トップページ > 連載・特集一覧 > 連載・特集詳細

深川留萌道待望の全線開通へ/道の駅と連動し地域活性化/Local Topics 2019〈8〉留萌

2019/12/20付 連載・特集
Local Topics8画像
道の駅登録を目指す船場公園。深川留萌道と連動した機能拡張を図る
 道内の高規格幹線道路として初の「全線開通」が目前に迫っている深川留萌自動車道。近隣都市間の連絡機能強化、地域間交流の活性化・物流効率化など、様々な効果が期待されている。
 一方で、留萌市では、重点道の駅に選定された「仮称・船場公園」を留萌地方の広告塔とするべく、その在り方の具体的検討が進められている。同時期の供用開始を目指す深川留萌道と道の駅は地域活性化の呼び水となるか、注目が集まっている。

年度内開通へ最終調整進む

 深川留萌道は、道央道深川JCT~深川西IC間を東日本高速道路(株)、深川西IC~仮称・留萌IC間を開発局が管轄している。1989年に233号深川沼田道路、92年に沼田幌糠道路、96年に幌糠留萌道路が事業化した。
 2019年度中の全線開通に向け、現在は留萌大和田IC~仮称・留萌ICの4.1キロメートル区間で付帯工などの最終調整を進めている。
 深川留萌道が1998年に一部供用を開始して以来、留萌地域と道内各地のアクセスが大きく向上。地域間交流の増加、新千歳空港や苫小牧港などへの輸送時間の短縮、これに伴う出荷量および出荷エリアの拡大など、地域の活性化・産業振興に大きく寄与している。

アクセス向上が交流人口を拡大

 こうしたストック効果のほか、留萌地域では独自の取組として2014年から始まった音楽合宿事業が地域の注目を集めている。長距離移動による奏者や楽器への負担を曲線や振動の少ない高規格道路の特性によって軽減し、練習・宿泊場所には地域住民のみでは活用機会の少ない公共施設を利活用。町づくり運動に取り組む地元団体の留萌青年会議所が主体となり、道内各地から多くの吹奏楽部・団体を招いている。
 昨年は上川や空知、オホーツクなど様々な地方から延べ323人の生徒が留萌市を来訪。累計宿泊日数は1000日を超え、地域に与える経済効果は1000万円以上となったが、目に見える成果はそれだけではない。
 ことし4月には、3年間音楽合宿に参加した管外高校の卒業生が「お世話になった留萌で働きたい」と市内企業での就職を決定。高規格道路整備から始まった交流人口の拡大は、少子高齢化・過疎化が進む地方都市への人口流入という、事業評価の段階では想定されていなかった効果を生んだ。
 留萌青年会議所の中出靖彦理事長は「合宿事業はもちろん、交流人口の拡大に向けた様々な事業を展開したい」と全線開通の先を見据える。留萌振興局の野村聡局長は、深川留萌道から眺める山間の紅葉や、厳しい冬の気候を生かした体験型イベントの開催など「全線開通を機に“留萌地域は夏”というイメージを払拭し、通年の観光需要を生み出せれば」と新たな地域資源の発見、創出に期待している。

一層の魅力向上へ新たなシンボルを

 全線開通に伴う地域間交流の効果を高めるためには、地域の魅力をより広く伝えていくための広告塔が必要になる。地域の魅力や付加価値の向上を図るべく、留萌市では深川留萌道の玄関口に位置する仮称・船場公園「るしんふれ愛パーク」の道の駅登録に向けた作業を進めている。
 市は、道の駅登録に向け、整備計画に当たる基本計画を作成。具体的には、公園施設の活用と一体となった交流・遊戯施設、子育て世帯の支援環境の整備を施設コンセプトに据え、地域ブランドの価値と観光需要を高める「食す」、「買う」といった道の駅ならではの機能強化も盛り込んでいる。
 こうした機能を満たすため、施設整備面では、現在の管理棟に隣接する形で屋内交流・遊戯施設を建設し、渡り廊下で一体化を図る。地域ブランドをPRする飲食提供・物販スペースも併せて整備を行う予定で、21年から工事を進める見通しを示している。
 一方、地域住民からは施設整備の方向性について「コンセプトの対象が住民なのか観光客なのか、明らかになっていない」「道の駅自体を目的とするだけの魅力を付加しなければ」など不安の声もある。中西俊司留萌市長は「チャレンジしながら必要なものをつくっていきたい」と市民や利用者の声を聴きながら柔軟に求められる機能・整備を進める考えだ。
 道の駅としての開業は、深川留萌道全線開通に合わせて20年度初頭に行う方針。残された期間はわずかだが、国道3路線からなる広域交通を受け止め、地域活性化を担う新たな交流拠点としてその機能を発揮できるか、地域の注目が集まる。

