BIM/CIMが現場を変える/倶知安でG20観光大臣会合/Local Topics 2019〈4〉後志
2019/12/17付 連載・特集
i―Con推進へ 小樽開建モデルに
小樽開建はことし3月、国土交通省のi―Constructionモデル事務所に指定された。道内唯一のモデル事務所として、今後工事が本格化する5号倶知安余市道路で事業全体を通じたi―Constructionの推進を目指す。取組の軸となるのは、調査・設計から維持管理にわたって3次元モデルを活用するBIM/CIM。完成イメージを立体的に可視化することで、関係者間の情報共有の迅速化、施工時の手戻り削減など業務の効率化が図られるものと期待されている。
小樽開建は、倶知安余市道路に関連するBIM/CIM活用工事を2018年度に7件、19年度に5件実施。活用例をみると、手戻りが発生しやすい橋脚のフーチングと場所打ち杭の鉄筋干渉のほか、橋梁上部の作業動線の確認などがある。
開建担当者は、「受注者から仕様や工法について提案を受けた際、データをチェックしてその場で是非を判断できることがメリット」と話す。通常の図面をもとに打ち合わせを行う場合、提案内容の確認に時間を要することもあるため、円滑な現場運営に欠かせない意思決定の短縮化につながっている。
働き方改革にも効果
対象物を様々な角度から把握できる“分かりやすさ”は、現場でも好評だ。本年度発注のBIM/CIM活用工事「5号仁木町銀山大橋P6橋脚ほか一連」を施工した協成建設工業(株)の下澤哲也監理技術者は「発注者や作業員と施工のイメージを共有しやすく、合意形成がスムーズに進んだので良かった」と振り返る。従来、一本一本地道に数えなければならない鉄筋の数量も、BIM/CIM対応ソフトで簡単に算出。本数の数え間違いによる後工程での手戻り防止に役立った上、「残業がなくなり、土曜日も休めるようになった」(下澤監理技術者)。働き方改革の面でも効果を発揮している。
受発注者ともにBIM/CIMの意義を実感している一方で、対応ソフトの導入や操作方法習得などの初期投資、通信環境の整備を課題とする声もある。活用拡大に向け、「BIM/CIMが普及することで、初期投資の負担も軽減されるのでは」「通信技術が発展すれば現場での使い勝手もより良くなる」と関係者からの期待は大きい。
倶知安余市道路のロードマップ策定へ
開建では、BIM/CIMの取組状況や課題を整理しながら、倶知安余市道路におけるi―Construction促進のためのロードマップを策定する予定。今後は、構造物モデルなど各種データを集約した統合モデルを作成し、維持管理への活用方法も検討していく。渡邊政義部長(※「邊」は臱に一点しんにょう )は「全国的視点に基づく指定課題にしっかりと対応するとともに、積雪寒冷地や地方部の特徴を踏まえた課題にも独自にチャレンジしていきたい」と語る。BIM/CIMをはじめとする小樽開建のi―Constructionの取組に注目が集まる。
一層の観光振興へ良質な基盤整備を
10月25日から2日間にわたり、倶知安町のニセコHANAZONOリゾートでG20観光大臣会合が開かれた。急成長するリゾート地の姿を世界にアピールしようと準備を重ねてきた倶知安町の担当者は「町を挙げたおもてなしができ、記憶に残る会合となった」と胸をなで下ろす。会合では北海道倶知安宣言を採択。今後取り組むべき項目として、「観光や関連分野における質の高いインフラ投資」も盛り込まれた。
こうした中、倶知安町が観光地としてさらなる発展を目指すには「間違いなく高速道路が必要」(町商業関係者)。現在、小樽開建が整備を進める倶知安余市道路への期待が高まっている。
同ルートの開通によって、倶知安町やニセコ町などを含めたニセコエリアと新千歳空港間の速達性は大幅な向上が見込まれる。関係者は、「レンタカーを利用する外国人観光客の増加に伴い、高速道路を使って新千歳空港から直接倶知安に足を運ぶ人が増えるのでは」とみる。
倶知安を拠点に管内周遊が促進されれば、後志全体の観光振興にもつながる。高速交通ネットワークづくりの着実な推進が求められている。
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