 ウクライナ情勢や新型コロナウイルス感染症の影響で、国内はもとより、道内各地域における経済活動に大きな影響が生じている。北海道が抱える課題としては、全国を上回るスピードで急速に進んでいる人口減少や少子高齢化があり、広域分散型の特性による労働力の不足や医療・子苦痛・教育の確保など、都市と地方の格差といった様々な課題が顕在化してきている。
2050年の北海道のあるべき姿に向け、世界を相手に競争する産業や世界の課題解決に貢献する産業を創出し、持続的な発展に結び付けていかなければならない。
そのためには、わが国における食の安定供給基地の役割をさらに深め、豊富な資源や土地を有効活用し、農林水産業と食関連産業の連携だけでなく、恵まれた自然資源を生かした観光産業・エネルギー産業との融合を図り、新たな付加価値を創出することにより、各地域が活性化し道外や海外から注目される北海道につながるのではないかと考える。
丸谷氏 生産空間の崩壊が懸念されている。どう防ぐかが問われている。地域を残し、その上で、地域を興していく。定住、関係人口を増やしていくことが重要となっている。
生産空間は過疎を抱えている。物流を支える道路網が大切だ。生産空間は広いがゆえに過疎である。全国の耕地面積の4分の1を占め、北海道の生産量は非常に大きい。
人口の社会減をどう防ぐか。だからこそ生産空間に店舗を置く必要性がある。物流網を駆使しながら、無店舗地域に出店している。維持していくにも物資を供給し続ける道路・物流網が大切だ。
一方で、2024年のトラックドライバーの厳格運用が始まる。ただでさえ不足している上に時間と距離も限定される。必然的に物流コスト高くなる。だからこそ高規格道路延伸が必要。つながっていくと物流が効率化する。
釧路阿寒ICができたおかげで物流センターを移した。大谷地から釧路までの配送時間が往復2時間短縮した。稚内まで高規格道路がつながれば、往復2時間短縮できる。豊富牛乳についても札幌、小樽をはじめ、苫小牧港を通じ本州、関東、関西に移出することも可能となる。高規格道路を整備することで脱炭素にもつながる。2050年には全部つながっていてほしい。
生産空間を残し、産業を継続するには地域産品の発掘、生産空間から生活空間への移動も大切になってくる。第2青函トンネルも現実的になっており、港湾など既存のインフラ利活用も最大限考えていく必要がある。
松井氏 2050年のあるべき姿としては、基幹産業のイノベーションを通じた一次産業従事者の増加や、効率的なネットワーク、消費物価の安定、地産地消、食料の安定供給が大切となってくる。そのためには強靱な北海道のためのインフラ整備、観光型MaaSが重要だ。距離が長い北海道、物流ネットワークの効率化とすべての物流事業者における経営資源を共有していくことも必要だ。
2024年4月からはフレイター運行を開始する。道内のローカル空港を通じ、生産空間におけるスピード輸送を実現したい。
災害発生時には、避難者のニーズにあった物資を提供するプル型を官民一体で整備する必要がある。発災から1週間から10日は、プッシュ型でいいが、時間が経過すると必要なときに必要なものを届けることが大切となる。道内のネットワークとヤマト運輸の豊かな資源を活用し、官民一体となって様々な課題を克服したい。
佐々木氏 脱炭素の主な取組として気候変動対策としてカーボンニュートラル(以下、CN)が喫緊の課題だ。2030年までに25%減少、2050年にCN目指すことしている。
地域防災への貢献にも力を入れているが、耐震、自家発電などまずは自社のBCPをしっかりすることに力を注いでいる。
そうした中で地域防災への貢献としては、飲料水の供給、乳牛への水提供、消防用水の提供などがある。災害時の物流インフラの重要性は他の皆さんと同様、我々にとっても同じだ。
また、北海道独自の自立型循環型社会を目指すべき。一定程度の削減はできるが、これまで以上を考えると、自然エネルギー、再生エネルギーを取り込まないと難しい。
北海道にはペットボトルを再生するためのインフラがない。道内で完結する仕組みが大切だ。災害に強い物流インフラ、平時だけでなく有事の際の循環型社会を構築するには一企業の努力だけでは難しい。北海道総出の仕組みづくり必要。それが地方の活性化、経済成長につながる。脱炭素化は、企業の成長のチャンスと前向きに取り組んでいきたい。
