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担い手問題 きめ細かな対処を/都市部と郡部で課題に差異/減少の一途たどる中卒者数

2024/08/20付 DOTSU-NET NEWS
 道内の高校で近年、学級減や学科転換、あるいは再編・統合が相次いでいる。その背景にあるのが、減少の一途をたどる中学卒業者数の推移だ。2018年に4万4989人だった中卒者数は、24年に4万951人と4038人減少。道教育委員会の推計によれば33年には3万3956人と、15年間で4分の3にまで落ち込むことが示されている。一方で道都・札幌市を抱える石狩学区の減少率は1割程度にとどまる見通し。中卒者数の減少は高校卒業者数のそれに直結する。あらゆる産業が人材確保に奔走する中、除排雪はもとより維持管理や災害対応などを一手に担う建設業界では、抱える担い手問題に対して、都市部と郡部それぞれの課題にきめ細かく対処する必要性に迫られている。

 建設業界では他産業に多分に漏れず人材確保・育成・定着、いわゆる担い手問題への対応が最重要課題となっている。北海道新幹線の札幌延伸を契機とした市街地再開発をはじめ、ラピダス社による次世代半導体製造拠点の建設が急ピッチで進められるなど、これらに必要となる人材の争奪戦が業界内で繰り広げられているのが実情だ。
 即戦力となる工業高校や工業高等専門学校、工業科設置高校の卒業者に対する需要はまさにうなぎ上り。その獲得の難しさから、今や普通科高校にもターゲットを広げる動きが各地で活発化している。
 北海道建設業協会は昨年1月、道教委を訪れ、建設業の担い手確保に関する要望を行った。岩田圭剛会長が倉本博史教育長(当時)に対して、高校生が業界に入職するための基礎的技術を習得する授業を確実に受けることができるよう、既存の工業高校と工業高校がない地域の普通科高校に「総合産業学科」を創設し、土木・建築コースを設定するなど積極的な対応を求めたという経緯がある。
 同じく道建協がことし7月下旬に開いた土木委員会の本年度初会合では、委員の一人が、工業高校等を卒業した技術者の卵たちを奪い合う都市部と、地域に工業科設置校がないばかりか高卒者の管外流出を防ぐことができず、地元での就職希望者がわずか数人しかいない郡部とでは、そもそも抱えている課題が違うと語気を強める一幕があった。
 道内で工業科設置校があるのは札幌をはじめ滝川、小樽、室蘭、苫小牧、函館、旭川、名寄、富良野、留萌、北見、紋別、帯広、釧路の14市。高専にいたっては旭川、釧路、苫小牧、函館の4市のみとなっている。
 各地で開催される現場見学会に参加した高校生を対象に道建協が実施したアンケート調査では、卒業後の進路で「就職する」との回答が大きく下降傾向にあった反面、大学や短大、専門学校への進学希望が顕著に上昇する結果が表れた。
 仕事のやりがいや魅力を広く、かつ早いうちから伝えようと、幼児児童生徒らを対象とした現場見学会や地域のイベントを活用した建設機械の試乗体験の実施など、業界のPRに試行錯誤を繰り返す建設業界。こうした取組が功を奏して、生徒のみならず教職員や保護者らからも「魅力ある仕事」として認知の輪が確実に広がりつつある。
 一方で技術者の卵たちが一定数存在する都市部と、地域によっては皆無に等しい郡部とでは課題そのものに大きな差異が見られるのも事実。獲得を狙うターゲットをどのように設定するかなど、きめ細かな対処が不可欠だと言えそうだ。
 道建協では打開策の一手として、道内に18ある総合学科設置高校を新たなターゲットに据える。比較的校長の裁量が大きい特性を踏まえ、地元商工会や保護者、地域住民を巻き込み、カリキュラムの中に土木・建築等を学ぶコースの設置を働きかける構想が既に動き始めているという。
 22年度に普通科フィールド制から総合学科へと転換した千歳北陽高校は、四つあるクラウド(コース)のうち産業経済クラウドで2年次に工業技術基礎、3年次に工業デュアルAおよびBという科目を選択して学ぶことができる。
 千歳の工業団地等に進出もしくは地場の工業関連企業160社以上で構成する「千歳工業クラブ」などが、同校に対して職業人材の育成を強く求めてきたことがその背景にある。工業デュアルの科目では生徒が毎週水曜日、朝から市内の企業に「出勤」し、終日にわたって社員と共に働きながら学びを深めるといったユニークなカリキュラムが展開されている。
 教員の配置や外部講師の登用などの課題はあるものの、総合学科設置高校へのアプローチにある種の光を見いだす道建協の栗田悟副会長は「土木や建築などは絶対になくならない業種。技術者や技能者などを目指す道は様々あるが、その選択肢の一つとして業界に人材を供給できる学校教育システムを、それぞれの地域にしっかり残してほしい」と話している。

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