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道内有料高速道路の4車線化/採算性・機運醸成 事業化の命題に/ニュースファイル2019〈4〉

2019/12/12付 連載・特集

4区間136㎞選定

 国土交通省がことし9月に発表した「高速道路における安全・安心基本計画」では、概ね10~15年かけて有料高速道路の暫定2車線区間を順次4車線化する方針が打ち出された。優先整備区間のうち、道内分は道央道の八雲~国縫間17キロメートル、伊達~登別室蘭間18キロメートル、和寒~士別剣淵間14キロメートル、道東道の千歳恵庭~十勝清水間87キロメートルの計136キロメートルを選定。沿線自治体などからは「渋滞緩和や事故防止に資するものであり、大いに歓迎したい」と喜びの声が上がった。
 基本計画は、社会資本整備審議会道路分科会国土幹線道路部会が2017年12月に取りまとめた「高速道路の安全性、信頼性や使いやすさを向上する取組 基本方針」を受けて策定。基本方針で提案された各具体施策に関し、国が中期的な整備方針等を示すことで、計画的かつ着実な推進を図ることとしている。
 優先整備区間の選定に当たっては「時間信頼性の確保」「事故防止」「ネットワークの代替性確保」の3つの観点から、速度低下区間延長や死傷事故件数など8つの指標を設け、A~Dの4段階で評価。8つの指標のうち、1つでもA評価があれば課題が大きい個所として対象区間に位置付けた。

財政投融資の活用

 全国では、道内を含む880キロメートルが対象となったが、今回示した計画は事業着手を決定付けるものではない。評価に使用したデータは3~5年を目処に更新されるほか、その財源についても不透明なままだ。
 国交省道路局によると、4車線化の費用は1キロメートル当たり50億円で試算しており、全国880キロメートルの整備には4兆4000億円を要する。このうち道内分は6800億円で、道東道が63.9%の4350億円を占める計算となる。
 課題となる財源を巡っては「コスト縮減等の経営努力や現下の低金利状況等を活用するほか、料金徴収期間の延長や料金の引上げによる利用者負担等を含め、新たな財源確保策を講じる必要がある」と記載されているが、実施主体となる東日本高速道路(株)では「現時点ではまったくの未定」(担当者)と説明する。
 高速道路の料金徴収期間については、14年2月の道路整備特別措置法など関連法の改正により、15年の延長が決定したばかり。再び延長するためには、有識者会議等による議論も必要になることから「料金の引き上げも含め、ハードルは非常に高い」との見方が強い。
 一方で、「財政投融資を活用できれば、すぐに事業着手することは可能」(関係者)との声もある。実際、ことし3月には財政投融資を活用した暫定2車線区間の機能強化による防災・減災対策として、道東道トマムIC~十勝清水IC間9.5キロメートルが事業化。基本計画に基づく4区間136キロメートルについても早期の事業着手が望まれているが、「財政投融資を活用するにしても、ある程度の交通量が見込め、採算が取れることが必要」(前同)。
 道内4区間の状況をみると、道東道は11年に夕張IC~占冠ICが供用したことで道東圏と道央圏が初めて高速道路で直結。当初の計画を上回る交通量を記録したほか、釧路方面への延伸によって交通量のさらなる増加が見込まれており、事業化にも期待がかかる。

年度末の事業許可も

 3~5年後に現在の評価データの見直しが行われるが、死傷事故件数や死傷事故率など、天候などに左右される指標で優先整備区間となった区間は、対象から外れる可能性も否定できない。こうした状況も踏まえ、国交省関係者は「いまのうちから、関係自治体をはじめ、産業界を挙げた要望活動で熱意を伝えていくことが重要」と指摘する。
 すでに鈴木直道知事は、3定道議会一般質問で「私が先頭に立って、地元市町村や関係団体とともに、国等に対し積極的な要望活動を行っていく」と表明。道の担当者も「いまがチャンス」としており、道内4区間の早期事業化に全力を尽くす考えだ。
 多くの関係者は「基本計画を公表したからには、まずは年度内に何らかの動きがあるのでは」と勘ぐる。採算性確保の見通しが立ち、仮に財政投融資が活用されることになった際は、年度末に事業許可が下りることも想定されるが、そこに道内分が含まれるかは流動的だ。
 高速道路の4車線化は、安全性や定時制の確保など多くの効果をもたらすことからも、実現に向けて機運醸成を図り、その必要性を関係者が一丸となって訴えていくことが求められる。

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