伊藤亜由美氏 国民共通の財産である北海道の自然環境文化を受け継ぐことが大切。それには歴史・文化の掘り起こし、北海道の可能性に関するコンテンツ化が必要だ。
アイヌ文化はすごく取り上げられたが、例えば、アイヌ以外にも、北海道開拓におけるストーリー、産業遺産、独自の歴史スポット、未来につなげたいものがある。
ひとつ例を挙げるならば北前船の交易の歴史だ。ドラマ、映画になっていない。今の北海道の人、文化、芸術全て北前船が運んでくれた。
航路確立から350年。何も話題になっていない。コンテンツ化させていない。食文化にも北前船、昆布、京都の無形文化財に和食など食の基本がある。この部分を食の部分も含めてコンテンツ化できればと考える。
北海道はポテンシャルの高いワインなどお酒もある。日本酒、クラフトジン、ビール、食の分野をはじめ競争力のある産業を育成し日本の経済成長に貢献する。北海道スタジオ化構想を提唱したい。北海道にスタジオを作ることができれば、つぎの世代が北海道の良さを映画、映像を発信することができるのではと期待している。
川村氏 食と観光が北海道の強みであるのは論をまたない。それにスポーツを掛け合わせ、新しい北海道の魅力を創造していくことが大切だ。
そうした中でスポーツの力に着目してもいいのではと思う。メジャーリーグをみると、大規模スポーツ施設は都市再開発の目玉となっている。1990年以降、30球団中、27球団新球場を建設した。総額は130億ドルに上る。60%は自治体が負担している。まちづくりに貢献する証拠でもある。
ボールパークの周辺地価は上昇傾向にある。ボールパークを中心に観光のハブ機能としての役割を発揮したい。特に新千歳から札幌間の道路整備をはじめ、シーニック、空路・鉄路整備、インバウンドの取組強化、食の物流整備・輸出拡大、自動運転、スマート農業を進め、2050年の北海道をスポーツコミュニティにしていきたい。
兼間氏 持続可能な金融インフラの構築が喫緊の課題だ。人口減少下において、地方、札幌圏分けて進める必要がある。当行は札幌市内は機能別に店舗という概念を捨て、4つの部門に分けた。一方で、地方は機能を残しつつ統合する必要がある。可能な限り札幌圏に職員をシフトしていく。
そういう中で、スマホで銀行取引できるアプリなどを導入し、法人サービスもウェブでできるようにしていく。地方の金融機関と力を合わせながら、システム化を進めている。
農業にも取り組んでいる。ロシアウクライナ問題で食の自給率増している。農業の物流事業に算入している。
函館でのワイナリー進出をサポートしている。ブルゴーニュのような赤ワインつくりたいと考えている。各社と連携して新しい日本酒を造るプロジェクトにも着手している。農業のビジネスモデルとして合同会社設立している。本州、そういったマッチングをこれからしっかり進めたい。2050年に向けて、裏方としてしっかりと産業を支える努力をしたい。
伊藤博之氏 2050年の北海道を考えたとき、米の収穫量は増え、人口はどんどん減っていく。一方で課題を解決するチャンスもある。食や観光資源、温暖化はプラスになると考える。北海道にとっては追い風になるのでは。
北海道の可能性と価値に気付いていない人が多い。まちづくり、おいしい野菜づくりもワインづくりも価値を創出するという意味でクリエイターだ。北海道にこそクリエイターが必要だ。
北海道の未来づくりは地場の人々だけでなく、新しい人を呼び込んで活性化する必要がある。テクノロジーの活用も大切。北海道を未来社会の開拓地と捉え、技術の実証実験・新規事業を促すことが重要と考える。
テクノロジー関係はこれまで仮想世界、シリコンバレー、東京などに集まりがちだったが、農業効率化、GPS、IT産業などこれから大きなチャンスがある。
北海道は先端産業、実証実験場所として優れている。地場の研究者、先端の技術者などと連携し、新しい形のモビリティ根付かせることが大切。冷涼な北海道はデータセンターの拠点としても注目されている。その場合、ファイバーを活用するため道路を使う。道路の整備とセットで検討していくことも必要ではないかと考える。
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