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防災・減災対策を推進/気候変動予測し事業効果向上/ニュースファイル2019〈3〉

2019/12/11付 連載・特集
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地域の安全を確保するため、ハード・ソフト両面からのアプローチを強化する

治水対策を強化

 大型自然災害に伴う被害が断続的に発生する中、各関係機関は公共インフラの整備を柱とする防災・減災対策の推進に力を注いでいる。政府はことし6月、国土強靱化年次計画2019を策定。本道を襲った16年夏の台風や18年7月豪雨、北海道胆振東部地震などから得られた教訓を余すことなく盛り込み、45のプログラムごとに本年度の主要施策を定めた。
 年次計画のポイントは、気候変動の影響を考慮した治水対策の推進。将来予測をもとに定量的な評価を下し、気候変動の想定に準じた治水計画を作成するもので、有識者は「防災・減災対策を適時適切に行うためには不可欠」と強調する。予算の動向が不透明な状況下では、事業効果を最大限に引き上げる観点からも有効とし、新たな取組を高く評価する。

将来降雨量反映し

 気候変動を踏まえた治水計画にかかる技術検討会はことし10月、国への提言書を公表。今後の予測として、今世紀末の世界の平均気温が0.3~4.8度上昇し、豪雨の発生件数は2倍以上に達するとの見解を示した。流入水蒸気量の増大に伴い総降水量は増え、日本周辺の台風の出現頻度についても増加するものとみている。
 こうした予測を背景に、今後の治水計画には、気候変動により見込まれる将来の降雨量を反映するべきと提言。現在は実績降雨量を活用しているが、関係者は「気候予測アンサンブルデータをもとに、ハードとソフトの両面からアプローチする時代に来ている」と指摘する。
 堤防強化や河道掘削といった従来型の整備をより効果的に進めていくためにも、「正確な予測をもとにした対策は極めて有益」(有識者)。一部関係者からは、被害の拡大が見込まれるエリアには、ダムの新設も視野に検討を進めるべきとの声も上がっており、今後の治水対策の在り方に注目が集まる。
 道における北海道強靱化計画の改定に向けた作業が、大詰めを迎えた。

ソフト面の充実を

 原案をみると、本道で発生した大型自然災害による被害を踏まえ、土砂災害や津波、地域交通ネットワークの機能停止など21のリスクシナリオを設定。これらを回避するための140の施策を展開する案を示している。
 主な施策の一つに、「ソフト・ハードが一体となった治水対策の推進」を設定。想定降雨量に基づく洪水浸水想定区域図を作成し、関係機関に提供するほか、抜本的な治水対策として河川改修などを重点的に進めることとしている。
 ソフト面では、災害の発生を前提にあらかじめ状況を想定し、実施主体や防災行動などを時系列で示した水害対応タイムラインの策定に力を注ぐ。現在は、洪水予報河川や水位周知河川に指定している137河川97市町村について、17年度からの5ヵ年を目途に水害対応タイムラインに関する協議を推進。当初は、21年度末までの策定を目指していたが、豪雨被害が立て続けに発生している近年の状況を踏まえ、1年前倒す方針を固めた。
 国や道がソフト面の取組を強化する一方、道内市町村における国土強靱化地域計画の策定は遅れているのが現状だ。自治体ごとにみると、10月1日現在で策定を終えているのは、札幌市など17市町村にとどまる。
 政府は、地域計画に記された補助金および交付金事業に、20年度の国土強靱化関連予算を重点配分することとしており、道幹部は「市町村に計画の策定を促していく」と方針を示す。有識者は「国と道はもちろん、基礎自治体の市町村の協力がなければ、防災・減災対策の強化は困難」と言及しており、関係機関が一体となった取組を求めている。

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