その他の連載・特集 一覧

旭川空港の民営化控え/けんせつ担い手育成会議始動/Local Topics 2019〈7〉上川

2019-12-20付 連載・特集

外国人宿泊数増加 ターミナルビルの増改築工事が完了し、ことし9月にグランドオープンを迎えた旭川空港。近年の年間乗降客数は110~120万人で推移しているが、ことしは10月末現在で70万4604人を数え、旭川空港ビル(株)は「過去5年間で最多...
Local Topics7A画像

若松ふ頭暫定供用で効果発揮/第2青函トンネル構想実現へ/Local Topics 2019〈6〉渡島・檜山

2019-12-19付 連載・特集

過去最多の寄港数 ことしの函館港への寄港数は昨年から20隻増の47隻となり過去最多に。クルーズ船の乗員乗客数は約3万8000人増の9万4000人を記録した。函館財務事務所によると、乗員乗客数が増加したことで新たに5億円の経済波及効果が生まれ...
Local Topics6画像

胆振東部地震から1年/厚真町 被災住宅再建を優先/Local Topics 2019〈5〉胆振・日高

2019-12-18付 連載・特集

復旧は順調に進捗 昨年9月6日に発生した北海道胆振東部地震から1年が経過した。厚真町で最大震度7、安平町とむかわ町で震度6を観測し、胆振管内を中心に甚大な被害が発生。現在は本復旧工事が本格化しており、国や道、市町などの発注者や、地元企業をは...
Local Topics5画像

BIM/CIMが現場を変える/倶知安でG20観光大臣会合/Local Topics 2019〈4〉後志

2019-12-17付 連載・特集

i―Con推進へ 小樽開建モデルに 小樽開建はことし3月、国土交通省のi―Constructionモデル事務所に指定された。道内唯一のモデル事務所として、今後工事が本格化する5号倶知安余市道路で事業全体を通じたi―Constructionの...
Local Topics4画像

道内7空港一括民営化/BPを街おこしのモデルケースに/Local Topics 2019〈3〉石狩

2019-12-16付 連載・特集

HAPの経営戦略 ことし7月、道内7空港一括民営化に向けた優先交渉権者に「北海道エアポートグループ」が選ばれた。審査委員会では道内企業の知見を生かして、7空港の役割分担を明確化し、航空路線網拡充を図る「マルチ・ツーリズムゲートウェイ」を提案...
ローカルトピック3画像

基盤整備が支える農業のICT化/三笠ぽんべつ着工再開求める声/Local Topics 2019〈2〉空知

2019-12-13付 連載・特集

スマート農業導入へ着々と環境整備 ことし8月、岩見沢市内で行われたスマート農業技術現地実演会に鈴木直道知事が訪れた。11月には、大区画化による高精度のICT農業を展開すべく、2008年から整備を進めてきた札幌開建所管の国営農地再編整備妹背牛...

北5西1・2推進が再開発誘発/円山動物園100万人突破/Local Topics 2019〈1〉札幌

2019-12-13付 連載・特集

札幌五輪から半世紀新たなまちづくりへ 1972年の札幌冬季オリンピックでは、開催に向けて15~20年分のインフラが「通常では考えられないスピードで整備が進められた」(関係者)。68年には、地下鉄南北線北24条~真駒内間の建設が実質2年9ヵ月...
ローカルトピック1画像

公共事業予算の行方/長期的な投資の方向性を/ニュースファイル2019〈5〉

2019-12-12付 連載・特集

 政府は5日、頻発・激甚化する災害への対応と経済の下振れリスクを回避するため、事業規模で26兆円の経済対策を閣議決定した。行政関係者は「補正と当初、臨時・特別の措置を含めた2020年度の公共事業関係費は、19年度並みとなるのでは」と予想する...